「薔薇を撃つもの」のヒントはリヨンに住むマダムとの雑談から
なぜにこんな冒険サスペンス小説を書くことになったかを改めて思い出してみると、リヨンに住んでいたとあるマダムとのとりとめのないお話から始まったようである。彼女は保守派の政治的な傾向を持っていて、社会党のミッテランが大統領に就任したことを快く思っていないようだった。そのあたりを「なぜ?」「どうして?」と聞いていくうちに、ひょっとしてこんな話もありえたかもしれないとの、漠然としたアイディアを積み上げていったのである。
そのマダムとお話したのは、ご自宅だったか、カフェだったか、今となっては不確かな記憶がないけれど、いずれにせよリラックスした雰囲気であったことは間違いない。
後は時系列的な整理をしていく作業である。フランス大統領選挙、それも決選投票直前の日に、暗殺が行われれば効果的だ。そして暗殺者が逃げるところはフランスの官憲の手が届きにくいところであろう。インターポールの犯人引き渡し協定がない国とか、国自体が崩壊国家、腐敗国家、内戦・内乱国家であれば、ろくに警察機構は働いていない。あるいは麻薬シンジケートが支配している国とか・・・。
そうして考えると当時もっともグチャグチャの国だったのがアフガニスタンというわけである。文明諸国から最も遠い国だったのだ。
後は暗殺者をどうやってアフガニスタンまで流れさせるか。その怪しい情報がどのようにして軍事雑誌の編集部にまで届くか、その情報を受けて、戦場ジャーナリストがどのように動くかを想像していけばよかったのだ。
このあたりはヨーロッパの何か国かを旅していた体験が役に立った。結局暗殺者は、パリからベルギーまでレンタカーを飛ばし、陸路でイスタンブール、さらにパキスタンのペシャワル、そしてアフガニスタンへ入るというルートを設定した。
そしてヒンデュークシュ山脈、パンジシール渓谷など険しい山岳地帯でのゲリラ戦に身を投じるのである。
このあたりの事実の積み上げ方は、フレデリック・フォーサイスの「戦争の犬たち」などが参考になった。
しかししかし・・・「薔薇を撃つもの」のラストシーンは、果たしてあれでよかったのかとの思いがいまだにくすぶっているのだけれど。
なんだかとりとめのない話になってしまった。
小説を書きたい人への参考になれば、との思いで書きはじめたのだがどうなのだろうか?
この一連の記事は、甘酸っぱい思春期の恋愛小説や、家族や親族の問題、政治的な闘争を描こうとする小説、時代小説や歴史小説には全くと言っていいほど役に立たない。
結局のところ、自分が発見して、書こうとするテーマに合わせた小説作法を、個人個人で編み出していくほかないのだろう。
小説を書く、あるいは何らかの創作を産み出すには、安易なハウツー講座で、何とか解決できることではなさそうなのである。
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