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レプリコンワクチン「コスタイベ筋注用」に関する不正確な情報が急増!?

ここ数日、Xではレプリコンワクチンに関して「ベトナムの治験で18人死亡」というポストが目立つようになりました。発信元になっているのは川田龍平議員(立憲民主党)のポストなのですが、それをきちんと調べずに解釈して広めている人が多いです。治験のデータは、昨年11月に公開された審査報告書に載っています。そのデータを自分で確認してから発信している人は、どれくらいいるのでしょうか。

川田議員のポスト

川田議員は「『レプリコンの治験で死亡者が出ている事を厚労省が認めました』 ⇒ https://ameblo.jp/kawada-ryuhei/entry-12868416560.html」と書いて自身のブログへのリンクをポストしました。

ブログには、下記のように書かれています。

2024-09-21 18:56:15
党厚生労働部門・感染症対策WTの合同会議が開かれました。新型コロナウイルスのレプリコンワクチンに関する経緯や使用予定等について、厚生労働省よりヒアリングを行いました。
とくにレプリコンワクチンの有効性・安全性について、どこまで担保されているのか、なぜ他国では承認されていないのに、日本が世界で初めて承認するに至ったのかについては、納得のいく回答は得られませんでした。
ただし、重要な事実を引き出すことができました。それはベトナムでの治験で18人が亡くなっている情報を得ていたので、これを厚労省に問い質したところ、18人が死亡していることを認めました。
レプリコンワクチンの承認に至るまでの経緯には疑問点が多々あります。厚労省に対して、ベトナムでの治験の結果情報の提供を求めました。

「党厚生労働部門・感染症対策WTの合同会議」でどのようなことが話し合われたのかについては、公開されている資料は見当たりませんでした。

このブログだけでは、「ベトナムでの治験で18人が亡くなっている情報を得ていたので、これを厚労省に問い質したところ、18人が死亡していることを認めました」というのが、どの18人なのかわかりません。

治験での死亡については審査報告書にも載っているので、そのことなら「審査報告書に書かれている18人について確認した」などと書くのが一般的です。「ベトナムでの治験で18人が亡くなっている情報を得ていた」という書き方だと、何か公開されていない情報を得たようにも思えます。

改めて、2023年11月に公開された審査報告書を確認してみました。

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/631341P

審査報告書

7.2.1.2 ARCT-154-01 試験パート 3b より

本剤 5 μg 又はプラセボ(生理食塩液)に 1:1 で無作為割り付けし、28 日間隔で 2 回筋肉内接種された。また、2 回目接種から 2 カ月後(Day 92)に、本剤群にはプラセボを、プラセボ群には本剤を、28 日間隔で 2 回筋肉内接種された。

以前の記事にも書きましたが、この臨床試験では2回目接種から2ヶ月後(Day 92)にプラセボ群にも「本剤」(ARCT-154)を接種しています。ARCT-154は、2023年11月に承認された起源株の「コスタイベ筋注用」です。

Day 92~Day 210は、本剤ープラセボ群とプラセボー本剤群という分け方になり、結局どちらの群にも「ARCT-154」を接種しています。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2023/P20231122002/780009000_30500AMX00282_A100_3.pdf

死亡例はDay 1~Day 92の本剤群5例、Day 92~Day 210では本剤ープラセボ群で9例、プラセボー本剤群で4例なので、この合計18人が川田議員の言う18人ということなのでしょうか。もしこのことであるなら、審査報告書に書かれているので、厚労省が認めるのは当然だと思うのですが、これとは別の話なのでしょうか。

審査報告書には「いずれも因果関係は否定された」と書かれているので、もしこの話だとしたら、死亡は認めたけれど因果関係は否定されたという説明があったのではないかと思います。聞きたいのは、どのようにして因果関係が否定されたのかなどの説明です。それがブログに書かれていた「厚労省に対して、ベトナムでの治験の結果情報の提供を求めました」ということなのでしょうか。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2023/P20231122002/780009000_30500AMX00282_A100_3.pdf

例えばこの部分には、Day 92~Day 210で治験中止に至った有害事象として「偶発的死亡」とありますが、具体的にはどのような死亡事例だったのでしょうか。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2023/P20231122002/780009000_30500AMX00282_A100_3.pdf

上記の注釈は死亡事例ではありませんが、有害事象の「深部静脈血栓症」についての説明です。「治験担当医師の判断では、本剤との因果関係は否定されなかったものの、治験依頼者は、被験者の年齢、血栓性静脈炎及び高血圧の重要な病歴を考慮し、当該事象は本剤との因果関係なしと評価した」と書かれています。治験担当医師の判断としては因果関係を否定しなかったのに、最終的に「因果関係なし」と評価されました。死亡についてもこのような評価があったとしたら、それは本当に「因果関係が否定された」と言えるのでしょうか。

審査報告書に書かれている18人なら厚労省は知っていて承認したわけですし、それは2023年11月にはすでにわかっていたことです。あのブログだけではわからないことが多々あるのに、ただ「治験で18人死亡」と拡散すると、どんどん「治験で18人死亡」だけが一人歩きしてしまいます。

実際に「ベトナムの治験で18人死亡者が出たからベトナムでは認可されなかったと厚生労働省が認めた」と書いている人もいました。川田議員は、18人死亡したからベトナムで緊急使用許可が出なかったとは書いていません。きちんと調べずに勝手な解釈を加えていくと、どんどん内容が変わってきてしまいます。

レプリコンワクチンに関する発信が多くなるにつれて、「meijiseikaファルマはネズミ8匹だけで実験しただけなのに日本で承認」とか、「明治ファルマ コスタイベ筋注 マウス8匹だけで承認してるって」というポストまで出てきました。そう書いているのに「 ベトナム治験では 18人死んでる」とも書いていて、矛盾していることに本人が気づいていないようです。起源株はヒトでも試験が行われているので、JN.1系統の一変承認とごちゃまぜになっているようです。

レプリコンワクチンを止めたい気持ちはわかりますが、いい加減な情報は逆効果になってしまいます。ここ数日のXでの発信を見ていると、関心を持つ人が増えるにつれて、不正確な情報も多くなってきていると感じました。