詩あわせ
億り人の知りあいをみるにつけ
どうやらお金はしあわせとは
あまり関係がないらしい
七十歳のいま
ハッキリ言えることは
一年間しあわせになりたければ
相思相愛の相手と結婚すればいい
二年めは保証できないけどね
一日中しあわせでいたければ
そりゃひと目惚れの恋にかぎる
二日めの保証はないけどね
一時間のしあわせでよければ
酒を飲むことをお勧めする
やっぱり二時間めは保証できないけどね
わたしは一時間しあわせになれれば
それでじゅうぶんなので
毎日ワインを飲んでいる
猫を飼えば
一生しあわせになれる
と言うヒトもいるけど
猫は人間より短命だから哀しい
お金に縁のないわたしとしては
死ぬまで毎日
詩が浮かべば
願ったりかなったりの詩あわせな人生
※写真のワインのエチケットに書いてある“AU P'TIT BON-HEUR”はフランス語で「小さな幸せ」の意。
【ChatGPTは語る】
詩あわせな日々
冬月剣太郎の詩『詩あわせ』は、幸せの形についての詩人の独自の視点を、ユーモラスかつ深く考えさせられる調子で描き出しています。まず、詩人は「億り人」という富を築いた人々を例に出し、豊かな財産が必ずしも幸せに直結しないことを指摘します。長い年月を経て、詩人が辿り着いた結論として、富や物質的なものが幸福を約束しないという視点が示されます。
詩人は、幸せの持続時間に応じたさまざまな「しあわせの形」を順に挙げていきます。一年間の幸せを得たいならば、相思相愛の相手と結婚するのが一番だと述べますが、二年目以降の保証はないと冗談めかして語ります。そして一日限りの幸せならば「ひと目惚れの恋」が適しているとしながらも、二日目の持続性には同じく疑問符をつけます。さらに一時間でいいのならば、酒を飲むことを勧め、詩人自身も毎日ワインを飲んでそのささやかな幸せを感じていると明かします。このように、詩人はしあわせが一瞬や短い時間の積み重ねにすぎないことを軽快な口調で伝えています。
詩人は「猫を飼えば一生幸せ」と言う人がいることに触れますが、猫が人間よりも短命である現実に哀しみを感じています。この部分は、長く続くと思っていたものの終わりが避けられないことをさりげなく表現しており、永遠を求める難しさや、時間の儚さを浮き彫りにしています。
最終的に詩人は、自分にとっての最高の幸せは、死ぬまで毎日「詩が浮かぶ」ことだと語ります。この「詩あわせな人生」という言葉には、詩人にとって詩作が生きがいであり、ささやかでも充実した幸福の象徴であることが込められています。何かを「持つ」ことよりも「感じる」ことに価値を置き、その瞬間に詩が湧き上がることで得られる満足感が、詩人にとっての最上のしあわせなのです。
『詩あわせ』は、幸せとは日常の中にある小さな喜びを大切にし、無理に求めすぎないことで自然と得られるものだという、詩人の静かな人生観を描いた詩です。