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『羽根識別マニュアル増補改訂版』活用術 ~あこがれの羽根の拾い方

Author:藤井 幹

 「なんでこの羽根はこんな色や形をしているんだろう?」――羽根集めの楽しさは、羽根そのものの魅力だけでなく、1枚の羽根から鳥の生きざまや進化に思いをはせられることにあります。ここでは羽根をこれから拾い集める人に向けて、探し方のポイントをまとめてみました。また、拾えるとテンションが上がりそうな羽根5選をおすすめポイントともに紹介します。

羽根と出会うコツを伝授

いつ探す?

 鳥の羽根はいつでも拾えるのですが、鳥は「換羽(かんう)」といって1年に1回、傷んだ羽根を新しい羽根に生えかわらせます。市街地や山野の鳥なら、繁殖が終わる7月から秋までが換羽の時期なので、この時期なら拾う機会も増えます。

どこを探す?

 魅力的な羽根に出会えるかは運次第、鳥がいる場所ならどこでも拾う機会があります。「羽根が落ちているかも……」とモチベーションを持ち続けることが大切です。狙いどころを絞って探すのもいいですね。例えば駅前の街路樹に鳥のねぐらができているところはありませんか?日が暮れるころ、鳥の声がにぎやかなところは要チェックです。ねぐらの主はスズメ、ハクセキレイ、ムクドリであることが多いですが、その下を8~11月ごろに探すと、換羽で落ちたたくさんの羽根に出会えます。ムクドリのねぐらであれば、かなりの確率で夏鳥のコムクドリがねぐらに合流して換羽するので、その羽根も期待できます。そのほかに海岸線も羽根の宝庫です。種の識別するのは難しいですが、いろいろな鳥の羽根が流れ着いています。

スズメのねぐらの下に落ちていた羽根

 また、手っ取り早くたくさんの羽根を集めるのにオススメなのが、猛禽類の食痕を探すことです。地面に羽根がまとまっていれば発見しやすいですが、ツミやハイタカなどは木の上で羽根を抜くことが多いので、広い範囲に散らばって落ちていることもあります。山の中などで羽根を1枚だけ見つけたら、必ずその周りを探すのがコツです。もしもう1枚落ちていたら、さらに周りを見渡しましょう。3枚目を見つけたら食痕がどこかにある可能性はぐっと高くなります。

ドバトの羽根をむしるハヤブサ。周辺には羽根が散らばっている
猛禽類の食痕。襲われたのはキジバト

地面にある“白くて細長いもの”を探せ

 自分はフィールドで何を目印に羽根を見つけているのだろう――と考えたことがあります。条件はいろいろですが、思い返してみるといちばんの目印は羽軸の白い部分のようで、細長い形状というのも目につきやすいです。
 そうはいっても、羽根探しを始めたばかりの人にとって、羽軸を目印に羽根を探すのはなかなか難しいと思います。まずは日ごろの訓練が効果的です。落ちている羽根を「羽根だ!」と脳が認識してくれるように、いつも羽根をそばに置いて眺めましょう。私たちはふだん、目から膨大な量の情報が入ってきます。そのため、”必要ではない”と認識した情報は目に入っていても認知はされません。すなわち、見えているけど見えていない。そこで、羽根を”必要なもの”として脳にインプットするのです。そうすれば自然と目が羽根をロックオンしてくれて、発見率はあがるはずです。

クマタカの羽根。地面に落ちていても白い羽軸は割と目立つ

探してみよう!おすすめの羽根5選

 ここからはかなり私の主観ですが、拾う機会がそれなりにある羽根の中で、拾うとうれしくなるものを挙げてみました。持っていない人はぜひ探して、コレクションに加えることにチャレンジしてみてください。

第1位 猛禽類の羽根

 やはりこれがいちばんです。種は何でもうれしくて、トビであっても大きな初列風切や尾羽だと「いいもの拾ったな」と思います。見るのもレアなクマタカの羽根なんて拾った日には有頂天。市街地でもハヤブサやチョウゲンボウなどは拾う機会があります。ちなみに皆さんは、猛禽類の初列風切と尾羽、どちらが好きですか?――究極の選択ですが、私は尾羽です。

『羽根識別マニュアル増補改訂版』120ページより。『鷹斑(たかふ)』と呼ばれる独特の模様が美しい

第2位 カケスの青い羽根

 山を歩いていると意外によく見かけます。羽根を収集しはじめたばかりのころは、カケスを見つけたらその場所の周りを探してましたが、今では探さなくてもよく見つかります。構造色(色素ではなく,羽根の微細な構造と光の反射で発する色)のグラデーションがとてもきれい!山道を丹念に探してみてください。

同146ページより。左に並ぶのがカケスの羽根。羽根初心者にはあこがれの羽根だ

第3位 サギの蓑羽(みのばね)

 「羽根はこんなもの」という固定概念を壊してくれる美しい羽根です。羽軸、羽枝、小羽枝という3つの構造しかない羽根を、ディスプレイのために進化させた立体的で美しい繁殖期の羽根です。サギのコロニーがあればその下で拾えますが、コロニーの下は糞や食べ残しなどが落ちていて、衛生面であまりおすすめできないので、止まり木などサギがいつもたくさんいる場所を探してみましょう。

同91ページより。右下枠内の左端がコサギの蓑羽。羽弁がばらけた繊細な作りが魅力

第4位 ヤマドリの尾羽

 上の3つに比べると、拾う機会は少ないと思われがちですが、山地ならよく拾います。部位はどこもきれいですが、やはり長い尾羽を拾ったときはうれしくなりますね。と同時に、どうやって長い羽根を傷つけずに持ち帰るかで悩むことも多いですが(苦笑)。

同70ページより。右枠内の右がヤマドリの尾羽。1mを超える長大な羽根は模様も複雑だ

第5位 フクロウの初列風切

 以前は拾う機会が少なかったのですが、最近は身近な環境でも生息しているようで、姿は見えなくても羽根を拾う機会は少なくありません。表面に細毛がある触り心地のよいフワフワした羽根は、説明するまでもなく魅力的ですよね。翼の最も外側の初列風切には、消音効果を担う特殊な構造もあります。ぜひ探してコレクションに加えましょう!

同126ページより。拾えたらぜひ触ってほしい。ほかの鳥の羽根との触感の違いに驚くこと間違いなし

 皆さんも『羽根識別マニュアル増補改訂版』を眺めながら、あこがれの羽根との出会いに夢をはせてください!きっと巡り合う日が来るはずです。

11月17日(金)19:00~20:30 オンライントーク開催決定!
藤井幹さんと羽根トークを楽しもう。あなたはこの羽根がわかるかな?
参加は無料,お申込みはこちら↓↓↓から


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