拝啓、幸せな君へ
見たくない、聞きたくない、何も知りたくない。目と耳を塞いで手が足りないから情報は防げない。関わらないで済むならそれでよかった。飛んで火に入る夏の虫。そんな言葉が相応しいように思うし、それでいて口の中に羽虫が飛び込んできたような事故。許さないし許しもいらない。プライドではなく負けず嫌いのギャンブル狂。退き時を知らずに破滅する。そんな感じ。
みんな不幸でみんないい。お山に昇れば今よりもっと幸せになれると思っていた。けれどそこにはそこの不幸があって、取引先と糖尿病に悩まされる毎日。スピーチが上手い人だって身内の間じゃ口うるさい厄介者扱い。
幸せになってほしいだなんて死んでも言わない。緩やかに、気づかないくらいに、不幸に見舞われてほしい。僕だって幸せになれるはずだったのに、それを奪った君が幸せだなんてあり得ないでしょう。
幸せなものを見るとこっちまで幸せになる。けれど、不幸なものを見て幸せな気持ちになることだってある。禍々しくて曲がった心。そんな自分を肯定して荒天。視界を消してしまうほどの砂嵐。何もかも思いのままに、この気分を吹き飛ばすほどの風をくれよ。
この気持ちが正しいのかは分からないけれど、今は正しいことにしよう。
僕は君のことが嫌いだ。それも殺したいほどに。
これから先、何度だってぶり返しては後悔するだろう。それを君は知らない。知らないでいてほしい。干渉しないことが唯一の救いだ。
バイバイ、さよなら、また会う日まで。二度と会わないことを願って。
霜村吹空
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