文系院試備忘録【外部】


1.はじめに

 初投稿です。拙筆はご容赦ください。また、まず大丈夫だとは思いますが、身バレ防止のため、所々ぼやかして書いています。その点もご容赦ください。

 本投稿は表題通り院試の備忘録ですが、私立文系→国立文系の、いわゆる外部受験について、誰かの参考になればと執筆しております。
 そもそも文系で院進される方は少ないと思いますし、外部受験となるとさらに人数は限られるのではと思います(偏見)。少しニッチかもしれませんが、今後文系で外部受験される方に少しでもお役に立てば幸いです。ちなみに秋受験です。
 
 軽く自己紹介をさせていただくと、私は執筆時点では学部四年の文系学徒です。専門は一応経済学ですが、進学予定の研究室はどちらかというと思想・哲学寄り、もっとはっきり言えば、マルクスまわりです(主流派じゃなくてごめん!)。

 後にお世話になった参考書を紹介しますが、どうしてもマルクスに偏ってしまうのはご容赦ください。ただ、院試対策の過程で手広く勉強をしたつもりですので、マルクス関係での院進を考えていらっしゃる方にはもちろんですが、経済学、思想・哲学関係での院進を考えていらっしゃる方のご参考になればと思います

2.院試までのスケジュール

 院試までに自分が何をしてきたか、時系列順に書いていきます。かなり冗長です。ごめんなさい。
 当然(?)ですが、院試までの期間に関連分野の本や論文は継続して読んでいるので、それは特別書いていません。とはいえ、自分は基本怠惰で本を読むのが遅いので、そんな沢山読んだわけでもないですが。

三年夏:院進決意

 院進を決定したのは三年の夏休み前でした。ゼミの担当教授に相談をし、自分の興味関心に近い研究室を探した結果、某国立大学の研究室となりました。
 しかし、比較的近いというだけで、完全に一致しているわけではありません。見ているものは同じですが、アプローチが違うのです。志望先研究室はマルクス的アプローチをとるのですが、自分は別のアプローチのほうがいいのではと考えていました。とはいえ、他に似たような研究を行っている場所がなかったので、結局そこに決めました。後述しますが、この点が後の専門試験対策で裏目に出ました。

 ちなみに内部進学という手もあったのですが、自分が通う大学には自分の希望に合う研究室が存在せず、所属していたゼミの研究室はある程度近かったのですが、そもそも周りに院を考えている人間がいない(院に進んでも話し相手がいない)ことから、担当教授からやめといたほうがいいと言われ、外部受験を選びました。

三年夏~冬:勉強(第二外国語)

 志望先の入試要項を見ると、試験形式は
 専門試験、第一外国語(英語)試験、第二外国語(英語以外)試験、面接試験
もしくは
 専門試験、TOFEL or IELTS、面接試験
のどちらかでした。
 過去問を見た感じ、専門試験は自分の興味関心に沿っている内容だったのでひとまずは大丈夫だろうと思い、また、英語は得意だったので、そして何よりも意識が高かったので、第二外国語(フランス語)の勉強を始めました。
 
 なんですが、挫折します。うん、頭に入らん。大学での二外選択は韓国語でした。フランス語は全くの門外漢(ちなみにフランス語を選択したのは、特に自分の専門分野に役立ちそうだったから。マルクスなんだからドイツ語選べよ)。
 先述した通り、院進を考えている人間は周りに誰もいません。よく受験は団体戦だ、情報戦だと言われますが、自分は最初から最後まで一人でした。相談相手もいません。苦しい!
 ということで12月頃にはすでに第二外国語を諦めて、TOFEL取得を目指しました。よくありますよね、最初はやる気満々だけど、結局続かないの。それじゃダメだって分かってるんですけどね、そういう性分なもんで。

三年冬~四年春:卒論準備、英語対策

 年明けごろから、担当教授のススメもあり、卒論の準備を始めました。正直「早くね」と思いましたが、ダラダラと準備しました。自分は本を読むのがとても遅くて作業はあまり進まず、結局この時期に卒論が完成することはなかったのですが、この時期の勉強はこの後の研究計画書作成にとても役立ちました
 
 また、4月のTOFEL受験を見据えていたので、それに合わせてTOFEL対策も行いました。とはいえ、先に書いた通り英語は得意でしたので、単語帳を買って忘れてた単語を思い出す程度の勉強で済ませました。
 ここまで振り返って、正直まともな外国語対策はしてません。あまり参考にならなくてごめんなさい。

