今年の春は恐竜が熱い!「羽毛恐竜完全ガイド」担当編集の推しポイント3選
今日3月14日は待ちに待ったホワイトデー・・・ではなく,『BIRDER SPECIAL羽毛恐竜完全ガイド』の書店発売日です。そして国立科学博物館で「恐竜博2023」が開幕し,さらに翌週の21日にはNHKスペシャル「恐竜超世界2」の放送が発表されています。数年に一度来る恐竜ブームが,いつもの夏ではなく春にやってきています。担当編集としては刊行時期を(無理矢理)前倒ししてこの波に乗れてよかったと思いつつ,乗った波には乗り続けたいと思うところ。そこでここでは新刊「羽毛恐竜完全ガイド」の担当編集目線の見どころを紹介していきます。
見どころ1:ビジュアルがすごい
表紙を飾る迫力満点のヴェロキラプトルや図鑑ページを飾る美しいイラストの数々は,BIRDERの連載「鳥の形態学ノート」でおなじみ川口敏さんの完全描き下ろしです。アンキオルニスなどBIRDERでも掲載している羽毛恐竜がいますが,単行本とBIRDERの絵はもちろん別物。もともと本書の企画で担当編集に火を付けたのは川口さんですから,その情熱を込めたイラストの数々は圧巻のひと言です。担当特権で原画も見ていますが,それはもう惚れ惚れしました。紙版の書籍で見るも良し,同時発売予定の電子版を買って画面上で拡大して高精細っぷりを見るのも良しです(もちろん担当編集は両方持ってます!)。
イラストについ目が行ってしまいますが,化石の写真も貴重なものばかり。始祖鳥に孔子鳥にミクロラプトルにユウティラヌス,さまざまな化石の写真を見るのもこの本の楽しみの1つです。特に49ページに載せた2つの羽毛恐竜の化石写真は,オリジナルの化石の研究が進んでいて,まだ正式な種名が付いていないというレア物です。ふだんはバックヤードに保管されているものを,今回の本のために特別に撮影させてもらいました。
見どころ2:ミクロからマクロまで,羽毛恐竜をとことん紹介
恐竜は本当にさまざまで,草食だったり肉食だったり,大きさは子犬サイズから地上生物最大級まで,形も角とか背中の板とか牙などがあったりします。今の分類では恐竜は爬虫類(爬虫綱)の一部ですが,実質的には恐竜だけで哺乳類(哺乳綱)に匹敵する多様性でしょう(実際に恐竜を爬虫類から独立させようという説[恐竜綱の新設]もあるほど)。となると,恐竜すべてを扱う本で形態から生態まですべてを語るのはいくらページがあっても足りません。
でも,今回の本はテーマを羽毛恐竜に絞ったからこそ,さまざまな話題を載せることができました。恐竜が体の部位のどこを変えて鳥の形を獲得したかといった細かい話は本書ならではの話題ですし,羽毛恐竜の羽の使い道や繁殖,翼竜との関係,ちょっと難しいですが発生生物学の話まで踏み込んでいます。まさに形態(ミクロ)から生態(マクロ)まで,「完全ガイド」の名にふさわしい,読み応えのある内容が満載なのです。
見どころ3:執筆陣がすごすぎる
今でも多くの恐竜本は翻訳本,つまり海外の本を日本語訳したものが少なくありません。海外のほうが恐竜研究はさかんで書籍も多く出ているからでしょうか?――それは違います。今回の本はすべてMade in Japanです。総勢15名の執筆者は一線級の恐竜研究者であり,担当編集は執筆者一覧に並んだ名前を見て,まさに現時点で最強の執筆陣だと身震いするほどでした。そしてこのことは,日本の恐竜研究が世界レベルに肩を並べた証拠ともいえます。
担当編集が子どものころ,将来恐竜のことを研究したければ,海外の大学や研究機関に所属しなければ難しいといわれていました。でも「羽毛恐竜完全ガイド」の目次や執筆者一覧を見れば,日本でも多くの恐竜研究機関があり,そこでは多くの研究者が成果を挙げています。もし周りに恐竜に関心のある子どもがいたら,ぜひこの本の目次や執筆者一覧を見せてあげてください。日本にも世界にインパクトを与える恐竜研究ができる環境が整っていることを伝えられるはずです。
ご多分に漏れず,担当編集は幼少期(約30年前),恐竜が大好きでした。でもそのころの本に恐竜と鳥の関係が載ることはなく,恐竜はただ大きく,でも鈍重で「ティラノサウルスの走るスピードは人が歩く程度で,人なら走って逃げられる」と真面目に書かれていました。それが恐竜温血説や映画『ジュラシック・パーク』シリーズによって恐竜のイメージが大きく変わっています。その中心がこの本のテーマである「羽毛恐竜と鳥」です。今までの恐竜のイメージを更新したい“かつての恐竜ファン”,そして羽毛の生えた恐竜を当たり前に受け入れている“これからの恐竜好きファン”,両方の人にぜひ手に取って読んでほしいと思います。
※BIRDER2015年8月号は現在電子版のみ販売中
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