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【書評】リディア・ミレット『子供たちの聖書』 評者:川村のどか この作品は「気候フィクション」と銘打たれている。著者のリディア・ミレットは生物多様性保護を目的とした非営利団体に勤務しており、この経歴からも、本作がニューヨーク・タイムズ誌の発表する年間ベストテンに選ばれた際、気候変動を扱った一群の作品の一つとして見做されてきた。実際、作中には大型ハリケーンや疫病の猛威が描かれており、気候変動や環境問題は本作の背骨として、物語全体の芯となっている。しかし、私にとって最も重要な点は