「よれよれ肉体百科」によせて
私の場合、45歳の誕生日直後に起きたことをきっかけに、そこから様々な「よれよれ」が始まったような気がします。
それは休みの日、自宅にて中腰で、洗濯機に洗濯物を次々と放り込んでいた最中です。
突然ぎっくり腰というものに襲われました。
本当に、何気ない動きで来るものなのですね。
これといった治療方法はないけれど、着用すれば少しは楽になりますよ、と助けを求めて訪れた整形外科で、黒いサポーターを勧められました。
帯板が長くなったようなそれをぐるっと腰に巻き、ずれたり緩んだりすればマジックテープをつけ直す、そんな2週間を過ごしました。
その着け心地、安心感半端なく、シンプルながらいいものに出会えたものだと感激してしまいました。
また近いうちに会う日がくるでしょうから、その時まで、我が家の押入れでサポーター様は待っていてくれています。
その後も
口にした食べ物や飲み物が、油断をすると食道とは別なルートに入っていき、涙目でせき込んでしまうことが増えました。
いつの間にか、調味料の瓶の、小さな文字で書かれた説明文を読むことを諦め、薄暗い中でする読書からも遠ざかり、日に日に老眼の進行具合を感じています。
決定的に悪いわけではないけれど、少しづつ弱くなっている。
そんなよれよれ具合を集めた、群ようこさんの「よれよれ肉体百科」というエッセイは、手足と言った体の部分や、症状など、56の分野にわたってのよれよれが綴られています。
読みごたえがあって嬉しいのだけど、こんなにもよれよれ候補があったか、とおののいたと同時に、男性・女性特有の症状についての記述もあり、老いていくのは男も女も一緒に大変なのだ、と考えながらこの本を自宅で読んでいた矢先
「俺もその本読んでみたいな。」
と、普段あまり本を読むことが無い夫が、珍しくそのように声をかけてきました。
可愛らしい表紙と、それとは裏腹の「よれよれ」というタイトル。
夕食後、すぐ横になることが多くなったアラフィフ夫の琴線に、引っ掛かるものがあったのでしょう。
そしてその本を広げた瞬間、早速彼は、内容とは別の感想を述べたのでした。
「(ハードカバーなので)文字が大きくて、読みやすい!」
それは、彼なりのよれよれが込められた、心からの一言なのだと、妻の私は感慨深く思ったのです。
私達夫婦の、よれよれゾーンを行ったり来たりしているものの一つに、食欲、というものがあります。
昔より沢山食べられなくなったなぁ、と二人で話し合ったのをきっかけに、数年前から、一品控えて出すとか盛り付けを少なめにするとか、自宅での食事の量を調整することにしました。
それがうまくいく日もあれば、やっぱり物足りないと、お代わりをする日もある。
若い頃は、どんなに悲しくても嫌な気分になっても、お腹はきっちり空いていたものなんですけどね。
そんな自分が恥ずかしいと思いつつも、毎日満腹になるまで食べていたものです。
だけどいつの間にか、それは気分というものにも、左右されるようになりました。
そこらへんの試行錯誤は、現在も進行中です。
夫と私は2歳違い(夫が年上です)、ほぼ同年代だと思って生きています。
一緒に長く生活を共にすると、皺や白髪が出てくるようになったという外見の変化から、病院に行く機会や毎日飲む薬の種類も増えたものだ、と傍で見ているからこそわかる、という変化にも気づきます。
ドラッグストアに入店すれば、サプリとか、白髪染めとか、皺改善商品とか、だんだんアンチエージンググッズというものを、二人で無意識に目で追うようになりました。
店舗ごとに置いているものも、力の入れ具合も違うのだ、という発見もありました。
目下、3セット990円という価格の目元シートを購入するかどうか、悩みどころです。
このシートは、ほうれい線にも使える優れもので、とある店舗で見かけた時に我が夫は「買ったらいいじゃないか。そして俺にも1セット分けてほしい」と言ってくれました。
著名な化粧品ブランドから発売されている、このお手頃価格のシート、発売元がしっかりしているからこそとても期待できます。
買えないこともないんですが、それだからこそ一度手にすると、ずっと手放せなくなるのではないか、という不安もよぎるのです。
日によって皺が浅かったり深かったり、そういった不安定な日々から解放されるためにも、これを買い続けてしまうのだ、と思うと、なかなか手が出せません。
因みに白髪に関しては、私は毎月美容院で白髪染めを施してもらっています。
結構な出費になるのですが、一度始めた習慣は、簡単には変えられないもの、こちらで既に沼にハマっているので、皺問題になかなか着手出来ない、というものもあります。
いつか、あきらめがつく日が来るのでしょうか。
その一方、男は無理せずそのままにした方が良い、という私の持論により、夫には白髪染をさせていません。
本人はそれをどう思っているかはわかりませんが、たまに彼を目にするたび、風格が出てきていいなあ、なんて密かに心の中で愛でることもあります。
いつの日か、誰でも自然と、よれよれと共に生きていくことになります。
人によって、どのよれよれと付き合っていくか。
そのままにするか、線引きはそれぞれなのだと思います。
私としては、ほどほどに健康で、ほどほどよれよれにあがらい、たまにお互いのよれよれを笑いあったり、心配したり、そんな日々を今後も夫と続けていきたい、と考えているのです。