「オンラインでは難しい講座」をオンラインでやるときに重要なこと。
ビジネス数学インストラクター養成講座(第7期)は世の中の情勢によりオンラインで講座を提供することになりました。突貫工事(笑)でEラーニングを構築し、最後はオンラインでの1on1(面談)にて対話をすることで認定付与。そんな立て付けでやってみた。
いやぁ 発見があったね。
インストラクターになるための講座。これに欠かせないものがある。「実技」だ。例えば大学生が塾講師のアルバイトをするとした時、単なる面接だけではなく簡単なデモ授業をやってもらうことは当然だろう。知識を持っていればすぐにできる仕事ではない。だから実技を行い、指導者が的確なフィードバックをし、教えるということがいかに難しいことなのかを身体で覚えてもらう。その体験を通じて、さらに自己研鑽してもらう。これが本来の「インストラクター養成講座」の機能だ。
しかし、直接会えない、複数で集まれない、という今の時代にはこれがなかなか難しい。そういう意味で今回の「ビジネス数学インストラクター養成講座」は100点満点ではない。最初から100点など求めなかった。総合評価としては50点〜60点くらいだろうか。講座を止めないこと。新しいインストラクターを輩出することを優先した。
その講座運営をどう進めたか。何を感じたか。簡単にまとめてみる。どなたかの役に立つなら嬉しい。いつもいうことだが、これは私のひとりごとだ。興味のある人だけ読み進めていただければ結構です。興味のない方はぜひご自身の時間を大切にしてください。さようなら。今日も良い1日を。
1.参加者に許可をもらう
まず大事なのは、参加者に許可をもらうこと。参加者はリアルの場で深沢真太郎と会えること。直接指導してもらえること。実際の実技ができること。それらを勝ちとして申し込んだかもしれない。講座を提供する側の論理と参加する側の論理は違う。100→50の提案に了解してもらうことが大事だ。さらに大事だと思ったのは、講座を提供する側の信念や哲学のようなものをしっかり伝えること。例えば私はご案内のメール文章の最後にこのようなメッセージを伝えている。
<さいごに>
繰り返しではございますが、当講座は「インストラクター」を養成する講座です。
ゆえに実際の話し方や教授法などをできるだけ集合型で学ぶことが理想でした。
そういう意味では今回のEラーニング&オンライン面談は100%のサービス提供ではないと考えます。
しかし一方で「ビジネス数学を教えたい」と思っている方には1日でも早くご活躍いただきたい、というのも当協会の偽らざる本音でございます。
そのような背景の中での決定とご案内であることをご理解いただき、ぜひ一緒に学び、我々の仲間に加わっていただければ嬉しく思います。
2.ちゃんと学ぼうとしている人にはeラーニングは非常に有効
昨今、周囲を見ているとみんなzoom(オンライン会議ツール)で集まって講座やセミナーを開催している。もちろんいいと思う。ただ、それは前提や内容によるということが抜けているのではないだろうか。「なんでもかんでもzoom」の風潮には警笛を鳴らしたい。(誰にも聞こえない笛かもしれないが)
私の整理はこうだ。
・サクッとエッセンスを掴むことが目的 → オンライン会議ツールでOK
・ちゃんと学ぶことが目的 → eラーニング型が良い
オンライン会議ツールは楽しいかもしれない。しかし、様々な理由により主役はどうしても講師やファシリテーターになる。悪い言い方をすれば、参加者はいくらでもサボれる。zoomのセミナーは良くも悪くもどんどん「流れて」いってしまう。あのスタイルは実は聞き逃してしまう情報も多い。オフラインの集合講座などでもそうでしょう。2時間いれば集中がきれている時間帯もある。その場にはいるけれど耳に(頭に)入っていない。そんなことはたくさんある。そのことを、意外と皆さんはわかっていない。
加えて、リアルの場で100の量だとしたらオンラインでは50くらいしかできない。例えばリアルの場で5分程度でできるディスカッションやホワイトボードを使ったワークも、オンラインだと最低10分はかかる。すでにzoomでファシリテーターをした人は「作業をさせると思ったより時間がかかるなぁ」と感じたはずです。これは、サクッとエッセンスだけ掴みたい人には程よい感じですが、ちゃんと学んでじっくり身に付けたい人にとっては相性が悪い。まどろっこしく、イライラしてしまう。例えば専門的なことをしっかり学びたい人が、その分野の超入門書を読んだ時の感覚。さっさと本題に入って欲しい。もっと深い話を聞きたい。レベルの低い人に付き合うのがめんどい。・・・まどろっこしく、イライラしてしまうでしょ?
