『マッドマックス:サーガ』愛すべきMADな悪役たちに注目してみた。
『マッドマックス(1979)』から始まる元警察官マックスの英雄譚
「マッドマックス:サーガ」。
・1979年『マッドマックス』
・1981年『マッドマックス2』
・1985年『マッドマックス サンダードーム』
・2015年『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
・2024年『マッドマックス:フュリオサ』
そこに登場する、主役以上の存在感を放ち、観客に強烈なインパクトを与えるナイスでMADな悪役たちに注目してみた。
『マッドマックス(1979)』
凶悪な暴走族チームを率いる ボサボサ頭のMADな男 トゥーカッター!
⓵トゥーカッター / The Toecutter MAD度★★★
(演 :ヒュー・キース=バーン)
暴走族のリーダー。
マックスの追跡を受け事故死した”ナイトライダー” の仇討ちをするべく
執拗にマックスに付きまとい、周りの人間を襲撃していく。
老若男女問わず非道な男 たまにお茶目なのが更に怖い。
最期は伝説の 目ん玉ボーンだ。
30年後 ヒュー・キース=バーンは、イモータン・ジョーとして悪役復帰!
歓喜した。
②ババ・ザネッティ / Bubba Zanetti MAD度★★☆
(演:ジョフ・パリー)
トゥカッターの右腕。
冷静沈着 寡黙な性格。マックスとの一騎打ちでは、足と右腕に怪我を負わせるが…。トゥーカッターとは真逆の無愛想でスマートなところがカッコ良かったが、実は演技が達者じゃなかっただけってW
③ジョニー・ザ・ボーイ / Johnny the Boy MAD度★☆☆
(演:ティム・バーンズ)
トゥカッターの腰巾着。
気弱なヤク中で グース殺害に加担。終始まわりをイライラさせるいい具合の小者感。ババには嫌われている。最期もいいヘタレっぷり。
④クロフォード “ナイトライダー” モンタザーノ MAD度★★☆
(演:ヴィンス・ギル)
警官殺しの逃走犯。トゥーカッターの友人。
マックスの物語は、ナイトライダーの死から始まった。
その意味で出番は少ないが 重要なキャラだ。
『マッドマックス(1979)』(93分)★★★★★
オーストラリア発アクション映画。
記念すべき「マッドマックス サーガ」の第1作目。
親友と我が子を殺され闇落ちするマックスの復讐劇。中二病的映画小僧たちを大いに興奮させた。
クールなマックスは勿論、不死身のグースや敵役のトゥーカッターとその相棒ババなど魅力的なキャラに加えて、V8インターセプター、カワサキZ1000等のマシンが爆走。スタントマンが2名亡くなったという噂のシーンを探したり、マックスターンや伝説の目玉のアップに大興奮した。
『マッドマックス2(1981)』
ミラー監督渾身の変態キャラ ヒューマンガス様!
⑤ヒューマンガス / The Humungus MAD度★★☆
(演 : ケル・ニルソン)
精製所の石油をつけ狙う暴走族の首領。
ホッケーマスクに筋骨隆々の半裸にボンテージファッション。暴れん坊のウェズを締めあげるほどの腕力を持つ。
強烈な見た目とは裏腹に、暴力の前に会話で問題解決を図ろうとする分別ある男だ。部下の暴走も身を挺して制する男気溢れる行動をしたり、時間の猶予を与えたりして器が大きい。が、結局要求が通らないと暴力任せだったw
「ヒューマンガス様」とファンも多いが、素顔は最期まで見せないままだ。
⑥ウェズ・ジョーンズ / Wez MAD度★★★
(演 :ヴァーノン・ウェルズ)
好戦的で凶悪なヒューマンガスの手下。
恋人のゴールデン・ユースとタンデム、黒い羽毛がついた衣装、赤く染めたモヒカン刈りとこちらも見た目のインパクト大。血の気が多くすぐにブチギレる のちの『北斗の拳』の悪役ザコキャラの原型的キャラ。
『マッドマックス2(1981)』(95分)★★★★☆
マックスマニアたちの度肝を抜いた2作目。
1作目とは全く違うディストピアなその世界観は、以降の80年代SFに多大な影響を与え、日本では世界観を完全拝借した『北斗の拳』が大ヒット。
この作品をスケールアップ、パワーアップさせたものが「怒りのデス・ロード」だ。CGの無い時代、生身のスタントの本気のアクション。
「マックス」映画に欠かせないクセツヨなキャラ群。この頃から既に登場している。ヒューマンガス、赤モヒカンのウェズやジャイロ・キャプテン、鉄ブーメランのキッド…女戦士もいたが活躍できず。
ここからマックスは英雄譚として描かれていく。
「マックスがどうなったかは知らない 記憶の中だけに生きている」
『マッドマックス/サンダードーム(1985)』
どうした?ミラー監督 悪の魅力に欠けた女帝アウンティ!
