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【営業の見える化】/長尾 一洋
新規性 :★★☆☆☆
有益性 :★★☆☆☆
おすすめ度:★★★☆☆
■この本で解決できること
この本では従来の営業で売上高などの結果で評価され、結果しか見えなかったといった問題点を指摘し、プロセスを見える化する重要性とその手法が分かります。
プロセスを見える化することで、改善活動ができるようになることと、事前に手を打てるというメリットがあります。
■この本で伝えたいこと
●営業の見えにくいもの
プロセス
営業の結果である売上高や利益のみ全社に共有されていると、営業が普段どんな活動を行っているのかがブラックボックスとなり、運頼みの営業になってしましいます。
このプロセスを見える化することで、何をすれば受注までのステップを進めるのかが分かるようになります。これが実現されると、ある程度の売上高や利益を予測し、コントロールすることが可能になります。
顧客情報
顧客情報も従来は各営業マンが保有している属人的な情報でした。しかし、顧客情報を引き継ぐうえで普段から登場人物ややり取りを共有していれば、担当営業を変えたときでも顧客とのリレーションは切れません。
「売れるもの」と「売れないもの」
モノがあふれる時代となり、営業においてもがんばれば売れる時代は終わりました。
要因をさらに分解すると
・人口減少の加速によりお客様の数が減少
・商品のコモディティ化の進行によりヒット商品が出ない
・低価格競争・デフレの激化により売っても利益が出ない
といった構造になっています。
そのうえで、営業はどんな商品が売れるのかを常にお客様と対峙し、見極める能力が重要となりました。そしてお客様で形成されている市場の声を拾い、会社へFBすることで持続的成長が可能な会社となっていきます。
●プロセスを見える化
営業部全体で、標準プロセスを作成することが重要です。
以下は例ですが、商材ごとに準拠となるプロセスがあると動きやすいという点であると良いでしょう。
1.見込み客リストアップ
ポイントはリストが全体に共有されているか、本当に使える情報がすべて集まっているかという点です。
2.初期アプローチを行う
テレアポが基本的でしょう。
3.ファースト前MTGを行う
初回訪問を行う前に、見込み客がどのような相手なのかを確認し、営業マネージャーがアドバイスすることが重要です。
4.初回訪問する
ヒアリングシートを作成することにより、属人かしたノウハウやヒアリング項目を見える化します
5.提案書をつくる
先方の担当者にあらかじめ確認してもらいうことや、ワンシート提案書といった「こういうご要望をお聞きするんですが、当てはまるものはありますか?」といったようなアンケートに回答してもらうことで認識をすり合わせることが重要です。
6.クロージングする
お客様との商談やプレゼンの反応を、事実と推察と次回の3つに分けて報告し、それに対してマネージャーがFBするという構図が重要です。
この標準プロセスを参考に営業活動を行うのですが、その実際の営業活動を見える化するために効果的なツールが「見える化日報」です。以下はその効果です。
1.プロセスが見えるだけでなく、営業がどう感じどう考えたのか・顧客がどう感じどう考えたのかを把握することで人間同士のやり取りである商談を疑似体験することができます。
2.全社の営業が読める状態にすることで、自分の営業と照らし合わせて気づきやヒントを得ることができます。
3.生きた営業マニュアルになります。
4.成功事例や失敗事例をもとに学ぶことができ、失敗を疑似体験することで同様の状況に直面した場合でも事前に回避することができます。また事例で疑似体験をし、実際の経験で定着させることで営業の成長が早くなることも見込めるでしょう。
●数字をストーリーに落とし込む
「売上目標40憶」と言われても各営業マンがピンとくるはずありません。
そこでまずは月単位などで数字をブレークダウンし、「イメージできる数字」にすることが大切です。
次に、「イメージできる数字」を達成するための先行指標を設けます。
今週やるべきことや、毎日やるべきことが見える化され、動きに迷いがなくなると同時に、目標達成のための行動という意識がなされモチベーションを維持することに寄与します
また、商談の進め方を見える化することも重要です。
主な手法としてはロープレ(営業ロールプレイング)があげられます。
グループロープレとマンツーマンロープレがありますが、営業組織が若かったり、サービスが導入期である場合はグループロープレがおすすめです。理由は、他の営業マンのアプローチを見ながら、みんなで議論することができるため短時間で効果があることと、経験の浅い営業マンでも参加しやすい点です。
一方である程度営業力がある組織や、サービスが成長期に乗っかているばあいはマンツーマンロープレを行い、個々の進め方を再確認するなどに活用すべきでしょう。
さらにロープレの効果を高める手段として録音・録画があります。
録音によって自分のしゃべり方や話し方の癖を把握することができ、録画によって姿勢や立ち居振る舞い、表情などを客観的に評価し改善することができるためです。
●登場人物を見える化
顧客の見える化
顧客は思いつきでモノを言うものという前提に立ち、顧客の言うことを鵜呑みにせずに推察することが重要です。例えば、一見買う気があるようなことを言っていても、表情を見たり深くつっこんで話を聞いてみると決定権はないことが分かる場合などがあります。
また、クレームの見える化にも3つのメリットがあります。
①安易なクレーム対応がなくなり、損失金額も減る
②クレームの質が見えるため、優先順位を決めやすい(感情で決めなくなる)
③クレームを今後の営業に生かす
競合の見える化
競合の動きを見ることで、自社の売り方がリニューアルされたりします。
上司の見える化
上司のアドバイスを良質なものにするために2段階OJTが効果的でしょう。
見える化日報に書き込んだ商談履歴に営業マネージャーがFBします。
そしてそのFBをさらに上の役員や社長が見えるようにすることで、個々人に合わせたアドバイスをするようFBしたりと、質を高めることが可能になります。
悪い反応の例としては、
・言葉足らず(どこに感謝してるのか不明、何が良かったのか不明)
・余計なひとことが多い
・そっけなくて伝わらない
などがあります。
良い反応の例としては、
・手放しに褒める
・具体的にどこが良かったのかわかるように褒める
・具体的にどこがマイナスだったのかわかるように指摘する
・褒めつつも前向きなアドバイスをする
などがあります。
■この本から得た教訓
気づき
営業部としてヒアリングシートを作成することにより各営業の主体性や創造性を奪うかもしれないが、ワンシート提案書は試す価値があると感じた。
ヒアリングができていない(であろう)営業マンが多い中、商談先がどのような悩みを抱えており、どのような方向性で動きたいのかを把握することに活用できそうと感じた。
明日からできること
1.ワンシート提案書を作成してみる
2.実際に比較的新規のお客様に回答していただく