四年春~夏:研究計画書作成、研究室訪問

 TOFELを終わらせ、4月から6月頃まで研究計画書の作成に取りかかりました。結構時間がかかったのですが、この期間中、先の卒論の内容も含め、ゼミの担当教授と色々議論して研究内容を煮詰めていきました。ここで先の卒論準備が大いに役立ちました。
 割と真正面からそれは違うやろと否定されることもあったのですが、そうした議論の中で、明確に自分の考え、研究目的等を固めることが出来たので、担当教授にはとても感謝しています。
 内容を否定されること自体は正直あまり傷つかなかった(ていうか担当教授の言い分が正しいように思えたし、モチベーションにもなった)のですが、どうやら自分は時間に追われるのがとても苦手なようで、6月に精神を病み、自律神経失調症と診断されました。このころから睡眠薬がないと眠れなくなりました。うへえ。こんなんで院やっていけるんですかね
 
 また、少し時間が前後しますが、5月に志望先研究室への研究室訪問を行いました。その時点で研究内容は大体固まっていたので、自分がやりたいことを正直に話しました。アプローチの違いも正直に伝えたのですが、その点は特に問題視されませんでしたし、とても寛大に受け入れてくださりました。この点は研究室によると思うのですが、自分はラッキーでした。   
 時間は一時間ほどで、つつがなく終わったのですが、もう少し視野を広げたほうがいいというアドバイスをいただきました。

 後で同じことを書いていますが、自分は研究室を比較的早く決めたのにもかかわらず、そのアドバンテージをほとんど有効活用することが出来ませんでした。やりたい内容は大体固まっていて、英語も得意だったので、対策という対策はほとんどしていませんでした。その結果、ダラダラと過ごしているうちに時間が進み、直前になって焦る、という典型的なダメパターンでした。

四年夏:出願、専門試験対策

 途中精神病んで倒れてた時期もあったのですが、なんとか研究計画書を書き終えて、願書に書きそびれや不足書類がないか何度も確認したうえで出願を終えました。
 
 出願を終えて少し一息ついたら、次はついに専門試験対策です。はい、7月から専門試験対策です。普段から関連分野の本や論文を読んでいたとはいえ、絶対もっと早くからやったほうがいいと思います
 正直8月から院試のある9月まで、今までの人生で一番しんどかった気がします。
 専門試験対策ということで、過去問や志望先教授の論文や著作を見てその傾向を判断するのですが、出題範囲は非常に広範(マクロ経済学、ミクロ経済学、経済学説史、マルクス経済学、人類学、近代思想、現代思想、思想史、哲学史など)です。
 専門試験は数問の記述問題から構成されており、そのうちの一問はマルクス関連が出ることは確定だろうなと思ったのですが、他は全く予想がつきません。
 ということで、まずマルクスを勉強しなければならないのですが、「一体どこからどこまで、どれだけ深く?」。
 マルクスはそんな真面目に勉強したことがなかったので、この点がとても大変でした。ご存じの方も多いと思いますが、マルクス研究も一枚岩ではありません(宇野派やフランクフルト学派等)。マルクス自体がかなり難解なのに、それを巡る議論はさらに難解なのです。最初に書きましたが、自分はそもそもマルクス的アプローチには懐疑的です(マルクスは好きですが、自分の研究分野には当てはまらないと思っています)。そのため、正直そこまで気乗りしませんでした。
 それに加えて、他分野の勉強も行わなければならなかったので、非常に大変でした。何度も書きますが、絶対もっと早くから対策したほうがいいです。毎日ストレスで死にかけました。そもそも落ちたらニート確定ですからね。何らかの保険は必要だろうなと思いました。

試験本番、結果発表

 専門試験はまあまあ上手くいきました。体感7~8割くらいはできたかなという印象でした。試験時間はかなり長かったのですが、最後まで書き終えたのは終了5分前くらいでした。滅茶苦茶焦った。
 面接試験も結構上手くいきました。具体的に聞かれたのは、志望理由、専門試験の感想、研究内容の掘り下げ(先行研究についてや問題意識、関連領域についてなど)、くらいで、時間は30分くらいでした。一度研究室訪問で具体的に話をしましたし、研究計画書も送っていたので、スムーズに話は進みました。

 結果は合格でした(あっさり)。

長い!三行で!(お急ぎの方用)

 三年夏に院進決意。あまり対策をせず、ダラダラ本読みながら過ごしてたらあっという間に四年で死にかける。なんとか頑張って合格。絶対に早めの対策を!!後、就活とか併願とか、何らかの保険があるといいかも!!

