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【野口健'S VOICE】急がれる地球規模の温暖化対策~ターメ村の学校で再び被災

アルピニストである野口健氏の様々な活動や取り組みに賛同している文化シヤッターグループ。その野口氏には講演会やボランティア活動などを通じて、従来より当社グループの成長発展に様々な角度からご尽力を頂いています。
この「野口健’S VOICE」は、野口氏が日頃から取り組まれている活動やその原点となった思いや考え方、さらには活動を通じて実感されたことなどを、独自の視点や切り口で綴られた連載エッセイとして当社グループ報に寄稿頂いているものです。なお、当社公式noteではこの連載エッセイを転載しています。

ヒマラヤ遠征の出発を数日後に控え、慌ただしく準備をしていた時、親しいシェルパから悲痛の声が届いた。エベレスト街道で大洪水が起き、壊滅的な被害が出ているという。送られてきた映像には、毎年のように訪れていたターメ村がものすごい勢いの濁流に襲われていた。家屋が流され、馴染みのロッジも、ランドセルを配った学校も、どこにあるのかわからなかった。

今夏は、日本も例年以上の猛暑、ゲリラ豪雨などこれまでに経験したことがないような天候が続いていたが、ネパールも他ではなかった。ネパールの夏は、雨季のため、通常でも雨が多いのだが、今年は例年と比べ物にならないほどの降雨量で、カトマンズ市内の川も脅威に感じるほどだったそうだ。大洪水の原因は、豪雨のみではなく、温暖化による氷河の融解にもあった。ターメ村の上部にある小さな氷河湖が決壊したのである。

何千年もの間、ヒマラヤの山岳地帯を覆っていた氷河が、ここ数年で急速に融解が進んでいた。ヒマラヤに通い始めて30年になるが、氷河の融解のために登山ルートを変えたり、これまでになかった小川ができていたりと、温暖化による影響を身に染みて感じていた。

野口氏がランドセルを届けたターメ村
(2019年4月撮影)

ヒマラヤには、大きな氷河湖が何百個もあり、以前より、決壊の危険性が叫ばれていた。ネパール政府としても、水門を設置したり、警報機を付けたりと対策をとっていたが、決壊をくい止める有効的な対策がないのが現実だ

ターメ村は、2015年のネパール大地震でも大きな被害を受け、復興したばかり。家屋は約30軒ほどの小さな村だが、エベレスト街道では貴重な診療所もあり、のどかで、とてもきれいな村だった。約13件の家屋、学校、クリニックは流され、大きな損害を受け、約10件の家屋も損壊した。今回の洪水は、日中におきたため、幸いにも、村人たちは、丘の上に逃げることができ、人的被害がなかった。

もし、夜中に洪水が起きていたら、もっと大きな氷河湖が決壊したら・・・そう思うと想像しただけでゾッとする。
いよいよまったなしの温暖化問題。これ以上大きな被害を出さないために、我々に何ができるのか、考えていかないといけない。

(2024年8月執筆)


【プロフィール】
野口 健 氏
アルピニスト。1973年、米ボストン生まれ。亜細亜大卒。
25歳で7大陸最高峰最年少登頂の世界記録を達成(当時)。
エベレスト・富士山の清掃登山、地球温暖化など環境問題、
戦没者の遺骨収集など、幅広いジャンルで活躍されている。

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