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【今日コレ受けvol.053】ヒノキにとどくアスナロ
朝7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」。これを読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。
理想の書き手だと思っている人が数人いて、彼/彼女の本や記事をみつけると必ず読む。心震えたり、自分にはない視点に気付かされたり、緻密な分析力に驚いたり。
そして思う。
どうやったらこんなふうに書けるのか。
自分との差はどこにあるのか。
小学生のときに、『あすなろ坂』という里中満智子さんの漫画を読んだ。そのなかに、アスナロという木についての話が出てくる。
ヒノキによく似ているけれど、ヒノキの背の高さを超えられないアスナロの木。でもアスナロは、「明日はヒノキになろう」と毎日必死で葉や幹を伸ばしている。自分もアスナロのように、「明日はもっといい人間になろう」と思って生きたい、といった内容だった。
読んで、わたしもアスナロのように生きたい、と胸が高鳴った記憶がある。でも大人になった今、そうなっているだろうか。
文章の読み方には2種類あると思う。
その話のなかに潜り込むか、テクニックや構成を分析しながら読むか。
理想の書き手だと思っている人の文章を読むと、つい潜り込んでしまう。
そこを目指すなら分析しなければいけないのだが、憧れる文章だからこそ、潜り込んでしまう。幸せなイチ読者になってしまう。
いやいや、ダメダメ。
常に2回読むクセをつけよう。一度目は潜り込んで、2回目はテクニックや構成を分析する。この機会にもう、そう決めてしまおう。
そうすれば遠い未来、ヒノキの背にとどくことがあるのではないか。
ただ、それはそれとして。
アスナロの別名はヒバといって、香りがよく水濡れに強いため、お風呂の浴槽やバスグッズなどによく使われている。私もその香りが大好きだ。
きっとなにか自分にも、ヒノキにはない特性があるはず。
ヒノキになりたいのではない。
ヒノキの背にとどく、アスナロになりたい。