wonderland
ある日、庭の片隅に小さな扉を見付けました。
扉はとても小さかったのですが、覗いてみると
いつの間にか中に入っていたのです。
不思議な場所は、変わった植物が生い茂っていて、
草の匂いの風が吹いています。
日の当たらないモヤモヤした木々の間に
案内ねこが待っていました。
空色のひよこみたいなフワフワの生き物を抱いて。
”この場所は、一度来れば、二度目は来れない。
一度帰れば、二度とは帰れない。”
知っているはずの庭の片隅は、不思議な場所へ繋がっていて、
つまり知らない場所は、当たり前の庭にあったのです。
真っ赤な青虫がパイプをふかしています。
プカプカ浮かぶ紫の煙は、美味しそうな匂いがしています。
煙がクッキーのように見えてきました。
案内ねこは、上質のシャツを着て、身なりは余裕がありました。
もしかすると、向かいの家のお婆さんが飼っているねこかもしれません。
大切そうに抱いているひよこは、よく見ると耳をピクピク動かしています。
毎年やって来るカーニバルの綿菓子みたいに夢色です。
つまり、どれも良く知るものばかり。
なにが不思議なのか分からなくなりました。
知っているものの集まりが不思議を生み出すことがあるなんて。
あってはいけないもの、知ってはいけないものなんてあるのかしら?
草むらにざわめきが起こり、草の匂いのつむじ風がやって来ました。
扉は小さなトランプでした。
足もとにヒラヒラと落ちて、落ち葉の山に混ざったのです。
はて?わたしは何が不思議だったのかな。
知識の貯まり場にたまにですが、
変わった扉が現れることがあるそうです。
ひとはそれを不思議、と思ったりする。
というお話でした。
bun★jac 2020.11.15
これから、たまに絵をお話へと繋げていきたいと思っています。
出来るだけ多くの不思議が生まれますように。。。
だれかさんのベッドタイムストーリーとして。