3.やっててよかったこと、悪かったこと、やっておけばよかったこと

 やっててよかったこと、悪かったこと、やっておけばよかったことなどをまとめます。

やっててよかったこと

・早めの院進決断
 院進の決断は早ければ早いほどいいと思います。自分は三年の夏でしたし、志望先もその時決めた所から最後まで変えませんでした。ダラダラ対策して結局死にかけたのですが、最初から最後まで研究したい内容がブレなかったのは大きかったと思います。

・四年までに卒論準備
 個人的にはこれがMVPです。結局卒論はその時に完成しなかったのですが、その時の勉強が四年になってからの研究計画書作成にとても役立ちましたし、ゼミの担当教授と議論を深めることによって、自身の研究立場を確立することもできました。そしてそれは研究室訪問の際に役立ちました。無理に完成はさせなくていいと思いますが、完成させる気で頑張ってみてください。

・普段からの読書、勉強
 この子にもMVP上げたい気持ちです。専門試験対策自体はダラダラと行ったので直前に死にかけたのですが、普段から本や論文を読んでそれをまとめる作業をしていなかったら、ニート確定でした。実際、これのおかげで7月からの専門試験対策の大半をマルクスその他に向けることが出来ました。
 院進を目指す方は、是非普段からの勉強を大切にしてください
 ちなみに自分は普段の勉強も専門試験対策も、本を読んでWordにまとめる、これだけをずっとやってました。色々な方法を試してきましたが、自分はこれが一番しっくりきました。ただし、滅茶苦茶時間かかります。だからこそ普段から頑張って!

・英語が得意
 やっててよかったってわけではないのですが、自分は英語が得意でしたので、英語対策はほとんどせずに乗り切りました。英語が苦手な方は、コツコツとやっておくといいと思います。
 また、自分は二外の代わりにTOFELを使用しましたが、必ずしもすべての院がそれで済むわけではないと思います。自分が死にかけながらもなんとかなったのは外国語に時間をかけなかった点も大きいと思うので、院進を考えている方は、外国語対策はなるべく早く、手短に済ませるといいと思います。

やってて悪かったこと

・ダラダラ対策
 これ本当によくない。でもよくないって分かっててもやってしまうんですよね。
 もっと前から対策しておけばと毎日後悔してました。時間の余裕は心の余裕に繋がります。自分みたいな病人になりたくなければ、是非余裕をもって対策してください

・志望先研究室について
 これは別に悪かったこと、というわけではないのですが、志望先研究室は慎重に選びましょう。自分の場合、院進を決めた段階からアプローチの違いは明白でしたし、研究室訪問ではそれが理由で弾かれないかどうかビクビクしてました。
 結果として志望先の教授はとても寛大でしたので事なきを得たものの、研究室によっては突っぱねられてもおかしくないと思います。また、仮にOKだったとしても、院試の対策が大変です。当たり前ですが、なるべく自分の研究内容に近いところを選びましょう。

やっておけばよかったこと

・仲間づくり
 受験は団体戦です(棒)。自分は縁がなかったのですが、同じ志を持つ友達がいれば非常に心強いと思います。
 愚痴を吐ける仲の友達はいましたが、勉強内容を相談できる友達がいなかったのは苦しかったです。何か勉強していて分からないところがあっても、聞く相手が教授しかいないというのはしんどいです。そんな気やすく聞けないですし。是非同志を見つけてください。

・保険づくり
 落ちたときの保険は作ったほうがいいかなと思いました。自分は専願でしたし、就活もしていなかったので、ある意味背水の陣でした。ただ、だからといって勉強の効率が上がったわけでもなく、ただただ後がないという焦燥感に駆られただけでした
 これは人によるのかもしれないですが、自分は保険があったほうが、精神衛生上よいのではと思います。

4.参考書

 最後に、普段の勉強で使用した参考書の中でも、特に役立ったものをいくつか紹介しようと思います。文系、特に経済学、思想・哲学系の院に進む方は、是非参考にしていただけたらと思います。
 ただし、専門的な内容に突っ込む本は紹介できません。ごめんなさい。あくまで入門として、これから裾野を広げていくときにおススメの本があるよ程度、自身の関心分野外だけど、ギリギリ院試で入ってきそうだから対策したい、基礎力付けたいくらいの温度感です。

経済学

・万能書
 ミクロもマクロも経済史も経済学史も全部まとめて勉強するなら、経済学辞典がおススメです。モノによって詳しさが変わりますが、『岩波小辞典 経済学』はコンパクトなのに色々書いてて重宝しました。
 でっかい奴ほど色々細かく書いてると思いますが、値段が高いので、でかい辞典は図書館で自分に合うものを探して勉強するといいと思います。
 自分は経済学に限らず、辞典勉強を思想・哲学でも行ってました。

