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〈社説〉空虚な演説再び

 「日本人ほど平和を愛する人間は世界にいない」

 太平洋戦争の終結時に首相を務めた鈴木貫太郎がスピーチでそう述べたことがあると、PHP研究所の「WEB歴史街道」に書かれてあった。1918(大正7)年、海軍中将として米サンフランシスコに渡った際、歓迎会の席上で発言したのだという。

 米国は当時から日本の台頭を警戒しており、鈴木にはそれを打ち消す狙いがあったそうだが、23年後の41(昭和16)年に日米は開戦した。平和への願いとは裏腹に、何かの拍子で戦争が起きてしまうことは、歴史が証明している。

 岸田文雄首相は1月30日、第213回通常国会の施政方針演説を行った。1年間の内閣の姿勢を示すこの演説で、「平和」という言葉が使われたのはわずか2回。日米同盟の強化により地域の平和と安定に貢献すること、そして日露関係を巡る平和条約に言及した場面だった。

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