⑦アウンティ・エンティティ / Aunty Entity MAD度★☆☆
(演 : ティナ・ターナー)
バータータウンを支配する女帝。
良くも悪くもティナ・ターナーであった。怖さも妖しさもなく魅力に欠けた。最期も…そうするしかなかったのか、大人の事情がチラつくモヤモヤするキャラだ。
しかしながらターナーはこの映画での演技を評価され、全米黒人地位向上協会から主演女優賞を与えられている。さらに映画のサウンド・トラックに「ウィ・ドント・ニード・アナザー・ヒーロー」と「ワン・オヴ・ザ・リヴィング」の2曲で参加。2曲ともにヒットした。「ワン・オヴ・ザ・リヴィング」でグラミー賞を獲得。
Tina Turner — One of the Living (Movie Version) [HD]
1986年 第28回グラミー賞(最優秀女性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス):ティナ・ターナー「ワン・オブ・ザ・リヴィング(One Of The Living)」)
⑧マスター/ブラスター / The Master、The Blaster MAD度★☆☆
(演 :アンジェロ・ロシット、ポール・ラーソン〈体〉/スティーブン・ヘイズ〈顔〉)
アウンティと対立。バータータウンの地下施設を牛耳る。
頭脳担当の小男「マスター」と腕力担当の大男「ブラスター」は一心同体。”2人が入り 出るのは1人” のサンダードームで百戦錬磨、無敵のブラスターはマックスと対決。実は戦う前から弱点がマックスにばれてたw
そして怪力巨躯の中身は…。サンダードームの使用はこれだけ。
マスターの頭脳は相当優秀らしく、バータータウン再建には必要だとアウンティ達はマックスから取り戻そうとする。動きもコミカルな憎めない悪党。
⑨アイアンバー / Ironbar MAD度★☆☆
(演 : アングリー・アンダーソン)
アウンティの手下。バータータウンの警備隊の隊長格。
不気味な人形の首がついた棒を背負っている。
見た目は変態的だが、あまり怖さを感じなかった。
最期はお決まりの激突死!
『マッドマックス/サンダードーム(1985)』(107分)★★★☆☆
当時「ロックンロールの女王」としてヒット曲を連発していたティナ・ターナーを敵役に向かえた色々大人の事情を感じる作品だ。MM3作目。
タイトルにもある ”2人が入り 出るのは1人” の「サンダードーム」は前半30分でお役目御免。インターセプターは登場なし、期待していたマックス的カーアクションもラスト20分くらいにやっと機関車とバギーのチェイスでおしまいだ。コメディ要素も少し入って、なんだかとっ散らかっていた。
マスター・ブラスターやアイアンバーなどいいキャラはいたのだが、ミラー監督は本当にこれが撮りたかったのか?と長年疑問だったが、最近では
「サーガ」の一篇には、必要なのかもと思うようになってきた。
「1」と「2」のプロデューサー、バイロン・ケネディの喪失も影響大だったのだろう。興行は大いに不振で「怒りのデス・ロード」まで30年掛かってしまった。
しかしながらミラー監督は、ヒットしなかった要因を理解していたから
大傑作「怒りのデス・ロード」を撮ることが出来たのだ。
白塗りドクロメイクの少年は、ウォーボーイズへと発展したか。
ツッコミどころ満載の珍作であるが、
ここでもマックスは英雄譚として描かれ
それは「フュリオサ」まで続いている。
「いつの日か 彼らはこのともしびを目指して 戻ってくる」
『マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)』
これぞミラー的変態悪党の頂点 異形の独裁者 イモータン・ジョー!