・マクロ経済学・ミクロ経済学
 そこまで深い内容が必要ないのなら、とりあえずマンキューで十分だと思います。ちゃんと読んだことないですが

 また、ミクロ経済学は神取先生の『ミクロ経済学の力』も有名ですね。

 自分はそこまでミクロ経済学に本腰を入れなかったので、学部の授業(あとはゲーム理論とか)のノートを見直して勉強してました。
 マクロ経済学も同様で、そこまで力を入れたわけではなかったのですが、個人的に分かりやすかったのは蓮見先生の『動学マクロ経済学へのいざない』です。

入門としてはとりあえずこれくらい押さえれば十分だと思います。

・経済学説史
 経済学説史は個人的に力を入れてました。特に学部で授業は無かったのですが、個人的に気になっていたので二年生の頃からノートにまとめてました。
 割と色々漁って読んでいたので、どれがいいと決めきるのは難しい、というか、それぞれ書いている範囲が当然違いますし、同じことについてでも著者によって見解が分かれるので、色々読んで自分がしっくりくる説明をピックアップしていけばいいと思います。
 とりあえずおすすめなのは中村先生の『経済学の歴史』、八木先生の『経済思想』や、川俣先生の『経済学史』、久保先生の『経済学史入門』、井上先生の『コア・テキスト経済学史』くらいでしょうか。

思想・哲学

 思想・哲学は基本的に自分の関心に沿った論者の本を読めばいいと思います。有名どころの人物ならほぼ確実に入門書があります。
 とはいえ、取っ掛かりが見えづらいのが思想・哲学の分野だと思います。入門として、ある程度分かりやすく総ざらいしている本でおススメなのは、竹田先生の『現代思想の冒険』、船木先生の『現代思想入門』、浅田先生の『構造と力』などが良いと思います。

 近代以前の哲学については、自分は個別に学びました。やはり気になる人物の入門書を実際に読むのが一番かと思います。
 また、経済学のところでも書きましたが、万能書として辞典を使うことがやはりおススメです。自分は図書館でよく『社会学辞典』という辞典を広げて、その内容をまとめてました。滅茶苦茶勉強になったので、是非やってみてください。

↑こんな感じのやつです。色々あるので自分に合うやつ探してみてください。

マルクス経済学

 最後にマルクス経済学です。マルクス経済学もどこから入ればいいのか分かりにくいと思います。自分も最初は何からやればいいか分かりませんでした。まさか『資本論』最初から読まんでしょ
 入門の入門、マルクスについてとても分かりやすく書いている本としては、佐々木先生の『カール・マルクス: 「資本主義」と闘った社会思想家』がおススメです。

 マルクス経済学を勉強していくと、日本では主に宇野派と教条派にマルクス経済学が分かれていることに気付くと思います。宇野派はマルクスの理論の間違ってる部分は直そうよ、教条派はマルクスは間違ってないねん、くらいの理解でいいと思います(偉い人、間違ってたらごめんなさい)。
 両者、理論の中身が結構違うので、自分の志望先研究室がどちら側なのかはしっかり理解しておきましょう。また、それに合わせて使う参考書も変えましょう。

 上の本は入門の入門ですので、マルクス経済学の入門書としては松尾先生の『最強のマルクス経済学講義』がおススメです。また、松尾先生は他にも色々分かりやすい本を書いていらっしゃるので、是非探してみてください。

 教条派の理論はすなわちマルクス本来の理論ですから、教条派の勉強であれば上の『最強のマルクス経済学講義』で十分ではないでしょうか。また、先に紹介した佐々木先生も教条派ですので、佐々木先生の本を色々探してみるのも良いと思います。

 宇野派の入門書としては、かなり古い本ですが小林先生の『経済原論 (2) (エコノミックスQ&A)』がとてもおススメです。Q&A方式になっていますし、正直これ一つで宇野派の理論のほとんどをカバーできます。
 また、最近の本であれば、小幡先生の『経済原論: 基礎と演習』も良いと思います。

 また、『資本論』の中でも理解が最も難しいとされている「価値形態論」周りの議論について分かりやすく説明されている本として、降旗先生の『[新版]貨幣の謎を解く』がおススメです。宇野派と教条派の分岐点の一つでもある重要な論点を非常に分かりやすくまとめられてあります。自分はこれで大枠を理解しました。

5.最後に

 とても長くなってしまったのですが、何かが誰かの参考になれば幸いです。何か質問があれば、是非コメントに書いてください。
 院試はまあまあ根性いると思うので、体調に気を付けて頑張ってください。応援しております。


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