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ダダダイアリー、主に映画。2024/9/16ー9/29

9月16日
サラ・ロイ「なぜガザなのか」読了。
「ホロコーストからガザへ」の続編。サラの3つの論考と3人の訳者の考察によるパレスチナの分断、孤立化、反開発のプロセスと実情の解説。狡猾で残酷なイスラエルの最悪と絶望を更新し続けるジェノサイドの継続。何度も心が折れるが目を逸らしたり忘却したり沈黙してはいけないと再度実感。

9月17日
Thee Heart Tones「Forever&Ever」チカーノとノーザンソウルの融合による完全無敵なヴィンテージモダンソウルの誕生。Thee Marloesの「PERAK」と並ぶ胸踊るデビューアルバム。

ニック・ロウ「Indoor Safari」
肩の力が抜け切っているのに脇が閉まっており、足元がしっかりしたまま腰から砕け落ちる様なロケンロール。キング・オブ・パブロックの体現そのものな最高にも程がある一枚。

BS「街角ピアノスペシャル大江千里ニューオリンズに行く」録画鑑賞。
渡米してからかれこれ18年。ジャズの本場ニューオリンズで地元ミュージシャンやストリートミュージシャンとセッションしまくり弾けまくる大江千里63歳。良い歳の取り方してて良かったねぇとしみじみ思う千里世代の私でした。即興「スキヤキ」最高だった。

BS「ちあきなおみ〜NHK秘蔵映像で贈るデビュー55周年〜」録画鑑賞。
デビュー曲からラストシングルまで聴きたい曲全部出しの濃縮版ベストオブちあきなおみ。サブスク解禁したしビギナーにもうってつけのツボを抑えた選曲。でもやっぱり「夜を急ぐ人」は何度観ても聴いてもシビれるな。

高橋龍太郎コレクションを観に東京都現代美術館に行ったらまさかの休館日(昨日の祝日営業の振り替え休日)でがっくり。せっかくなので久々に清澄庭園に行って来た。暑かったけど心が涼んだ。

その後は菊川の映画館Strangerの2周年記念アンコール特集にて2本鑑賞。
ジョン・カサヴェテス監督「ミニー&モスコウィッツ」
ジーナ追悼で劇場初鑑賞したけど、シーモア・カッセルとジーナ・ローランズ、スクリーンの中で生きまくる2人の表情と動きが素晴らしすぎて物語なんかどうでも良くなって笑って泣いた。カサヴェテス作品で1番好きかも。ホントに最高な作品だ。


ジョン・ヒューストン監督「ゴングなき戦い」
8月に観て素晴らしすぎたのでおかわり。オレたちの人生はもうとっくに終わってる。だけど平気で生きていく。最高のタイミングで流れるクリス・クリストファーソンの歌。グッドルーザーたちの愛すべき物語。やっぱりすごい作品だよこれ。

9月18日
BS TBS「赤い衝撃」全話鑑賞。
赤いシリーズ第4弾。幼い頃にリアルタイムで視聴してたけど主題歌しか覚えていなかった。ワンマンが過ぎる中条静夫、失敗が過ぎる谷隼人。毎回乱暴な展開と障害者や女性への差別や偏見など酷い昭和の時代の中で百恵&友和のゴールデンコンビが放つ愛だけがいつも真実なドラマだった。

BS「Long Yellow Road ジャズ伝説・穐吉敏子の94年」録画鑑賞。
ピアニストとして、作・編曲家として、バンドリーダーとして、ジャズを通じてジェンダーや人種の壁を乗り越えて後進の道を切り拓いた敏子の半生とジャパンツアーの密着ドキュメント。反戦平和を願う今なお現役のリアルリヴィングレジェンド。娘はMonday満ちる。ひたすらカッコよかった。

ヒューマントラストシネマ渋谷にて、カン・ジェギュ監督「シュリ デジタルリマスター」鑑賞。
2000年にバウスシアターで観て以来の劇場再見。今見ると粗が気になるかもと危惧したが、韓国映画人が全員集合して「最高な作品を作って歴史変えるぞ」という当時の熱情が画面の至る所に刻み込まれているのがより明確に浮かび上がり、Odessa効果も相まって初見以上に感動した。「あなたと過ごした1年が私の全てだった」やっぱり韓流はこの作品から始まったって事で間違いない。

続いて太田達成監督「石がある」鑑賞。
2回目は遠くから見守る感じで鑑賞。映画を引き連れて来た様な小川あんのフレームインからトキメク。予測不能な往路と退屈な復路の二面性とその後の2人の意外な行動。そして見返して良く観ると少し意味深なラスト。これはまだまだ観れる作品だ。

