「意思決定はどんな気分で行うかで決まってしまう」説を数学的モデルで説明する。
「意思決定はどんな気分で行うかで決まってしまう」説を数学的モデルで説明する。
私たちは「数値に置き換える」というスキルを学習しています。
前回の記事で、意思決定するにあたりいかに数値化を用いるかを解説しました。
「場合分け」と「確率」という数学的なアプローチを採用することで、いくつかの中から1つを選択できる方法論。
意思決定に課題を持ちの方はぜひ学んでみてください。
さて、今回も引き続き意思決定の話題。前回のモデルと構造的には同じ方法論のご紹介になります。より実践的で、より人間的な内容になっていきます。是非とも最後までお楽しみください。
さっそくですが、あなたは何かを決める際、どんな精神的傾向があるでしょうか?
いずれも間違いではありませんし、人間という生き物を実によく表しているとも思います。「どちらでも良いのでは?」というのが模範的なコメントでしょうか。
実はビジネスにおける意思決定は、その意思決定者がその瞬間、どんな気分でいるかによって決まってしまいます。そのことを数学的に説明しているモデルがあります。ぜひご紹介させてください。
ハーヴィッツ原理
「各行動における最大利得と最小利得の両方を考慮 して行動を選択する」という決定原理である。ハーヴィッツ(L.Hurwicz)は将来の不確実な状態に対する意思決定者の態度を表わす楽観度(α)とい う概念を導入し,次のような決定原理を提案した。すなわち,0≦α≦1 とし,最大 利得のα倍と最小利得の(1-α)倍との和を最大にするような行動を選択するとい う決定原理である。
max{最大利得×α+最小利得×(1-α)}
理解のため、少しばかりお勉強にお付き合いください。
たとえばある企業で新製品の候補が3つあるとします。リリースした際に想定される最高のシナリオと最低のシナリオを考え、想像し、数値に変換して差をつけます。最高のシナリオを想定した時に得られるものを最大利得、逆を最小利得とします。詳しくは前回の記事をご覧いただければ分かるはずです。
商品A 最大利得100 最小利得 10
商品B 最大利得 70 最小利得 30
商品C 最大利得 50 最小利得 40
(case1)
楽観度(α)=0.9とします。つまり「めちゃくちゃポジティブに考える」ということです。うまくいかないことはあまり考えないのです。
商品A 100×0.9+10×0.1=90+1=91
商品B 70×0.9+30×0.1=63+3=66
商品C 50×0.9+ 40×0.1=45+4=49
この論法だと、商品Aを採用することに決めます。
(case2)
一方、楽観度(α)=0.3とします。つまり「どちらかというとネガティブに考える」ということです。うまくいく確率は低いというテンションです。
商品A 100×0.3+10×0.7=30+7=37
商品B 70×0.3+30×0.7=21+21=42
商品C 50×0.3+40×0.7=15+28=43
この論法だと、商品Cを採用することに決めます。
この(Case1)と(Case2)の結論は、おそらくあなたの直感にもFITしている妥当なものでしょう。あらかじめ設定された商品Bと商品Cの数値を比較したとき、あなたは「微妙な差だな…」といった印象を持ったのではないでしょうか。
もし(Case3)が存在し、楽観度(α)=0.4とするなら、商品Cを採用するという結論は無くなります。その「微妙な差だな…」とはその通りであり、楽観度(α)にしてわずか0.1の差で変わってしまうほどの差と理解できます。
商品A 100×0.4+10×0.6=40+6=46
商品B 70×0.4+30×0.6=28+18=46
商品C 50×0.4+40×0.6=20+24=44
さて、重要なのはここからです。
この方法論は意思決定者であるあなたに対してこう問いかけています。
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