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「パンデミック条約反対デモ」に対する官房長官の発言

4月13日に池袋で行われた「パンデミック条約反対デモ」については、あれほど大規模だったにも関わらず、テレビや新聞などの大手メディアは報じませんでした。このことで、メディアは政府にとって不都合な情報を報じないようにコントロールされていることが証明されたのではないでしょうか。


官房長官の発言

前回の記事で、パンデミック条約(仮称)は議論の進め方にも問題があることを書きました。国民に知らせないまま、国民の命や言論の自由に関する重要なことを決めようとしているのです。

4月15日午前に行われた林官房長官の会見で、13日のデモに関する質問がありました。今の時点で政府がどう答えたか、国民は知っておく必要があると思います。

よく聞き取れなかったのですが、質問した記者はニコニコ動画の七尾氏だと思われます。

以下、会見の内容(13:30頃~)を適宜読みやすくしながら書き起こしました。

デモに関して、記者からは3つの質問がありました。

1.パンデミック条約とIHR改正に関する日本の立場

記者:WHOが5月の総会で採択を目指す権限強化などに向けたパンデミック条約に反対する市民のデモが、13日に東京で行われました。デモではパンデミック条約、IHR(国際保健規則)改正の反対を掲げ、デモの模様は海外の報道やSNSでも取り上げられるなど、異例の広がりを見せております。5月の総会で、日本は条約とIHR改正に賛成することになるのでしょうか。

林官房長官:いわゆるパンデミック条約及び国際保健規則(IHR)改正の交渉動向についてのご関心については承知しております。本件は、現在交渉中であるため、予断をもってお答えすることは困難でございますが、いずれにしても日本政府としては、新型コロナウイルス感染症のような甚大な影響を及ぼす感染症に関しては、国際社会が一致して対応する必要があり、日本の国益を確保する上でも、またパンデミックの予防備え及び対応を強化するため、国際的な規範を強化することが重要であるという立場でございます。我が国の経験や知見を踏まえて、我が国をはじめ各国の主権の尊重を大前提としつつ、本件交渉に建設的に参加しているところでございます。

日本は、「国際社会が一致して対応する必要があり、国際的な規範を強化することが重要」だという立場であると言っています。

これが大きな懸念でもあるのです。下記の資料などを見ると、各国それぞれ状況が違うはずなのに、「ワンヘルス」というキーワードで加盟国をまとめて、各国を監視して、WHOの指示どおりに対処するシステムを作ろうとしているように読み取れます。

下記は資料の一例で、2023年5月13日~14日に長崎で開催されたG7保健大臣会合での保健大臣宣言です。

別紙2 G7長崎保健大臣宣言(抄訳) より

【パンデミック条約及び IHR 改正】
17. 我々は、国際的な規範・規則の強化は、パンデミック PPR にとって不可欠であり、ワンヘルス・アプローチに則った国、地域、世界レベルで、ヒト、動物、植物、環境、さらには社会や経済に対する健康危機への負の影響を最小限に抑えるために、重要な役割を果たすことを再確認する。我々は、2024 年までに WHO CA+の交渉を終了させるべく、すべての関係者とともに、WHO CA+の草案作成と交渉のための政府間交渉における議論、また、国際保健規則の更新と強化を目的とした改
正案に関する補完的な作業に貢献し、そのモメンタムを持続させるという確固たる決意を改めて表明する。WHO CA+及び国際保健規則に係る交渉は、補完性を確保しつつ、ギャップや重複を避けるために、密接に関連させる必要がある。どちらのプロセスにおいても、世界中の国々によってその能力及びパフォーマンスを評価するために用いられてきた、既存のレビューとモニタリングの仕組みや、実施に関する技術支援、そして最近改訂された国際保健規則モニタリングと評価のための枠組みツール(JEE、SPAR、NAPHS、行動内・事後報告、シミュレーション
訓練等)を認識すべきである。

