はじめての文鳥を1ヶ月でお見送りした、初心者に知ってほしい教訓
初めてお迎えした文鳥が、お迎えして1ヶ月と待たずに亡くなった。
初めての文鳥は可愛くて可愛くて、人生が変わるほど可愛くて。できることは何でもしてあげよう、幸せに育ててあげようと、本を読んだり勉強して、バタバタと家を作り替え、様子に違和感があればすぐに病院にも連れて行った。専門医を含む複数の病院で診てもらったが、それでも、足りない一歩一歩が積み重なって、悲しい結果になってしまった。
どうしてこうなってしまったのか、どうすれば助けてあげられたのか。自分がどこでどう足りなかったのか、考えた。本やネットで読んで知っていたつもりでも、実際に経験するまではよくわかっていなかったり、初心者がつまずいてしまいそうなポイントがあると思った。
今これを書いている間も悲しくて悔しくて仕方ないけど、亡くなった文鳥が残してくれた経験を無駄にせず、できるだけ大きく受け取るために、記事にして公開しようと思った。
学んだことはたくさんある。どうしても長くなる。
だけど、文鳥をお迎えした初心者の方や、これからお迎えする方が、愛鳥と永く幸せに暮らすために、この経験が少しでも役に立てることを願っている。
★お迎えしたら「絶対に」「鳥を診れる病院」で「健康診断」を受ける
この記事で言いたいことはこれに尽きる。うちがこれを「きちんと」できていれば、きっと文鳥は死なずに済んだ。
亡くなった文鳥は、トリコモナスという寄生虫が原因だった。これは親鳥や他の鳥などから感染するもので、お迎えする前に、ペットショップなどでもよく感染してしまうものらしい。同じショップにいた他の鳥たちも、ほぼすべて感染しているとみて間違いないそうだ。
感染して症状が出ない鳥もいるそうだが、発症してしまった場合はどんどん状態が悪くなり、治療しなければ死んでしまう。怖いことに、ペットショップでは無症状だったのに、お迎えした際の環境の変化が引き金になって発症してしまうということも多いらしい。
まるで時限爆弾じゃないかと思う。でも多くのショップでは、販売前にそうした病気の検査はしていない。飼い主が連れて行くしかない。
発症しないうちに発見できれば、投薬で回復できる。自分も「きちんと検査さえしていれば」と、悔やんでも悔やみきれない。鳥をお迎えしたら、適切な病院で、必ず検査を受けてほしい。
ただ、具体的に「どんな病院」で「どんな検査」を受ければいいかとなると、初心者にはわからないことも多いと思う。うちもここでつまずいた。長くなるけど順に説明する。
「鳥を診れる病院」に、どんな選択肢があるかを知っておく
「鳥を診れる病院は少ない」と聞いて、知ってはいた。そして今回はそれ以上に、「鳥をきちんと診れる病院は、もっとずっと少ない」ということを痛感した。
鳥の病気は進行が早いので、数日も経てば手遅れになる。病院との縁が、いざという時の結果を左右する。うちの経験も参考に、頼れる病院を探してほしい。
うちでは今回、3つの病院のお世話になった。大ざっぱに、それぞれレベル感が違っていた。もちろん1利用者の雑な分類だから、当てはまらない例はいくらでもある。そこは了解してほしい。
ひとつは、「鳥も診れる」動物病院。犬猫がメインだが、鳥についても知見を持つ先生だ。
このレベルの病院は比較的見つけやすいが、それでも少ない。近所の動物病院に片端から電話して探すことになる。ホームページに鳥と記載があっても、実情はそれぞれだ。電話して相談した方がいい。
近所に診てくれる先生がいることは、初心者にとって、とても心強い。しかし、検査は糞便検査までで「そのう検査」ができなかったり、専門医に比べてできない処置も多くある。日常のかかりつけ医としては頼れる存在だが、今回の「お迎えして最初に健康診断をしてもらう」病院としては向かないだろう。
ふたつめは、「鳥を主に診る」病院。とても少ない。近所にあればラッキーだ。
ここには鳥の専門医がいて、基本的な検査もお願いできる。ただ、どんな処置ができるかは病院による。設備の問題もあるし、小さな病院で専門医が1人で診ているというような場合、例えば入院までは対応できなかったりすると思う。どこまで対応できて、できないことは何なのか、確認しておけるといいだろう。