一方、eラーニングであれば講師側が(通信環境や相手の反応など気にせず)たっぷりと本質を語ることができる。参加者は誰に邪魔されることもなくじっくりとその内容を学べる。自分の都合で一時停止。自分の都合で再開。自分の都合でもう一度視聴する。自分の都合で後日復習。リアルの場で100の量だとして、このeラーニングも100を実現できる。だから、ちゃんと学びたい人にとってはこちらの方が適しているのだ。
今回のビジネス数学インストラクター養成講座は10万円の参加費をお支払いいただいて参加いただいている。年間に3期しか行わない。人数も限定されている。参加者は認定講師の資格を得て何かしらの教育活動をしたいと思っている。どう考えても、「ちゃんと学びたい人」なのだ。だから私は講座のコアをeラーニングにして提供した。機能していると実感する。
ただ、これだけでは参加者とまったく対話がないまま講座が終了する。それは避けたい。だから、私は反転学習の考え方で講座を閉めることを考えた。
3.「反転学習」×「1on1」という発想
反転学習とは、一言でいうとブレンド型の教育提供だ。
eラーニングで完結するのではなく、eラーニングはあくまで自習用のツール。それを「ちゃんと学んだ」人に限り、次のステップとして講師との1on1(1対1の面談型セッション)を用意し、ここでラップアップして修了とする。もちろんオンラインで。
ここは私もzoomを使った。zoomで十分。というか、zoomが良い。なぜなら、このセッションで必要なのは「顔が見えること」「対話できること」のただそれだけだからだ。
1on1にすることで無駄なワークや参加者同士のディスカッションなどを排除できる。基礎学習を終えた受講者がそれを前提に講師とQ&Aを1対1で交わす。講師はeラーニングでは伝えきれない情報を、その人物にむけてカスタマイズし、伝えることができる。受講者も基礎学習を「ちゃんと」終えているので、課題感や質問の質が高い。これが最大のポイントだ。
STEP1 eラーニングによる自主学習
STEP2 zoomによる1on1型のラップアップ
ちゃんと学ばせるケースの講座提供としては、ひとつの型だと思う。
4.「自分でやらなければ成果は出ない」という真実
インストラクター養成講座のような指導技術を学ぶタイプの講座、実技を伴うタイプの講座はオンラインではなかなか難しいだろう。それは私も実感する。それでも今回、(無理やり)やってみて強く思ったこと。それは、ある厳然たる事実についてです。
結局、自分でやらなければ成果は出ない
仮にリアルの場で、集合型で、楽しく実演ができる講座をしたとしましょう。その場は楽しい。盛り上がる。偽りの満足感もあるだろう。でも、結局はその講座を修了した後に自分で実践しなければ上達しません。成長もしません。これだけは間違いないのです。当たり前か。
私のビジネス数学インストラクター養成講座も同じ。(自分でいうのもアレですが)ビジネス数学というものは極めて難易度の高い指導技術を要するテーマです。講座の1〜2日でマスターできるほど甘いものではありません。ちゃんと学び、ちゃんと実践しないと、決して上手に教えることはできないものです。
そういう意味では、ビジネス数学インストラクター養成講座それ自体はオフラインでもオンラインでも「機能」は変わらないのかもしれません。「気分」は変わるかもしれませんが、「機能」は変わらない。オンラインだろうがオフラインだろうが、やる人はやるしやらない人はやらない。そうだとすると、今回の型がイレギュラーではなくレギュラーになることも考えられる。もう少し検証して、代表理事として意思決定したいと思っている。
そろそろまとめ。
私はビジネス数学インストラクター養成講座という、「オンラインではむずかしい」講座を(無理くり)オンラインでやってみた。そこから得られたものは次の通りだ。
1.参加者に許可をもらう
〜想いや哲学を語れ〜
2.ちゃんと学ぼうとしている人にはeラーニングは非常に有効
〜100を100のままで〜
3.「反転学習」×「1on1」という発想
〜対話するときすでに課題感や質問の質が高い〜
4.「自分でやらなければ成果は出ない」という真実
〜「気分」は変わるかもしれないが「機能」は変わらない〜
これからチャレンジしようと思っている方の参考になれば嬉しい。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
今日も良い1日になりますように。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
国内でただひとり、ビジネス数学教育家。ビジネスパーソンのための数学教育を提唱し企業人の育成に貢献。研修。講演。授業。面談。ゼミ。作家。講師育成。。。いろいろやっています。