にべもない #28 辞書の生き物
にべもない
なんのあいそもない、そっけない、という意味で使われますが、ニベはスズキ目ニベ科の魚の名前です。
ニベは漢字では「膠」または「鰾膠」が使われますが、「膠」は接着剤として使われる「ニカワ」、「鰾」は魚のウキブクロです。
ニカワ(膠)
ニカワは、古来より日本の伝統工芸品(仏具、漆器)などに使用された天然の接着剤ですが、ニベという魚のウキブクロから作られていました。ニベのウキブクロは大きく、煮詰めるとニカワが取れたことからニベ(膠:ニカワ)となったのでしょう。
ニベのウキブクロから作ったニカワの粘着力が強いことから、「ニベ」は他人との親密さを表すようになり、「ニベがない」状態はその親密さがない状態を示すことになり、無愛想なことを「にべもない」と言うようになりました。
「私の誘いをにべもなく断った」などビジネスライクでドライな冷たい感じを受ける対応などに使われる表現です。
イシモチ
同じニベ科の魚でイシモチがいます。同じ科ですので、同じ魚だと思われがちですが違う魚です。この魚の名前は、頭部に大きな耳石(じせき)を持っているため、「石持ち」が転じて命名されたといわれています。また、標準和名では「シログチ」で、こちらはイシモチが浮袋を使ってグーグーとなくことから、愚痴を言っているように聞こえることに由来するとされています。
日本では多種多様な魚が獲れ、いにしえより日本人の生活に深くかかわり続けてきたことがうかがえます。