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小学生のとき、映像記憶ができた話

小学三年生のとき、いじめられて不登校になった。何が原因でいじめられたのかわからない。たぶん、生意気だったんだと思う。ランドセルにごみをたくさん入れられたり、後ろから跳び蹴りを食らわされたり、かっぽう着をトイレに投げ込まれたりされた。

ある日、登校時間になるとお腹が痛くなった。親も最初は具合が悪いと思っていたが、何日も続くとずる休みだと叱るようになった。そのうち、学校の先生が自宅までやってきて僕を家から引きずり出そうとした。

玄関先での先生との攻防戦は、自分史に残るような壮絶なものだった。玄関は、いわば国境のようなものでここは死守しなければならない。心身ともに大きなダメージを受けたが何度も迎撃に成功した。

ところが、敵は学校の先生だけではない。朝になると、父が布団に潜り込んでいる僕の耳元で目覚め時計のベルを鳴らし続けていた。いわゆる音責めである。これが地味に効いた。

アメリカ国防総省の報告書によると、ブリトニー・スピアーズの曲を大音量でテロの容疑者に聞かせていたという記録が載っているらしいが、我が家は米軍よりも先にこのような拷問がおこなわれていた。うちの家族は、HUNTER×HUNTERのゾルディック家に近いのかもしれない。

このような父の音責め(遠隔操作型)と先生の引きずり攻撃(近距離パワー型)によって朝は地獄だった。腹痛がひどくなる一方だった。

夜になると、父が仕事から帰ってくる。

「なぜ、学校に行かなかったんだ!」と正座をさせられた状態で説教をされた。学校に行くと約束するまで眠らせてくれない。子どもだから夜の9時や10時は眠くて眠くて仕方がない。だから、「学校に行きます…」と約束をした。でも、学校に行けない。同じことのくりかえし。

父がしびれを切らし、真夜中に車で僕を遠くに連れ出した。「学校に行かなければここに置き去りにする。それでもいいか?」と脅しをかける。小学三年生の子どもだから怖くて怖くて仕方がない。「学校に行きます…」と泣きながら約束をさせられた。でも、学校に行けない。「お前は、とんでもない嘘つき野郎だ!」と怒鳴られた。

しばらくすると、からだに異変がおきた。腹痛だけでなく手洗いが止められなくなった。手が血でにじむまで洗いまくった。自分でもおかしいと思っているのに止められない。手が痛い。痛いのに止められない。

それから、不思議な幻覚を見るようになった。部屋の上の隅に異世界が映し出され、それが見えるようになった。妖精のようなものがいた。面白いからその世界をもっとのぞこうとすると映像が徐々に小さくなって見えなくなってしまった。

僕の異変を感じたのか、父は登校を強要しなくなった。学校側は連れ出したがったようだが、父が拒否したらしい。それ以降、腹痛や手洗いはなくなった。不思議な世界も見えなくなった。ただ、映像記憶ができるようになった。

たとえば、読んだ本はすべて丸暗記ができた。図書館で借りてきた本を一度読めば、暇なときに目をつむりながら再読していた。残念ながら、中学にあがるまでにこの能力が消えてしまった。せっかくいじめや父による拷問に耐えたのだから、この能力を残してもらいたかったけれど、世の中そう上手くはいかないらしい。

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