⑩イモータン・ジョー/Immortan Joe MAD度★★★
(演: ヒュー・キース=バーン)
要塞「シタデル」の支配者。「ウォーボーイズ」擁する武装集団の首領。
全身白塗り、スカルの特殊マスクにごちゃごちゃ装飾を施した防弾ガラス製ボディアーマーを装着。これぞミラー的変態キャラの最高峰w
さらに見た目だけでなく
自らの子孫を残すため健康体の若い娘たち(ワイヴズ/Wives)に貞操帯を付けさせたうえ幽閉していたり、母乳を搾取するためだけに生かしているミルキング・マザー(Milking Mother)達を囲っていたりと やることもまた変態的だ。
イモータン・ジョーの息子たち
リクタスとコーパス 大きいのと小さいのの組み合わせは「サンダードーム」のマスター/ブラスターを思わせる。セルフオマージュか。
⑪リクタス・エレクタス/Rictus Erectus MAD度★★☆
(演 :ネイサン・ジョーンズ)
ジョーの息子。3兄弟の次男坊。(長男は「フュリオサ」に登場のスクロータス)筋骨隆々だが知能は低い。しばらくロック様ことドウェイン・ジョンソンが演じているのかと思っていた。ネイサン・ジョーンズも元プロレスラーだしよく似てる。時折キュートな一面を見せる憎めない奴。
⑫コーパス・コロッサス/Corpus Colossus MAD度★☆☆
(演 :クウェンティン・ケニハン)
ジョーの息子。3兄弟の3男坊。
核汚染により骨脆性疾患骨形成不全症と思しき障害を抱え、
兄とは違い頭脳明晰だ。常にベビーカーに鎮座しているが、時にジョーに助言したりもする。
⑬人食い男爵(The People Eater)MAD度★★☆
(演 - ジョン・ハワード)
ガスタウンを治めているイモータン・ジョーの仲間。
「禿頭で象足病のような疾病を患っている太った男。タキシードをまとい金属製擬鼻を付け、股間にはガスマスクを装着している。胸部分を丸く切り取り、露出した両乳首のピアスを鎖で繋いでおり、乳首を弄ぶ癖がある。」Wikipediaより
こちらも強烈キャラ。設定が変態的w「フュリオサ」にもしっかり登場。
ガスタウンボーイズを配下に持つ商人系悪党。ワイヴズに ”ケチくさい” と称される。
⑭武器将軍(The Bullet Farmer)MAD度★★★
(演 :リチャード・カーター)
イモータン・ジョーの仲間の一人。武器、弾薬の製造を行うバレット・ファームの領主。
自称「正義の番人」、全身あらゆるところに銃弾を装備。口の中にも差し歯替わりの銃弾が。タクトを振るかの如く銃をぶっ放すイカレた男。
マックスに倒されたはずだが最期の姿は描かれていないから 生きているかもしれないな。
⑮武装集団ウォーボーイズ/War boys MAD度★★★
イモータン・ジョーの私設軍隊。
ジョーの養子たちで構成され、シタデルに住処している。
身体を環境汚染に蝕まれており、寿命も通常の半分ほどしかない。
頭髪が無く全身白塗りだ。皆 車の部品の紋様をスカリフィケーションしている。
イモータン・ジョーを信奉し ”名誉の戦死を遂げることで魂が「英雄の館(Walhalla)」に招かれて転生することができる” と信じている特攻野郎たち。
それ故 死を厭わない好戦的な集団だ。
ニュークス/Nux
(演 : ニコラス・ホルト)
「ウォーボーイズ」のひとり。最後はフュリオサ側に転向したので悪役には入れず、でも好きなキャラなので紹介。名前の意味は「木の実」。
首の付根に大小2つの瘤があり、それぞれ「ラリーとバリー」と名付けて友人として扱い、胸にV8エンジン紋様のスカリフィケーション。汚染された世界に蝕まれ、常に輸血が必要という病身。マックスを「輸血袋」としてマシンに繋ぎ砂漠を爆走するシーンは秀逸。ニュークスのおかげで映画は勢いづき、その最期は感動すら呼んだ。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)』(120分)★★★★★
『フュリオサ』に「MADMAX SAGA」と付いたが、そもそも「怒りのデス・ロード」もフュリオサの物語である。
メル・ギブソン版とは別物と認識している。
しかしながら終末の世界観は地続きでアクションは変態的にパワーアップ。
乱暴に言ってしまえばただ行って帰ってくるだけの内容だが、画だけですべてを納得させる圧倒的な熱量。クセツヨキャラの宝庫。
ただその実 やってることは40数年前から変わっていない。
時代が追い付いたんだな。
気まぐれな悪党 フュリオサの宿敵 暴君ディメンタス将軍!
⑯ディメンタス将軍/Dementus MAD度★★☆
(演 :クリス・ヘムズワース)
バイカー集団「バイカー・ホード」を率いる男。
我こそが最狂の悪と自認していたが、イモータン・ジョー一味の狂気を目の当たりにして日和ってしまう小者感。暴力に対しても気まぐれでケセラセラな性格は、人間臭さを感じた。フュリオサを迎え撃たず逃げるあたりが「1」のトゥーカッターを思わせる。結果ジョーの冷酷さ、醜悪さを際立たせ「怒りのデス・ロード」へ繋がっていく。図らずもディメンタスの言葉でフュリオサはワイヴズを連れ出しジョーの元から解放しようと決意するのだ。その意味で重要な人物。衝撃的な最期となった。
⑰スクロータス/Scrotus MAD度★★☆
(演 :ジョシュ・ヘルマン)
イモータン・ジョーの息子。3兄弟の長男。
「怒りのデス・ロード」には登場していない。
リクタスより小柄だが結構ヤバめな男。しかしそこはお兄ちゃん、なにかと危なっかしいリクタスの面倒を見たりする。兄弟仲は悪くなさそうw
『マッドマックス:フュリオサ(2024)』(148分)★★★★☆
「マッドマックス」シリーズを語るのに欠かせない俳優
ヒュー・キース=バーン。
怪演をありがとう。 RIP
新たなるMADな悪役たちを、まだまだ観てみたい。
(text by 電気羊は夢を見た)