【「洗脳」営業術】/苫米地 英人
新規性 :★★★★☆
有益性 :★★★★☆
おすすめ度:★★★★☆
■この本で解決できること
認知科学者でありビジネスマンでもある著者による、相手を洗脳する営業手法の紹介本です。また、営業職としてモチベーションを保つ方法や、本当の自己実現とは何なのかが解決できます。
■この本で伝えたいこと
●営業の目的
「洗脳」というと、悪いイメージを持つ方も少ないかもしれません。しかり、「洗脳」を利用して相手に「買いたい」と思ってもらうことができます。また悪いイメージの多くは「催眠」と呼ばれることが一般的です。
「洗脳」が永続的なものに対し、「催眠」は一時的でかけられた人がいなくなると覚めてしまいます。営業においても「催眠」では意味がないことがお分かりになると思います。
さて、まず著者が伝えたいこととして、「何を売るのか」ということです。これが営業の目的となりますが、多くの人は「商品を売る」、「解決策を売る」で終止してしまいます。
しかし、営業の本当の目的とは「お客様のハッピーな未来を売る」ことなのです。商品によってどんなハッピーな未来が待っているのかをイメージさせることができれば、欲しくてたまらない状態になり、リピーターにさえなってくれるのです。
●洗脳営業術
さて、営業の目的は「ハッピーな未来を売ること」ですが、どのように実現するのか、その手段について紹介します。
まず、雑談を通して相手の抽象化能力を図ります。抽象化能力が高い人は、自分には直接関係ないような地球温暖化などの環境問題や政治問題などに関心が高い傾向にあり、抽象化能力の低い人は自分主体や自分に密接に関わることに関心が高い傾向にあります。
そして、抽象化能力の高低に合わせて商品によってハッピーな未来が実現されるストーリーを構築します。
具体的な手法としては、相手の内部表現を書き換えです。人間は実際の物理的世界をモーダルチャンネルと呼ばれる脳の入口で情報化し、認識の世界を作り上げています。これは往々にして物理的世界と異なるのですが、人間は認識の世界によりリアリティを感じます。
※モーダルチャンネルは五感+言語で構成されています。
(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)
つまり内部表現の書き換えとは、モーダルチャンネルを利用して相手の認識の世界の情報を書き換えることです。それにより、ハッピーな状態をイメージとして思い描いてもらうことができれば、脳の前頭前野にドーパミンという脳内伝達物質が流れ、「プライミング」という状態になります。そうすることで期待や興奮を感じ、商品の購入に結びつきます。
●様々なテクニック
ひとめぼれの技術
海馬の情報処理ミスを意図的に引き起こすこと。眼球運動を利用し、相手の視覚野に移っている自分と記憶の中の好ましい人物を混同させる手法です。
声はゆっくり低く
父親の声を聞くと安心するのと一緒で、安心を無意識に引き起こすことができます。
「臨場感空間」を共有・支配する
①ペーシング
相手と同じ速度で呼吸したり、同じ表情やしぐさをすることによりラポールを生じさせる。
②感覚の言語化
五感で感じていた無意識を言語で認識することで、モーダルチャンネルを切り替える。こちらの言語の世界に臨場感が移動させる。
③リーディング
相手の身体感覚を言語で誘導する(内部表現に新たな情報を書き込む)
カタレプシー
人間には一連の動作をフレームとして記憶しており、そのフレームをわざと中断することで相手の心に隙をつくることができます。そうすることで相手は心の安定性を失い、暗示を埋め込まれやすい意識状態となります。
共有する空間の中で自分のテリトリーを広くする
臨場感空間を支配しているという事実を相手の無意識に植え付ける効果があります。
●モチベーションを上げ、自分を高める
本来自分がやりたいことができなくなっている要因の1つに、自分自身で限界を作っていることがあります。なぜ限界をつくってしまうのでしょうか。
これは、これまでの出来事に対して周囲の人から「お前には無理だ」「他にやるべきことがある」などと否定されてきた経験から生じています。
つまり、自分の限界を破り、本当にやりたいことや目標を達成するうえで、そうした周囲の「ドリームキラー」をうまく扱うことがとても重要です。
ドリームキラーから自分の夢を守る方法としては、
①まず自分の夢は語らない
語ってしまった場合は、
②ドリームキラーの発言の評価を変える
ラベリングという手法を用いて、発言の評価を変えることが有効です。
B(ドリームキラーの煩悩だと冷静に判断できる)
D(自分の雑念が入ってしまい、冷静に判断できない)
T(「現在あるべき自分」と関係のあること)
Nil(「現在あるべき自分」と関係ないこと)
このようなラベリングを繰り返すことにより、ドリームキラーから植え付けられた夢の阻害要因を消すことができます。
そして、過去の出来事に対する評価も変えることができれば、自信がつき、限界がなくなるでしょう。
新規開拓は誰しもあまり好きではありません。これは、人間の現状維持の本能によるものです。人間にはホメオスタシス同調と呼ばれる機能(身体と外部環境が連動して互いに情報を更新し合うこと)が備わっています。環境の変化が頻繁に起こるとホメオスタシス同調も頻繁になり、身が持たなくなります。これを回避するために現状維持の本能があると言われています。
本能なので逆らうことはできませんが、コントロールすることはできます。
①思考の抽象度を上げる
エリア変更などで東京→札幌となっても、「同じ日本」と考える。
社長と会うことに緊張しても「同じ人間」と考える。
②プライミング
自分用のインセンティブを(契約が3件取れたら行きたかったケーキ屋に行く)
また、ゴール設定とイメージでモチベーションを上げることができます。
①高い目標設定
②それを達成している未来から逆算したときの「現在のあるべき姿」をリアルに想像する
このプロセスにより、実際の自分とのギャップが無意識に生まれ、あるべき姿を実現するために意識が向かうようになります。
(現在のあるべき姿をコンフォートゾーンにする)
■この本から得た教訓
気づき
内部表現の書き換えという新規性の高い営業手法は、効果が高い一方で実現可能性が低いと感じた。(習得まで労力と時間を要する)
明日からできること
・ひとめぼれの技術は面白そうなので実践してみる。
・ラポールは比較的簡単なのでPDCA回しながら習得する。