ちびとおばあちゃん
ちびは、おばあちゃんとお散歩するのが大好き。
今朝もおばあちゃんをリードして、ベンチのとこまでやってきた。
おばあちゃんはここでお休みするのが好きなんだよ。
いつも右側にぼくを座らせてくれる。
「ちびちゃん。」
そう呼んで、やさしく頭を撫でながらさらさら鳴る大きな木の側できらきらの噴水を眺めてる。
ぼくたちの時間が止まれば良いよ。
優しい時間がいつまでも続いてほしいんだもの。
おばあちゃんは赤い水筒からお茶を注ぐんだ。
ぼくの分は赤いお皿に注いでくれるんだよ。
言わなくても分かるだろうけど、ぼくはおばあちゃんが大好きなんだ。
お散歩は朝早く出掛けるよ。
目が覚めるとぼくは、おばあちゃんのところへ急いで行くの。
でもどんなに急いだって、おばあちゃんはもうとっくに準備してて、ぼくのことを待ってるんだ。
ちびは、春に生まれておばあちゃんのところへもらわれてきた。
ちびは、いつか大人になって、ちびっこではなくなったら、おばあちゃんを背中に乗せてあげたいと思ってました。
ぼくがここへ来たのは、おばあちゃんがお空にお願いしたからなんだって。
ぼくは、おばあちゃんに会いたいってお空にお願いしたんだっけ?
忘れちゃったけど、きっとお空が二人を会わせてくれたんだね。
ちびは、帰り道、今度はおばあちゃんをリードしません。
お散歩は楽しかったけど、いつもお仕舞いがやってきます。
そうすると、なぜか少し悲しくなりました。
なぜだろう?
ぼくとおばあちゃんのお散歩は明日もそのつぎも続くって分かってるのに。
ふっと振り返ると、遠いお空にちびとおばあちゃんによく似た真っ白な雲がふわふわと広がっていました。
夏が来るね。
ぼくが来る前のおばあちゃんのお散歩はどんなだったのかしら。
おばあちゃんはゆっくり歩いて、とぼとぼするぼくに微笑むんだよ。
大きくなっても絶対に引っ張り回したりしないからね。約束するよ。
だから、だからね、おばあちゃん。
次の夏もゆっくり、ゆっくり歩こうね。
bunjac 2020.8.2
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かねてより絵本を出版することが夢でした。サポートして頂いた際には、出版するための費用とさせていただきます。そしていつか必ず絵本としてお返しさせていただきたく、よろしくお願いします。ひとりでも多くのこどもたちの夢見る力を応援したい。それがストーリーテラーとしての役目です。