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近所の町中華のお話🍜~器に咲いたカサブランカ~


好きなものは、ラーメンと競馬とサウナと古い乗り物。
どれも何となく昭和を匂わせるようなフレーズが多く並びますが、一応ギリギリ平成生まれの青年です。
自分で言うのも烏滸がましいですが、好青年です。


横浜市在住の私ですが、ラーメンに関しては神奈川県内、東京都内辺りであれば目当てのラーメン店に行くという目的のみで外出する事も多々あります。

しかし、このご時世、なかなか気軽にラーメンも食べに行けない世の中へと様変わりしてしまい、溢れ出すラーメン欲を近所の町中華で済ませる。という日常が当たり前になってきてしまいました。


昨年末に引っ越しをした私ですが、引っ越してすぐに新居から徒歩3分程の場所に建つ、趣のある町中華へ行く機会がありました。

カウンター7席程の小さなお店。
7席と言えど、短いカウンターに隙間なくびっしりと椅子が並べてあるため、実際に人が座れば5人がMAXといったところ。

店の壁には、冬なのに『つけ麺始めました。』の手書きポップ。

年配のご夫婦が切り盛りするお店です。



私「チャーシュー麺下さい。あと、餃子と瓶ビールもお願いします。」


店「チャーシュー麺と、餃子とビールね!
いっぱい頼んでもらってわりぃねぇ。」


謝られる事なんて何もないのに謝られました。

決して丁寧な接客とは言えないまでも、何となく人柄の良さそうなご夫婦。
大変言い難いですが、とても繁盛店には見えなかったので、特に何の期待もせずに店内に設置されたテレビを観ながら席で待っていました。

待つ事数分で先に餃子。
でかい!
そして美味い!
薄い皮の中にたっぷりと詰められた餡。
ビールのあてに食べるには勿体ないくらいジューシー。
白米が欲しい...。


続いて着丼したチャーシュー麺。

口の広い丼になみなみ注がれたスープ。
大きめの切り口にカットされ、敷き詰められたチャーシュー。
まさに町中華特有のビジュアル。


一口スープを飲んでみると、なんか美味い...
特に強調される素材や調味料の味は特にありません。
何がどう美味しいのか説明しろと言われても、特に際立ったところのない、何とも説明し難い美味さなのです。


普段、有名店ばっかり好んで食べに行っていた自分からすると、比内地鶏や名古屋コーチンなどの有名ブランド鶏、無農薬で育成した鶏の卵など、一級品の素材を使用して作られたラーメンは、やはり美味しい。
香りも際立つし、各店の拘りがそこから伺えます。
綺麗に整えられた麺線、低温調理されたレアチャーシュー、スパッときれいに小口切りされた九条ネギなど、有名店のラーメンはビジュアルももちろん一級品。


しかし、町中華のラーメンにはそれら有名店には出せない魅力があります。


そんなこんなで、週1〜2ペースで通い始めて、コロナのワクチンがどうのこうの、予約がなかなか出来ないだなんだ、そんな世間話くらいはさせてもらえるような関係性になってきた頃の話。


いつものように、チャーシュー麺と餃子と瓶ビールを頼んで、席で待ちます。
チャーシュー麺が運ばれてきたその時、ご夫婦の奥さまから衝撃的な一言を掛けられました。





奥さま「わりぃねぇ、最近うまく味が決まらなくて。味足りなかったら醤油足して!」






普通そんな事お客に言う!?
お店側の立場としたら、絶対にお客さんには言えないフレーズ。
しかし、ぶっきらぼうな親切心ゆえに、出てしまったワードだろう。


この出来事をキッカケに、更にこのお店のファンになってしまいました。


確かに、時々味がブレることはありますが、詰め込まれた真心に一切のブレはありません。


その一杯を表現するならばまさに


"究極の普通"



「星の数じゃ測れない、まるで器に咲いたカサブランカ」


こんな歌詞の曲がありましたが、まさにこの表現がぴったりな、素敵なラーメン。



コロナ禍の現代で、心温まる一杯。



「いつもいっぱい食べてもらって、わりぃねぇ」


毎回そう声を掛けられて今日も暖簾を潜って店を後にする。


これからも、このお店に通うことになりそうです。



お終い。





追記:究極の普通といえば、"ノームコア"大好きな馬だったなー。

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