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教科書の常識がひっくり返る!/新説「日本古代」通史【試し読み】

★縄文以来の日本の社会秩序は、藤原氏の独裁で潰された?
★縄文人は長い期間、弥生的な農耕文明に抵抗した
★継体天皇を支えた「豪族」とは誰か?
★百済の王子・中臣鎌足が起こしたクーデタ―
★皇族と藤原氏の血なまぐさい闘いとは?
★聖武天皇が東大寺建立に命を燃やした意味とは?

縄文時代から奈良時代まで、教科書の常識がひっくり返る!『日本書紀』が抹殺した古代史の真実、最新の考古学研究による究極の日本人論。「正史」では語られない権力闘争の真実を、縄文時代から奈良時代まで明らかにする。

この記事では、2025年2月3日刊行の関裕二・著『新説「日本古代」通史』より「はじめに」を全文公開いたします。



はじめに


日本人は自分たちが何者なのかを理解していない。世界中の人びとの行動や考え方と比べて、「何かが違う」と漠然と思っているのに、その「何か」を説明できないし、世界中の人びとも、「日本人は異質」と思っている。だから、日本人論が、ことあるたびに出現してきたのだ。

しかし、そろそろ「日本人とは何者なのか」を、はっきりとさせようではないか。答えは(意外かもしれないが)、考古学と古代史が握っていたのだ。

今から一万数千年前、人類は「石を磨く技術」を獲得し、石斧せきふを手に入れ、森林を開墾し、農業をはじめた。いわゆる新石器時代の到来だ。農業は人口爆発を起こし、組織的な戦争が始まり、さらに都市と文明が出現した。

日本列島では縄文時代がまさに新石器時代にあたるのだが、なぜか縄文人は、農耕を選択しなかった。世界史を基準にすると、縄文人たちは出遅れたのだ。

しかし、このあとの歴史を追っていくと、列島人たちは「農耕と文明と進歩」を拒んだのではないかと思えてならない。北部九州に稲作が伝わってから関東で本格的な稲作が始まるまで、数百年を要している。各地で、抵抗が試みられたようなのだ。

縄文人だけではない。三世紀から四世紀にかけてヤマトは建国されたが、この事件も、富と鉄を蓄えた強い王の征服戦ではなかった。文明に抗い、権力を忌避する弱い人びとが寄り添い、ネットワークで結ばれた共同体が生み出されたと、考古学者は次第に考えるようになってきた。

このような国家の成り立ちも、不思議なできごとだった、列島人の歩みを、世界史の常識で語ることはできないのだ。

文明は大森林を砂漠に変え、砂漠の中から一神教が生まれた。民族の正義(独善)が唱えられ、戦争と復讐は正当化された。しかし日本列島人は、森を守り、多神教的発想にこだわり、今日に至っている。なぜか列島人は、一神教的な「信仰に裏付けされた正義」を振りかざさなかった。

例外は近代日本で、西洋文明を模倣して帝国主義に走った。これは本当の日本ではない。天皇も一神教的な神に仕立てあげられたが、敗戦によって元の形にもどった。

問題は、現代日本人が、自身の信仰の意味を理解していないことだ。それどころか、信仰とは無縁と考えている。しかし、縄文時代から続く三つ子の魂は健在で、一神教を選択した世界中の多くの国々とは、異なる原理で行動している。

これに対し一神教世界は正義とルールを多神教世界に強要し、「啓蒙」する。我々は右往左往し、戸惑うばかりだ。しかしようやく多神教的発想の再評価が進みつつある。だからこそ、日本人の信仰と古代日本史の真相を、知っておく必要がある。

多神教的信仰によって支えられてきた天皇の正体も、古代史を解くことによって明らかにできる。

日本人の正体を、明らかにしようではないか。

関 裕二

目次


序章 東大寺とアマテラス

・日本史のすべての謎が東大寺に凝縮されている?
・古き良き時代への郷愁
・アマテラスと持統じとう天皇
・東大寺造立は古き良き時代への回帰運動

第1章 日本人のルーツ

・日本人はどこからやってきたのか
・最新の遺伝子研究
・日本人の成り立ちは三重構造で説明できる?
・中国文明と日本文明
・森と人を食べ尽くした中国文明
・日本は渡来人に席巻されたわけではない?
・中国文明を列島人は拒んでいた?
・古墳時代の渡来人と秦氏
・日本語脳という仮説

