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【車内販売】 旅する日本語 第1話
「冷し六月柿いかがですか〜」
車内販売の女性がやってきた。氷の入った桶の中を見つめる
皆、二つ前の席のあたりに差し掛かり、己の横を通り過ぎるまで、桶の中を凝視している。思うことは同じ。トマトだよね
人気の若手芸人の座る席の隣で販売員が立ち止まる。
しばらく動かない。心なしか震えながら言葉を発する
「早くつっこんでください、楽になりたいんです!」
若手芸人が立ち上がる
「トマトやないか!!」
販売員がその場に崩れ落ちる。皆の視線が辛かった。言葉にならない声が。
「トマトうまそうやな、いくらやねん。ビールももらおかな」
「買って下さるんですか?トマトを」
「わたしも!」「僕もトマト一つ!」
「あ、ありがとうございます!」
青々と昔懐かし夏の味
私は一度だけ、六月柿を売り切りました。夏の暑い日のこと。暑い暑い、夏の日に
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