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翻訳のために第一次世界大戦を研究しています。

日本人にあまりなじみのない第一次世界大戦ですが、この関係の本を翻訳しています。翻訳はただ外国語を日本語にすればいいというものではなく、本を買ってくださる読者のために、いかにわかりやすく達意の文章で書くか、というのが最も大切なのです。

達意の文章に仕上げるには、その関連の基礎知識が欠かせません。外国語から日本語に移すだけなら、グーグル翻訳で十分です。あれはおおざっぱな意味を簡単に把握するための単なるツールなのですから。その前後の、単語や文章の読み込み方、出来上がった訳文の意味が今の読者である人たちにきちんと伝わるかどうか、が翻訳者の本当の腕の見せ所なのです。

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私が手掛けているのは、20世紀初めに書かれた第一次世界大戦の記録です。この第一次世界大戦という言い方は、第二次世界大戦を経験した後でつけられた名前ですから、当時はただ「大戦争」、日本側では「欧州大戦」と呼んでいました。これだけでも、翻訳の面倒くささが分かるでしょう。

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書き手は、この戦争で対ドイツのプロパガンダ戦争を仕掛けたイギリス側の人間。正確には英連邦のカナダ人です。KBE ( Knight of British Empire )の称号を持っていますから、貴族の一員、あるいはエスタブリッシュメント、上流階級の人物と考えるべきです。こういった人間が書く英語は、「マイ・フェア・レディ」に登場する女主人公、イライザ・ドゥリットルのお父さん(コックニー訛りという設定です)とは、全く違う。また公文書にも接している人間ですから、ロンドン・ホワイトホール、ダウニング街などの特有の言い回し(日本でいう霞が関系の高級官僚用語)も多用しているはずです。

まあ面倒くさい男の英語で書いた本なのであります。

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それと第一次世界大戦に関する基礎知識が欠かせません。「どこどこの戦い」、と地名しかなかったりするのですが、それをていねいに訳すと、「敵味方が互いに塹壕を掘り、睨み合って、戦線が膠着していた状況を打開するために、無謀な突撃作戦を行って大量の将校や兵士を無駄死にさせてしまった『どこどこの戦い』」ということになるのです。

これも情報を細かくフォローしないと分かりません。なので第一次世界大戦の本を読み漁り、第一次世界大戦を舞台にした映画をDVDで延々と見たりするのです。そしてこういった資料本は高価で、数が少ない。映画も少ないのです。

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こういう手間を考えると、翻訳というのがいかに手間のかかるものかということがよくお分かり頂けるでしょう。

しかし、翻訳家は翻訳料というカタチではなかなか報われません。全く報われていないと断言してしまいましょう。

それでも翻訳という仕事に取りかかるのは、面白いから、というのが最大の理由です。

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後は・・・・、うううーーーんん、第一次世界大戦で亡くなった本当に数えきれない方々への供養かなーーー、とも思います。

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まあ、挫けないで頑張りますから・・・。

ここに挙げた画像は、第一次世界大戦・プロパガンダで画像検索したものです。みーんな、がんがんヘイトクライムしているのが、やっぱり時代なんですね・・・。

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