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本日の「読了」──“読者修行”
丸山健二『るりはこべ』(講談社 2001)
エンドロールに、中島みゆきの楽曲「ファイト」が行間から聞こえてくる作品(※個人の幻聴にすぎません)。
丸山氏の著作は半ば“読者修行”のようにときどき読まねば! と思うのだが、たいがいはてこずり、身にしみいることもなく終わってきた。今回は、読みたいと思って手にしたわけではなく、図書館のリサイクル図書コーナーにあったので家に持ち帰り読み始めた「保護本」である。ずいぶんと長い時間をかけて読み通した。
野良犬とテロリストに祭り上げられ殺される家族、その遺児二人。魂魄となり遺児のひとりに憑りつき意を成し遂げようとする革命家。遺児らを救おうとする野良犬、その前に立ち現れた野良人。物語を通じて地下で力をたわめる火山のマグマ。
そして物語の大団円。それは、写真家ユージン・スミスの「楽園への歩み」に飛び入りで野良犬が一匹加わった絵にファイトが流れる(※あくまで個人の幻覚です)。
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圧政的な政治がもくろんだ、大義がどこまでも不明確な、しかし、その分魂胆が見え見えの戦争へ向けて国力の集中化が従来以上に進んでいた。それは防御手段としての武装化ではなく、外国人の領分に侵略して不当な国益をむさぼろうとするための横暴な戦闘準備にほかならなかった。
まるで、いまのどこぞの国を示唆するような一文に奥付を見れば、2001年の上梓。
作品が上梓された月、アメリカで惨劇9.11が起こっている。それに先立つ湾岸戦争、ソ連崩壊、そして9.11以降のテロとの戦い。振りかえりみれば、今日まで戦が絶えることがなかった。今も絶えない。そのどれもに狂言回しに大国が登場する。
我が世の春を謳歌した独裁者が何人も吊るされ、惨殺され、それ以上の市民が戦場に駆り出され死に、戦火に焼かれた。
アフガニスタンでもパレスチナでも、ソマリアでも、南スーダンでも、ミャンマーでもウクライナでも、私たちの目に写り込んでくる「生きる」ことを選んだ人びと。
国破れて山河。だがそこには、破れた国、破った国のどちらに選ばれたわけでもなく、神に選ばれたわけでもなく、ただ、生きることを選んだ人びとが生きている。
その生は、誰かのためでも、自分のためでもない。生きることがデフォルトなのだ。
野良犬の牙は、正義や大義をかざし、生きることを邪魔する輩の喉を食い破るためにある。そのために、野良犬は、遺児二人のあとをついていく。
野良犬はわたしであり、あなたでもある。
[2023.1.31. ぶんろく]