そして3つめは、「鳥だけを診る」鳥専門病院。ものすごく少ない。よほど恵まれない限りは、移動に何時間もかけて通うことになる。
しかし、これほど頼れる存在はない。専門医が何人もいたり、入院も含めて必要な治療を実行できる環境が整っている。(ただし、個人でやっている鳥専門病院もあると思う。設備などはもちろん病院によるので、対応範囲はよく確認してほしい)
今回うちでは、最後の最後に辿り着いて、あまりにも他の病院と様子が違っていて驚いた。
それまで2つの病院をはしごして、たくさんの薬をもらって、専門医からも「あとは本人(鳥)の生命力次第」だと言われた。薬が効かず弱っていく鳥をただ見守ることしかできないのかと、行き詰まり感を抱えていた。でも、たぶん、そうじゃなかった。ここに早く連れてこれていれば、結果は違っていただろうと思った。
専門の病院にも色んなグレードがあるということがわかっていれば、「もっとやってあげられることがある」と気づけたかもしれない。「もっと大きな病院に行こう」と考えたのがあと数日でも早ければ、入院治療で持ち直す事もできたかもしれない。その可能性はあった。本当に悔しい。書きながら涙目になる。
他人事だと思わずに、絶対に病院を調べる。そして、その病院がどこまで対応できるのかを把握しておくといい。
糞便検査までは多くの病院で実施できるが、「そのう検査」をできる病院は一気に減る。それが病院選びのひとつの基準になると思う。
人気の病院は予約もいっぱいで、いざ状態が悪くなってから予約しようとしても、すぐに診てもらえるかどうかわからない。
ネットで見かけた話だが、病院によっては「急患はかかりつけのみ」というケースもあるらしい。病院を見つけたら、簡単な健康チェックでも爪切りでもなんでもいいので実際に足を運んで、顔見せをしておけるといいだろう。
こうしたリストを参考にしたとしても、良い病院に出会うのは簡単じゃないかもしれない。専門の先生でも、検査や治療の方針が違ったり、合う合わないもあると思う。何か違和感や疑問があった時には、他の病院にも連れていくといい。
優先すべきは鳥の健康だ。セカンドオピニオンをためらう理由は無い。鳥飼いのみなさんが、信頼できる病院に巡り合えることを願っている。
「健康診断」や「検査」について知っておく
必要な検査についても書く。
「迎えたらまず病院で健康診断をしてもらえ」とは、知恵袋かどこかで読んでいた。だからすぐに病院に連れて行った。でも、それだけじゃ足りていなかった。少し検査をしただけなのに、一通り診てもらったようなつもりになっていた。
「健康診断」が具体的にどういうことなのかを、わかっていなかった。
うちは糞便検査でメガバクテリアが検出されたということもあり、そいつが悪さをしているんだろうという治療方針が立てられた。だが、実際はその間にも、口内からそのうにかけて、トリコモナスが増殖していた。亡くなる当日まで、それに気づくことができなかった。
ちゃんと「そのう検査」を受けていれば、早期治療ができたはずだった。本当に検査は大事だと叫びたい。
健康診断にも、色んな検査がある。
基本的な健康診断は、身体検査、糞便検査、そのう検査の3つだそうだ。さらに専門性の高いものになると、レントゲン検査や血液検査、遺伝子検査もある。検査フルパッケージの健康診断をバードドックと呼んだりもするらしい。
特に糞便検査とそのう検査は、よくあるペットショップ由来の病気発見に役立つ。絶対に受けたい。同じく遺伝子検査も、感染症の発見に役立つそうだ。
糞便検査からは、メガバクテリアなど、さまざまなことがわかる。ただ、トリコモナスもわかるのかな?と思い込んでいたが、実際には「トリコモナスは胃酸で死ぬから、糞からは検出できない」のだそうだ。
そして、そのう検査。鳥の「そのう(食べた餌を格納する袋)」に管を突っ込んで液体を流し込み、その液体(そのう液)を取り出して、寄生虫や炎症がないか調べる。
今回の失敗は、この検査のことを理解していなかったという点が大きい。獣医さんがそのうを触ったりして腫れや異常が無いかチェックしていたのを、そのう検査なのかと思い込んでいた。勝手に、検査したつもりになっていた。