第2章 神話の時代と日本人の信仰の原点

・なぜ『日本書紀』神話の舞台は出雲と日向ひむかだけなのか
・『日本書紀』は三〜四世紀の歴史を知っていた?
・北部九州の富と流通ルートが狙われた?
・弥生時代後期の北部九州と近畿地方の差
・文明に対する暗い予感
・日本人には不変の核(コア)がある?
・多神教と一神教の差
・神が復讐を宣言したり
・キリスト教から派生した科学や哲学
・一神教の神と人間の理性
・近代日本の過ち
・なぜ日本人は仏教を取り込んでいったのか

第3章 古墳時代の始まりと大家の謎

・ヤマト建国と古墳時代の始まり
・ニギハヤヒとナガスネビコの素姓
・前方後円墳分布域のニギハヤヒと前方後方墳分布域のナガスネビコ
・神武を祭司王に立てて実権を握ったニギハヤヒ
・神武は日向御子?
・外戚になる意味
・古代日本に影響を与えた中国の情勢
・古代朝鮮半島の騒乱とヤマト政権
・東アジア情勢が日本の強い王を求めた?
・ヤマト政権が守りたかったのは伽耶
・弥生時代の朝鮮半島南部に弥生土器が流入していた
・四県割譲(五一二)事件と任那日本府
・日本と伽耶は夫婦の関係
・バラバラだった外交によって任那は滅亡した

第4章 飛鳥時代と蘇我氏の正義

・継体天皇の出現は第二のヤマト建国
・旧政権の誤算
・継体朝はヤマト建国の敗者同盟?
・改革事業の先鞭をつけたのは聖徳太子?
・天皇は独裁者?
・誰が物部氏を説得したのか
・蘇我入鹿の悪事
・山背大兄王は聖徳太子の子ではない?
・中臣鎌足は百済王子・豊璋ほうしょう
・阿武山古墳は中臣鎌足=豊璋説を補強する
・物部氏と蘇我氏はなぜ争ったのか
・ 『元興寺伽藍縁起幷流記資財帳がんごうじがらんえんぎならびにるきしざいちょう』に登場する謎の大々王
・『日本書紀』が抹殺した物部系の女傑
・壬申の乱(六七二)と蘇我氏
・天武天皇の崩御と大津皇子暗殺事件
・大津皇子暗殺が古代史の大きな節目となった

第5章 奈良時代 律令制度と天皇

・文明と非文明(野蛮人)の争い
・律令を悪用した藤原氏
・殺されるべくして殺された?長屋王
・冤罪で長屋王一家は滅ぼされた
・悲しい「あをによし」の歌
・藤原氏の子の聖武天皇が豹変した
・誤解されてきた県犬養三千代
・常識人の元明天皇は藤原不比等の手口に辟易していた?
・宮子の悲劇と光明子
・東大寺造立を聖武に勧めたのは光明子
・東大寺建立は縄文的な発想への揺り戻し?
・皇帝になっていた藤原仲麻呂

終章 平安時代 院政の真相

・暴走する藤原氏と天皇
・菅原道真を大抜擢した宇多うだ天皇
・院政のカラクリ
・文明に非文明(野蛮人)が復讐する国

お読みいただきありがとうございました。
続きはぜひ本書でお楽しみください!



\ 2025年2月5日発売!/
関 裕二・著
『新説「日本古代」通史』

【電子書籍】は、Amazon Kindle版が
2月3日より順次配信されます

【書店店頭】では2月5日頃より
順次発売となります

関裕二(せき・ゆうじ)
1959(昭和34)年、千葉県柏市生まれ。歴史作家、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。仏教美術に魅了されて奈良に通いつめ、独学で古代史を学ぶ。『藤原氏の正体』『アマテラスの正体』(以上、新潮社)、『豊璋 藤原鎌足の正体』(河出書房新社)、『消された王権  尾張氏の正体』(PHP研究所)など著書多数。

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