9月19日
ル・シネマ渋谷宮下にて、フレデリック・ワイズマン監督「至福のレストラン三つ星トロワグロ」鑑賞。
去年のTIFFに次いで2回目。3世代に渡り三つ星を獲得するレストランの全貌を内から外から凡ゆる角度から細部に至るまで眼差したフルコースな作品。途中休憩挟んでの全く飽きる事ない240分。セ テ トレ ボンと叫びそうになる満腹感を味わった。

9月20日
ハンナ・アレント「人間の条件」読了。
人間の活動について古代から現代に至るまでの難解な考察。何度も断念してやっと最後まで読み終わった。つまりは労働と仕事の違いとヒエラルキー。ひたすら消費し尽くす為にひたすら働きまくる現代社会への警鐘と、属性を超えて観照的な態度で公的領域での活動を誘う様な事を言ってる気がした。多分。

9月21日
岸本佐知子「わからない」読了。
2000年頃から現在に至るまでのエッセイ、書評などを網羅した岸本大全。どれもこれもユーモアとウィットと毒と変態が溢れててときめくが、特に最後の日記パートは何度も声を出して笑い転げそうになり電車の中で読んでて困った。ずっとニンマリ出来る一冊。

「虎に翼」第25週
純度の低い正論は響きません。
はて?全て正しくなければ声を上げてはいけないの?
待望の円井わん登場。長官松山ケンイチが相変わらず良い。そして片付いていなかった美佐江問題がここに来て再浮上。悔恨と追憶。今週も全話必見だった。

9月22日
ICCギャラリーで開催中「ICCアニュアル2024とても近い遠さ」へ。
青柳菜摘+細井美裕「新地登記簿」鑑賞。 
青柳の映像とテキストと細井のサウンドスケイプ。仮設の足場から見下ろす新地パノラマ。仮想庭園感と地層感。現実から引き延ばされ生成された映像に同期しない音が、未来から今を想起しながら眺め返す試みの様でワクワクした。

関連イベントのアーティストトークにも参加。畠中実進行で青柳+細井のこれまでの作品紹介と今回のコラボについて。同じ日に一緒にフィールドワークしてそれぞれの場所で撮られた映像と音の素材をラリーしながら、お互いの出方に唸りしびれ乍ら作り上げたプロセスがたっぷりと伺えた。

畠中実さん、青柳菜摘さん、細井美裕さん
青柳菜摘さん、細井美裕さんと

初台から代官山へ移動。

晴れたら空に豆巻いてにて開催の「JOE BATAAN JAPAN TOUR2024」へ。
我らがサブウェイジョーの2017年以来の晴れ豆再降臨。ウィリー・ナガサキなど錚々たるミュージシャンを従えての大サルソウル(※サルサ+ソウルを掛け合わせたジョーによる造語)大会。もう4曲目位で失禁しそうになった。否したかも。腰が足が勝手に動き出し往年の斉藤由貴みたいなステップで久々に踊りまくった。終演後にはジョーと一緒に写真も撮れてサインもゲット。晴れ豆が楽園に1番近い場所と化した最高の夜となった。

ライブ中のジョー・バターン。コーラスは奥さんのイヴォーンさん
ジョー・バターンさんと

9月23日
田端にある小さな映画館CINEMA Chupki TABATAにて、瀬田なつき監督「違国日記」鑑賞。
通算4回目。今回は字幕付きでの上映だったので、盥の下りのシーンとか朝が「ほえっ」とか呟いてたとか字幕で新たに確認出来る所が多々あったので新鮮だった。柔らかな年頃を描かせたら他の追随を許さない瀬田監督。これは瀬田作品全てに言えるけどホントまだまだ全然観れる名作だ。
上映後には瀬田監督のトーク&サイン会実施。主演2人の起用についてやライブシーンでの演出についてなど色々伺えた。そして「違国日記」パンフレットと持参した「ジオラマボーイ パノラマガール」DVDにもサインしてもらった。YCAMの爆音上映には行けなかったが久々に瀬田監督と話せて良かった。そろそろ瀬田なつきレトロスペクティヴを誰か企画してもらいたい。

瀬田監督と

「違国日記」観た後は絶対に餃子食べたくなるよなと思ったら帰り道に餃子の美味しそうな町中華が飛び込んで来たので迷わず入店して1人包団(パオダン)結成。魯肉飯とキャベツ餃子をいただく。どちらもとても美味しかった。餃子の種類が豊富なので田端来た時はまた寄ろう。

その後は用賀のロックバー「エピタフ」に立ち寄り、持参したCD3枚ジョー・バターン「サルソウル」、ウォッカコリンズ「Tokyo New York」、ジョン・ケイル「POPtical illusion」を流してもらい良い気分になって帰宅。

