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武道と禅

 武道と禅は相性がいい。その中でも弓道が最も優れていると言われている。
 ドイツの哲学者、オイゲン・へリゲルは日本に研究のため滞在することになった時、禅をやりたいと言ったら、周りの人間が、禅は形がないのでなかなかわからないだろうから、弓を通じて禅を学びなさいというアドバイスをしたらしい。そこで弓道範士、阿波研造を紹介され、彼の元で弓道を学ぶこととなった。
 オイゲン・へリゲルは、阿波研造の「的を狙うな」という理不尽な教えに納得がいかず、その旨を伝えたところ、夜の真っ暗な弓道場へ呼び出される。
 そこで、的の前に線香一本だけを立てて、その的を狙った。一本目の矢は的の真ん中を射貫き、二本目の矢は一本目の矢を真っ二つに切り裂いたという。これを見てオイゲン・へリゲルは弓に対して理屈を言うのを止めたと言われる。
 私も弓道初段である。今となってはもう忘れてしまったが、確かに弓を放つというのは禅の無の心と一つになるものである。臨済宗の僧堂などでも、一時期雲水(修行僧)に弓を教えていたらしい。この顛末は「弓と禅」という書物に詳しく書かれている。

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