くだらない日常だって、いつかアルバムになる
僕の父は大学生の頃、東京で一人暮らしをしていた。
田んぼばかりで車が無いと生活できないような田舎から上京し、初めて住んだ東京の町。
その町がロケ番組で出てきた時の父の懐かしむ顔を、なぜかたまに思い出す。
僕は何十回、いや、何百回も父が話す、近所のお馴染みの定食屋の話や、バイトで起こったプチ事件の話を毎回聞き流してしまう。
だけど、僕にとっての10代、20代の思い出があるように、父にとってもやはり大切な思い出がその町にはあるようだ。
当然ではあるが、僕の父にも大学生の頃があったわけで、今でもたまに思い出してしまうような青春の日々を過ごしていたのだろう。
父が今の僕くらいの頃に住んでいたあの町。
耳にタコができるほど聞いたあの定食屋。
唐揚げ弁当が300円の今はもう無いお弁当屋...
懐かしむ時の父のテレビを見る眼差しは、
温かくもどこか切ない。
もしかしたら、僕の何気ない日常もいずれ大切な思い出に変わり、将来、自分の子供に何度も話してしまう時が来るのかもしれない。
今の僕が数年前の自分を思い出すように、さらに数年後の自分は今の自分を思い出すことになるのだろう。
淡々と過ごしていた学生時代も、まさかこうやって数年後に思い出されるとは思わず過ごしていた。
日常のあらゆる瞬間は目の前を通り過ぎて一瞬で過去になる。だけど、くだらない日常だって、
いつかふと思い出して懐かしむアルバムの1ページになる。
写真は遡ればいつでも見返せるけど、記憶はそうはいかない。だからこそ、面白い。
今この瞬間をいつか思い出した時の自分が、
今よりちょっとでも幸せになってますように。
そう願いながら過ごすと、未来は明るくなる。
そんな気がしてくる。
未来の僕が見返した時に笑顔になるように、
一瞬一瞬を大切に過ごして素敵なアルバムを作らなければ。