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夜鯨

大きな影を落として、
鯨が一頭泳いでいた

フジツボの代わりに星屑つけて
ゆっくり尾ひれを上下に揺らし、
月明かりの雲間を進んでいく

玉虫色に照らされた
雲の波をかき分けて、泡と散らす

鯨の目が開くと、瞳の奥は別の世界
鯨の口が開くと、過去も未来も飲み込んで
暗い深洞が出口を塞ぐ

吹き上がる潮は、この世のdust

夜空に泳ぐ鯨の目から
溢れる蛍火は、泪だろうか

地上に宿した睡蓮の蕾が、
次々と乳白色の花を開くと

鯨は天空の裏側へと去っていく

絡まりついた、
この世の真理を振り落としながら

bun★jac 2020.06.20

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bun★jac
かねてより絵本を出版することが夢でした。サポートして頂いた際には、出版するための費用とさせていただきます。そしていつか必ず絵本としてお返しさせていただきたく、よろしくお願いします。ひとりでも多くのこどもたちの夢見る力を応援したい。それがストーリーテラーとしての役目です。

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