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2022年2月の記事

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過去記事は有料です。 2022年2月の記事を格納しています。 ①【書評】未来に向かう成長(リディア・ミレット『子供たちの聖書』評) 川村のどか ②【文芸時評・3月】『文學界』から…
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芥川賞・当事者性・花田の「党」

文芸批評時評・3月 中沢忠之 ロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始した2月24日に芥川賞の贈呈式があった。そこで受賞者の砂川文次は「海の向こうで戦争が始まろうとしていて、糞みたいな政治家がたくさんいて、めちゃくちゃ頭にきているっていう気持ちで書いていたような(以下略)」と気炎を吐いた。今月の『文藝春秋』には砂川の受賞作「ブラックボックス」と選考委員による選評が載っている。選評は、流し読みした程度だが、砂川と九段理江の評価が高く、乗代雄介がそこにくわわるという感じだろうか。砂川を

ポエムはみんな生きている(第四回)

物語・表現・芸術の本懐―国際ロマンス詐欺事件考 ni_ka最近気になった物書き関連のニュースがある。『朽ちぬ愛を抱き続けて』を連載中で、ファンの方々や漫画業界では、「レディコミの女王」なる、めちゃくちゃかっこよい通り名もあるという漫画家の井出智香恵先生が被害者となった、いわゆる国際ロマンス詐欺事件だ。 これは、このリンク先(https://www.jprime.jp/articles/-/23022)の「週刊女性PRIME」による、井出智香恵先生へのインタビュー記事を読むと

『文學界』から干されたオレがなぜかまた文芸時評をやっている件について(第九回)

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未来に向かう成長

【書評】リディア・ミレット『子供たちの聖書』 評者:川村のどか この作品は「気候フィクション」と銘打たれている。著者のリディア・ミレットは生物多様性保護を目的とした非営利団体に勤務しており、この経歴からも、本作がニューヨーク・タイムズ誌の発表する年間ベストテンに選ばれた際、気候変動を扱った一群の作品の一つとして見做されてきた。実際、作中には大型ハリケーンや疫病の猛威が描かれており、気候変動や環境問題は本作の背骨として、物語全体の芯となっている。しかし、私にとって最も重要な点は