
THE・MODELへの考察
一度読んだ本を再度読み返すことはあまりないですが、定期的に読み返す本が「THE・MODEL」。抱えているテーマの変化もありますが、読み返すたびに新たな発見をいただきます。
特に印象的だったのが、「レベニューモデル」という概念の存在。
営業管理職時代は、いかに顧客を見つけ、いかに成約に結び付けるかという限られた視点でしかプロセスを見ておりませんでした。
レベニュー(Revenue)とは「売上・収入」を意味しますが、レベニューモデルの本質は、マーケティングからセールス、カスタマーサクセスに至る一連のオペレーション全体を最適にデザインし収益が最大化する状態をつくりあげること。
とくにIT業界はサブスクリプション化が進んでおり、新規営業も大事ですが、既存顧客の解約防止及びクロスセル・アップセルがもたらす収益インパクトが高まっています。
単純計算ですが、年間の解約率(チャーンレート)が25%の企業は4年後には顧客が0になってしまうため、新規を開拓し続けなければ、一向に顧客数及び年額固定収益が増えません。
一方、年間の解約率が5%の場合は平均顧客寿命が20年に伸びます。毎年固定収益を積み上げることができ、収益基盤が安定します。
収益を最大化するためには、売ること(セールス)だけでなく、既存顧客の維持拡大(カスタマーサクセス)も併せて考えることが、最適なレベニューモデル構築に求められています。
ところで、一人の営業担当が新規顧客開拓から既存顧客の維持・拡大まで担えるか?増殖していく既存顧客へ対応できるか?というと、リソース上厳しいというのが実態です。
レベニューモデル構築に必要な要素が「分業」という組織分担の考え方です。
分かりやすい分業スタイルが、リレー型分業。マーケティング担当、インサイドセールス担当、セールス担当、カスタマーサクセス担当と機能ごとに担当を配置し、リレーのように後工程へバトンをパスするスタイル。
分業により業務範囲を限定することで、業務習熟度を高め、より少ないリソースで多くの成果物を生み出すことができます(後工程へ業務をパスすることができる)。
分業は非常に合理的な手法であり、自社にも取り込みましたが、うまく機能し続けるためにはいろいろな壁を乗り越えなければなりません…。
特に頭を悩ませる壁が連なる工程間での対立の壁です。
「連なる工程間での対立の壁」は一度解消するだけではダメで何度も発生します。特に不満がたまるのが後工程です。
例えばインサイドセールス部門の評価指標がアポ件数の場合、評価達成に向け大量のアポイントがフィールドセールスにリレーされます。
アポイントは商談の種であるため一見良さそうに見えますが、大量のアポイント対応に追われ、商談推進に時間がさけない状態になるとフィールドセールス部門の不満がたまり始めます。もっと案件確度が高いアポイントを供給してほしいと。
また、フィールドセールスがたくさん受注をとりカスタマーサクセスにリレーするという流れも同様です。
一見良さそうに見えますが、むりゃくちゃな受注スタイル(要件が決まらないままパスされる)や少額商談ばかりの受注(顧客は増えるが月額固定収益があまり増えない)状態になると、カスタマーサクセス部門の不満がたまり始めます。もっと要件が確定した高単価商談を供給してほしいと。
対立の壁を解消するために様々な取り組みをしましたが、効果的であった取り組みは、フィードバック機会の創出と共通目標の設計です。
フィードバック機会創出で特に重要なことが、後工程から前工程へフィードバックすること。前工程で何を改善してほしいかを明確にしなければ改善しようがないため、フィードバック機会を定期的に設ける取り組みは効果的でした。
また、共通目標ができると前後の工程の一体感が増します。目標達成に向け何ができるか?どうすべきか?を前後の工程が一緒に考え取り組むことで、コミュニケーションの機会も増え、関係が円滑化されました。
収益最大化に向けレベニューモデルを構築する上で、分業は効果的な手法ですが、乗り越えなければならない壁もあるため、壁を乗り越える際の参考になれば幸いです。
次回は、レベニューモデル推進要素の一つである再現性について考えたいと思います。