ダダダイアリー、主に映画。2024/9/4ー9/14
9月4日
いとうせいこう「親愛なる」読了。
注文した者の個人情報が小説に反映されるという、オンデマンドな世界に一つだけのパーソナルノベルの文庫版。サイバーソウルパンクな世界に私の名前や最寄駅やメアドが連発されるドッキリ感とワクワク感。情報が氾濫する世界からの言葉の奪還。これは楽しめた。
菊川のStrangerで開催中のグレタ・ガーウィグ特集で3本一気見。
ジョー・スワンバーグ監督「ハンナだけど、生きていく!」
モラトリアムなオフィス、スポンティニアスなハンナ、水中ゴーグルとトランペットと仕上がりそうもない脚本。マンブルコア派のミューズとして輝きまくるガーウィグの弾ける若さ。久々に観たけどやっぱり良いよなこれ。
ジョー・スワンバーグ&グレタ・ガーウィグ監督「ナイツ&ウィークエンズ」
ジョーとグレタの共同監督で2人が主演を務めた遠距離恋愛の話。かなり繊細で微妙な感情を丁寧に描いておりどれだけパーソナルが反映されているのかが心配と不安になる演じるという部分では痛い作品だった。
デュプラス兄弟監督「BAGHEAD」男女4人の俳優が山荘に籠って映画を作ろうとするが……。いかにもホラーな展開だなと思ったらホントにホラーになって、やっぱり違うかもいやそうかもと繰り返し、最後は映画制作の倫理観の無さに着地するという後味の悪さ。マンブルコアでホラー映画撮ろうとするとこうなりますと言った作品。グレタはずっとチャーミングだったが。
3本続けて観たから絶対にどこかで寝るかと思ったがガーウィグが寝かせてくれなかった。やっぱり「ハンナ〜」が断然に良かったな。
9月6日
朝ドラ「虎に翼」第23週まとめて鑑賞。
政治の貧困を嘆かずにはいられない。
最高にしびれる主文後回しの回からの「あさイチ」伊藤沙莉のプレミアムトーク。本編終わっても涙。「虎に翼」もう直ぐ終わってしまうなんて辛い。追撮開始して延長して欲しい。
ポレポレ東中野にて、太田達成監督「石がある」鑑賞。
酒匂川をひたすらダラダラと歩いては遊び倒す帰らない2人。見知らぬ場所で見知らぬ者と出会うそのサスペンスと石を中心に生まれるアクション。そして立ち上がるユーモア。もう余りにも映画。映画の原理と生きる事の原初的な感覚に立ち会える幸福と興奮。これは爆音でまた観たい。
上映後には太田監督、出演の小川あんさん、加納土さんによる舞台挨拶付き。あんちゃんの熱い映画愛と映画初出演の加納土のカットバックのピュアエピソードなど楽しい話がたくさん聞けた。助監督に清原惟、宣伝に肌蹴る光線の井戸沼さんなどスタッフも素晴らしい応援しまくりたい作品。
9月9日
上半期最大の発見とも言えるニナメンをもう一度観るため久々の早稲田松竹へ。開催中の「ニナ・メンケスの世界」二本立て鑑賞。
「クイーン・オブ・ダイヤモンド」
世界の終わりに佇むカジノ。確信的で観客を信頼したショットの長さとエピソードの積み重ね。絶望が呼び込むユーモア。ヴァニティとエンプティ。立ってるだけで映画になるティンカ・メンケスの気高さにまた震えた。
「マグダレーナ・ヴィラガ」
不快なジョブ、その倦怠と絶望。別の場所で別の仕方で3回唱えて魔女になり、別のラッパを吹き鳴らす。殺人容疑をかけられた娼婦アイダの絶望の闘争を詩の時系列で描くニナのデビュー作。銃声と鳴き声。ティンカの孤高の美しさにまた痺れた。
サンデードキュメンタリー「京都・磔磔〜酒蔵ライブハウスの50周年」録画鑑賞。
創業50周年を記念した周年ライブを中心にその歴史を振り返るドキュメンタリー。鮎川誠や遠藤ミチロウの映像に涙。キョンキョンのナレーションも良かった。昔一度だけヒートウェイヴのライブを観に行った事あったようなぁと念の為調べ直したらライブスポットRAGと勘違いしてた。思い込みって凄いな。歴史改竄してたって事でいつか行かないとな。
