大師修行の聖地、台風被害が判明
※文化時報2020年11月7日号の掲載記事です。
弘法大師空海が修行した室戸岬の聖地に建つ真言宗豊山派の明星来影寺(坂井智空住職、高知県室戸市)が、9月の台風12号で甚大な被害を受けた。土砂崩れが発生して内部を参拝できない状態が1カ月以上続いており、巡礼の足を延ばしたお遍路たちも心を痛めている。(春尾悦子)
台風12号は9月24日、日本列島に接近。可能性がささやかれていた上陸は免れたものの、同日午後に温帯低気圧に変わり、室戸市内に大雨をもたらした。
この影響で、25日朝、境内の背後にある斜面は土砂崩れが起き、多くの樹木をなぎ倒した。お堂付近まで水を含んだ大量の土砂が流れ込み、危険防止のため、堂内の参拝は停止。現在も復旧作業が続いている。
室戸岬は、弘法大師の著書『三教指帰(さんごうしいき)』に「室戸埼にて勤念す」と記されているように、弘法大師が青年時代に難行苦行の末に悟りを開いた地として知られる。
1984(昭和59)年の弘法大師御入定1150年を記念し、豊山派が大師修行の地「御厨人窟(みくろど)」を顕彰。これを機に同地を「明星来影の丘」と定め、小松原賢譽豊山派第24世管長・総本山長谷寺第78世化主の発願で青年大師像を建立した。
若き修行者や四国遍路を見守る像は、台座を含め高さ21㍍で、大師像としてはわが国最大級。基壇の内部には、弘法大師が宇宙と一体化したという体験をステンドグラスで表現している。
四国遍路を見守る青年大師像
背中合わせに安置された巨大な涅槃像を見上げる位置に、朱色も鮮やかな護摩堂が建つ。不動明王を本尊とし、真言僧侶の修行道場として数多の高僧を輩出してきた。毎年秋、豊山派僧侶の有志が1週間の断食護摩行を行い、期間中は多くの僧侶が全国から応援に駆け付ける。
今年は弘法大師号の下賜1100年の記念すべき年だが、新型コロナウイルスの感染拡大に加えてこの台風被害が追い打ちをかけ、断食護摩行は実施できない状況だ。
参拝受付には被災のいきさつと修復への寄進を募る小さな張り紙があり、目にしたお遍路らが「一日も早い修復を」と、浄財を喜捨する姿も見られた。
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