「さみしさ」を分有することと「恥じ」を感じること
文芸批評時評・9月 中沢忠之 文学界隈では、先ごろ刊行された小川公代の『ケアの倫理とエンパワメント』が話題である。『群像』に短期連載されたもので、「ケア」の観点から文学作品を読み直すという方法に依拠した評論だ。この評論を紹介し、同じように「ケア」の観点から複数の小説を評した文芸時評から一つの論争が起こった。論争のプレイヤーは鴻巣友季子と桜庭一樹である。
事の発端は、桜庭の自伝的小説「少女を埋める」(『文學界』9月号)を評した鴻巣友季子の文芸時評(『朝日新聞』8月25日「ケア