【目黒蓮が笑った】海のはじまり 第3話 大切な人を失うということ【感想】
海のはじまり 第3話,いくつか印象に残るシーンがあったので,記憶しておくために記録しておきます.
14:30 バスから降りて海辺を歩く
まるで実の親子のかのように,三人で手を繋いで歩いていました.
弥生は,家族の一員のようになれたことで,少し浮かれていたようにも思われます.そして,次のシーンと対比的で,その辛さを強調するものとなります.
23:30 母子手帳の読み聞かせ
夏が海に母子手帳を読み聞かせているところを見て,弥生は疎外感を感じました.
このとき,弥生の手元には母親になるための子育て本がありました.
弥生は,努力して親になろうとしている.でも夏は,自然と親になれている.そんな立場の違いを感じたのかもしれません.
24:30 海を家に帰す
寝てしまった海を祖父に引き渡した後,海の祖母の「大丈夫でした?」という言葉に,弥生はこう答えました.
この言葉に,海の祖母は思わず怪訝そうに「楽しかった?」「子ども生んだことないでしょう」と聞き返します.
僕も正直,満面の笑みの弥生にはかなり違和感というか,不快感を感じました.弥生からは見えていないことですが,視聴者としては夏に保険証やら母子手帳やらを渡していたことを知っています.祖母が,水季に託された海をとても大切に思っていることを知っています.子育てに対して強い責任感を持っていることを知っています.
本当の親であれば,あの場面で,第一声で,「楽しかった」という言葉は出てこないような気がします.
親のようで他人でしかない弥生
今の弥生は親とは言えないでしょう.親になろうとしているけれど,なりきれていません.まだどこか他人事で,人の子どもだと思っている節があるように思います.親戚の子どもとたまに遊ぶのが楽しいみたいな感覚です.
そして何より,表面的な付き合いしかできていません.これが次のシーンにも繋がっていきます.
30:45 なんで元気なふりするの?
海の心に届いたのは,必死にフォローしていた弥生の言葉ではなく,夏のまっすぐな言葉でした.ここの夏の身体がハンカチに少しだけ触れる演出が最高ですね……
ここの,テンポが良いだけで内容がまったく嚙み合っていない掛け合いはとても印象的で,この note を書こうと思ったきっかけでした.
別に夏の言葉が親らしいかといえば,そうとは思いません.ただ,海と真剣に向き合っている.海の気持ちをきちんと受け止めたいと思っている.そういう人付き合いの姿勢が,海と通じたのではないでしょうか.
ただ,弥生の気持ちもわかってあげてほしい.これだけテンポよく反論の言葉が出てくるのは,単に弥生が海のことを人の子のように丁重に扱っているからというだけではなく,自分を守っているようにも思います.弥生も過去に望まない妊娠を経験し,中絶を選択しています.大いなる悲しみを抱えながら,それを蓋をして生きています.職場でもしっかりものと評され,人に甘えられるタイプで,弱みを見せることができずにいます.夏の海への言葉は,弥生にも刺さるものがあって,自身の生き方を否定されているようで,海を守るような,つまりは自分を守るような言葉が次々に出てきたのではないでしょうか.この辺りは次の 4 話でも語られそうなので注目です.
35:00 すくすく――夏が笑った
海の「すくすく」という言葉に,夏は笑みをこぼしました.本作で夏がこんな風に笑ったのは,初めてではないでしょうか? ついに目黒蓮が笑ったのです.
夏は,周囲にかなり気を配って,それで言葉を選んでしまってなかなか自分を表現できないタイプなのではないかと思います.でも,海が悲しい気持ちを表に出してくれたことで,海の気持ちがわかって,夏も安心して心を開けたのではないかと思います.
44:45 ここいて
「ここいて」と言っても着いてくる海.でも,最終的には待つことができました.
海はずっと「いなくならないで」という言葉を口にしていました.自分を置いて夏だけ先へ行ってしまう.それはとても不安なことです.でも待つことができた.夏はもういなくならないと信じることができたのです.海は,夏を信頼するようになったのです.
人はいつ親になるのか?
これは本作の大きなテーマであり,3 話までで結論を出すのは時期尚早でしょう.
ただ一つ言いたいのは,弥生が親になれていないのは決して血が繋がっていないからではないだろうということです.親,あるいは家族というものの条件として,ときに本音で語り合えることが必要なのだと思います.
夏は本気で海とぶつかった.だから,お互いに心を開くことができた.
弥生は一歩引いて,大人の対応をするに留まった.だから,他人行儀で傍からみて親とは言い難い状態になってしまった.
これが二人の今の立場の違いではないでしょうか.
弥生も夏に本音を打ち明けられると良いのですが.