9月24日
ヒューマントラストシネマ渋谷にて、太田達成監督「石がある」鑑賞。
3回目はOdessa上映で鑑賞。音響効果により視界が立体的に開け、トラックのおじさんは「眠る虫」のあの人だったのか、とか昔良く遊んだ酒匂川や山北の街が鮮明に浮き上がり、第一生命のビル未だあるんだぁ、とか感慨に浸る。石ガール小川あんと川ボーイ加納土の微妙な距離感が生み出すユーモアとサスペンス。次は爆音で観たい。

続いてル・シネマ渋谷宮下にて、山中瑤子監督「ナミビアの砂漠」鑑賞。
2回目。日本は少子化と貧困で終わるのでこれからの目標は生存です。書割のBBQ、脳内ルームランナー、行き止まりの森でキャンプだホイからの反転する部屋。カラカラに乾いた人工砂漠のクソ過ぎる世界で平気でサバイブしていく為のモラトリアム。今回は絶妙な編集と音響に心奪われた。

その後は久々のカフェモノクロームへ。定番のブラックシフォンケーキとブラックコーヒーを。
オシャレ無機質カフェであると同時に話が通じる店員さんの居る数少ない店なので最近の色々をぶちまけて心を落ち着かせて来た。

9月25日
Dearにっぽん「思いを額に込めて」 録画鑑賞。
愛媛県松前町に思い出の品を額に収める工房がある。それぞれの想いが込められた世界に一つだけの額。他の人が観てもその価値は伝わらないが依頼者にとってはかけがえの無い財産となる。その時、思い出が魔法みたいに生まれ変わる。今回も泣けた。

9月26日
BS世界のドキュメンタリー「香港を諦めない 雨傘運動から10年」録画鑑賞。
2014年民主化デモの象徴的存在となったネイサン・ロー、ジョシュア・ウォン、アグネス・チャウの3人の当時の運動の模様と現在の状況を追った作品。圧倒的な力で押し潰された運動。しかし心の中まで封じる事は出来ないと確信させる諦めないドキュメンタリーだった。

9月28日
「虎に翼」
最終週録画鑑賞。最終週は全スタッフキャスト総力を上げての最後の授業と言った趣で全話胸熱。上げた声は残る。世の中の「はて?」に対して声を上げ問い続ける事。感動よりも寧ろバトンを手渡され引き締まった感じ。とは言え寅子ロスは大きい。来春辺りに「虎に翼2」やってくれないかな。

それでその後に放送の「あさイチ」も録画鑑賞。
プレミアムトークゲストに小泉今日子。「虎に翼」最終回をキョンキョンと一緒に観るという興奮。録画だから違うのだが。更に後半には木村カエラが生歌を披露するという神回と呼べるどうかしてる凄い展開だった。

9月29日
渋谷のMIYASHITA PARKで開催の「LIFE IS SAMPLING MARKET」というフリーマーケット&フリーライブイベントへ。ホームレスを追い出して聳え立てたらMIYASHITA PARKとか本当に気分悪く基本近寄りたく無いが、OMK(Soi48、MMM、Young-G)がDJすると言うなら話は別。屋台で台湾ビールを購入し、彼らがプレイするご機嫌なADM(アジアンダンスミュージック)に浸る。途中ファンから日本酒の差し入れが有り、観客に振る舞う場面も有り最後は皆でONE MEKONG。嘗ての宮下公園的なローカルを束の間取り戻した様な時間だった。OMKはオリジナルグッズやタイ土産などの出店もしてたので、終演後にタイで人気のクールなストリートブランドJONE500のポロシャツとタイのお守りプラクルアンを購入。

OMK(Soi48、MMM、Young-G)

その後はシアターイメージフォーラムへ。開催中の「特集上映フレデリック・ワイズマン変容するアメリカ」にて「チチカット・フォーリーズ」鑑賞。
精神異常犯罪者の施設の日常。囚人、看守、ソーシャルワーカーなどがワイズマンの視点により等しく描かれており、最終的にはまともな奴はいないのかと思わせる。善悪や倫理観の向こう側にある深淵を覗き込もうと試みるが何か可笑しみが溢れ落ちてしまう不思議な作品だった。

続いてヒューマントラストシネマ渋谷に移動。デヴィッド・リンチ監督「マルホランド・ドライブ4Kレストア版」鑑賞。
ロバート・フォスターの無駄遣い、エドワード・ホッパーの構図、ロイ・オービソンの歌、ダグラス・サークに通じるメロドラマの継承。放置した伏線を反転させるトリッキーなリンチならではの整合性がクッキリとレストアされてシレンシオ。やっぱりリンチと言えばこれだな。心地良い眩暈を抱えて帰路につく。


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