18. WHO CA+が効果を発揮するためには、パンデミック PPR の全サイクルを適切な形でカバーする必要がある。このような背景から、我々は、強固な公衆衛生対策を促進するために、人や動物から発見された病原体や遺伝子配列データを、生物学的安全性の担保された方法で、かつ、責任ある方法で迅速に共有することの重要性を強調する。この仕組みにおいて、予防は重要な柱でなくてはならず、我々は、パンデミックの脅威を早期に検知し、パンデミック PPR に対するワンヘルス・アプローチを定着させるために、多分野との協力と連携の強化を通じて、システムと能力の強化にコミットしている。パンデミックを防ぐためこの取組は、効果的かつ効率的な方法で AMR 対策にも取り組むべきである。加えて、遺伝子配列データを含む公衆衛生に係る情報及びデータの迅速な共有を強化することは、リスクを伝え、エビデンスに基づくアプローチを発展させるために重要である。

https://www.mhlw.go.jp/content/10500000/001096404.pdf

※PPRとは、Prevention, Preparedness, Response のことで、パンデミックの予防、備え及び対応。

AMR(薬剤耐性)については、下記の記事で取り上げました。


2.国家主権について

記者:パンデミック条約とIHR改正を巡る国民の疑念の1つに、WHOの命令に従わなければならなくなり、国家主権が奪われるのではないかという点があります。この点は、国民にどう説明されるのでしょうか。

林官房長官:お尋ねの国家主権が奪われるのではないかといった点につきましては、本件交渉の中でWHOによる国家主権の制限や基本的人権の侵害について懸念を生じさせたり、パンデミックに際しての各国の自主的な判断を妨げる内容や各国への罰則につきましては、議論はそもそも行われておりませんのでご懸念には当たらないと考えております。いずれにいたしましても、外務省及び厚労省としては、ホームページへの掲載等を通じて情報提供を行っておりますので、今後とも交渉状況を踏まえつつ丁寧に正確な情報提供に努めてまりたいと考えております。

基本的人権の侵害について懸念を生じさせる議論はそもそも行われていないと言っていますが、資料からは懸念が生じているのです。

例えば、IHR改正案の第3条についてです。

資料7_感染症危機対応における国際規範強化をはじめとする国際社会の連携について

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/dai9_2024/gijisidai_8.pdf


Article-by-Article compilation of proposed amendments to the International Health Regulations (2005) submitted in accordance with
decision WHA75(9) (2022
) より

with full respect for the dignity, human rights and fundamental freedoms of persons

この部分が消されていることについてなど、国民に全く説明せずに非公開で議論を進めていることが懸念につながっているのです。

3.ワクチン接種とワクチンパスポートについて

記者:もう1つの疑念として、日本はワクチン接種が任意であると思いますが、これが強制になるのではないか、加えて接種の証明となるワクチンパスポートが強制されるのではないかという点についてはいかがでしょうか。

林官房長官:お尋ねのワクチン接種が強制されるのではないかといった点につきましては、本件交渉の中でWHOによる国家主権の制限や基本的人権の侵害について懸念を生じさせたり、またパンデミックに際しての各国の自主的な判断を妨げるような内容や各国への罰則については議論はそもそも行われておりませんので、懸念には当たらないと考えております。我が国においては、予防接種は対象者またはその保護者がそれを受けるか否かを判断するものでありまして、接種が強制されるものではないということでございます。いずれにいたしましても先ほど申し上げた通り、外務省と厚労省としてはホームページへの掲載等を通じて情報提供を行ってきておりますので、今後とも交渉状況を踏まえつつ、丁寧に正確な情報提供に努めてまいりたいと考えております。


ワクチンパスポートについては回答がありませんが、ワクチン接種については、下記のように答えています。

「我が国においては、予防接種は対象者またはその保護者がそれを受けるか否かを判断するものでありまして、接種が強制されるものではないということでございます」

この発言は、しっかりと覚えておかなければならないと思います。

政府はなぜこれを、コロナワクチン接種が始まったときにはっきりと言わなかったのでしょうか。なぜテレビなどのメディアで、はっきりと国民に伝えなかったのでしょうか。

はっきりと言っていたら、未接種の人が非国民のような扱いを受けることもなかったでしょう。迷っていた人は、接種しなかったかもしれません。職場での接種を希望しない人に対する言動も、もっと違ったものになっていたでしょう。

今後も、WHOは様々なワクチン接種を強く推奨してくるでしょう。それは、強制や義務のように見えるかもしれません。条約などでWHOが強制しないとしても、政府はWHOの言いなりになって接種を勧めてくるでしょう。もしそうなったとしても、コロナワクチンのときのような状況にならないためには、「日本では、ワクチン接種は強制されるものではないと政府が言った」という事実を国民が知っておくことが重要だと思います。


<参考資料>

資料7_感染症危機対応における国際規範強化をはじめとする国際社会の連携について より


https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/dai9_2024/gijisidai_8.pdf

「グローバルヘルス技術振興基金」については、下記の記事で取り上げています。