BSドキュメンタリー「アメリカ 揺れるユダヤ系新世代〜イスラエル主義とパレスチナの現実」録画鑑賞。
アメリカとイスラエルによる徹底した思想教育による親イスラエル化。洗脳に近い誤った歴史観を身につけたユダヤ系アメリカ人の実態とパレスチナの真実を目の当たりにしてその欺瞞に気づき始めた若い世代。その目覚めと行動に希望を託した必見のドキュメンタリー。
9月11日
映像の世紀バタフライエフェクト「9.11あの日が変えた私の人生」録画鑑賞。
息子の死を悼む父親がアフガニスタンに乗り込むが現地の惨状を目の当たりにして子供の支援と交流へと目的を変える。怒りに溢れた白人至上主義者が無差別にアラブ人を襲うがその被害者から赦しを受け自分の過ちに気付く。伝説のスナイパーはPTSDに悩まされる。兵士は戦場で死んだ数よりも自殺した数の方が遥かに多いという事実。敵とはいつも政治の都合が生み出した対象であり真実の敵はいつも内部にある。久々にバタフライらしい内容だった。
109シネマズ二子玉川にて、山中瑤子監督「ナミビアの砂漠」鑑賞。
このどうしようもない腐った世界で正気を保つという事の狂気。その孤独としんどさ。安易な共感を跳ね除けて前のめりに歩くカナのカラカラに乾いた渇望。展開の読めなさとユーモアと疾走と側転の継承。待った甲斐ある山中監督の天才が炸裂した圧倒的に美しくティンプトンな作品。
豊洲に移動。
ららぽーと豊洲にあるSPBS TOYOSUにて開催の『世界の適切な保存』刊行記念トークイベント「かけがえのない生の断片の保存」──永井玲衣×寺尾紗穂へ。
スターフライヤーマンから始まる気づき、聴き取り、対話の経験による生のエピソード。適切な保存(継承)が拡げる世界の奥行き。「対話は本当にヤバい」(by永井玲衣)という名言も飛び出す2人のフラットさに満たされたとてもかけがえのない時間を共有できた。
9月14日
朝ドラ「虎に翼」第24週まとめて鑑賞。
尊属殺人、安保闘争、少年法改正、公害書訴訟。全ての原因はダメな大人たちにある。若者たちの声を掬い取ろうとする寅子たちの奮闘。新キャストも色々慌ただしく登場。今週も全話必見だった。
池袋へ。
東武池袋で開催中の「秋の大北海道展」へ。ちょっと覗いてみたら案の定カオスだった。
せっかくなので富良野ぷちぷちバーガーの「ふらの和牛の焼き肉と彩り野菜のライスバーガー」とかまぼこのヤマサ宮原のすり身とチーズを挟んだトーストサンドと伊藤園の北海道とうきび茶をイートインして、札幌農学校の酪農焼きチーズクッキーをお土産として購入。
続いて久々にOLD南池袋へ。
新商品DOKKIから、チョコミント味と東京コスパグルメとのコラボ味の2種を頂く。小さな見た目とは裏腹なボリューミーで濃厚なテイスト。全7種類あるから組み合わせとか楽しめるしテイクアウトやお土産にもうってつけ。これはヒット商品が誕生した。
池袋シネマ・ロサにて、川原康臣監督「TODOKU YO-NA」鑑賞。
葉道と奈子。草原で出会いモルックに明け暮れる。スキットルの乾いた音と曽我部恵一の歌。シネマスコープは実はモルックの為に用意されたサイズだったのかと思わせる純粋モルック映画。その序章を描いた様な作品だったので次はチーム戦を観たい。そしてモルックやってみたい。
上映前の初日舞台挨拶で川原監督、脚本の上原三由樹さん、出演の廣田朋菜さん、大河原恵さん、磯部泰宏さんが登壇。制作の経緯やコロナ禍の中、少人数のスタッフで作られた事など。そして上映後にはサイン会も開催。曽我部恵一会場限定サントラもゲット。廣田朋菜の美しいフォームと衣装が堪能出来るトモナー必見の作品だった。