そのう検査は重要な検査だが、普通の動物病院で、この検査をできるところは少ない。上手な先生じゃないと鳥の負担が大きくなってしまうということもあるのかもしれない。
血液検査からはさまざまな状態が確認できるが、やはり専門性の高い病院じゃないと難しい。状態の悪い鳥に無理に検査をすると、最悪の場合はショック死してしまうこともあると聞くから、一般の病院が慎重になるのも仕方ない。
また、親鳥などから感染する病気には他にクラミジアがあり、こうした感染症は遺伝子検査で発見するらしい。ペットホテルに預ける際には、感染症予防のために検査結果を求められることがある。結果には1ヶ月近くかかるらしいので、いつかペットホテルを利用するときのためにも予め受けておきたい。
鳥にストレスがかかるのでなるべく検査を回避したいと考える人もいると思う。獣医の中でも、検査へのスタンスはさまざまのようだ。でも検査なしで診断しきれず、亡くなってしまったら元も子もない。無駄な乱発は避けたいとしても、積極的検査に一票を投じたい。
病気は、症状だけじゃなく検査・治療方法まで調べる
振り返ると、トリコモナスの症状は、ずっと前から前兆があった。本やネットで調べて、症状が似ていると思ったが、病院でトリコモナスの話が出ないのを見て、「あ、違うのかな」「糞便検査からわかるのかな」と考えてしまっていた。
鳥の診察は難しいと聞く。検査したり、はっきりした症状がなければ、専門医でも判断を誤ってしまうことがある。仕方ない。そういうことはある。
でも自分はもう、医師の判断だけによりかかって後悔したくない。
飼い主が病気のことをわからなくても仕方がない、という立場もあるかもしれない。でも、家に家族として迎えた以上、ちゃんと生かすのは飼い主の責任だ。
自分の判断を後悔したりせず、飼い主の責任を果たすためにも、もっと病気について勉強しようと思った。
鳥の病気にはいくつか「定番」があって、だいたいの症状は、本やネットで知ることができる。でも、一般的な本には、それをどう診断して、どう治療するかまでは載っていない。
どんな病気や症状に、どんな検査や治療ができるのか。もっとわかっていればよかった。
そうして、「そのう検査をお願いします」「入院もできる病院を紹介してください」このセリフがもっと早く言えていたら、きっと結果は違っていたと思うから。
「病気の本はガチの人向けかな」と思っていたが、これは自分が甘かった。そもそも、あんな可愛い動物を迎えて、ガチにならないわけがない。
いざという時に備えて専門書を隅々まで読み込んでおけとまで言うつもりはないが、一冊持っておくといい。きっと助けになるだろう。
鳥の様子をよく見て、違和感を過小評価しない
体調が悪いときはどんな様子になるのか。どんな症状ならどこが悪いのか。人間のことならなんとなくわかっても、文鳥のこととなると難しい。
普段と違う様子があったとしても、それが病気の予兆なのか、あるいはその子の個性なのか、それともたまたまの出来事なのか、なかなか判別がつきにくいことがある。
ただ、今回の経験を振り返ってみると、これまで違和感をもった仕草はほぼすべて病気の影響だったように思う。「念のため」でもいいから、動物病院で診てもらうことをおすすめしたい。何もなければ、安心できる。無駄足ということはない。
はっきりした症状が出た時には、もう手遅れということもある。キャッチした前兆を逃さないことが重要だ。
違和感に気づくためには、「普段」の健康な状態をよく知っておく必要がある。
家に迎えたばかりの時期や、絶賛成長中のヒナ〜幼鳥の時期には、まだその鳥の「普段」の様子が掴めていない。そもそも自分のような鳥飼い初心者は、「普通の文鳥」なんて基準だって持っていない。どうしたって、「そういうものなのかな?」という疑問が消えない。
プロの所見に頼るのが一番だ。定期的に健康診断を受けておければ、より安心できるだろう。
参考に、うちの文鳥に見られた様子をいくつか載せておく。もちろん多少の個体差はあるだろうが、こんな風に「文鳥の習性から外れた行動」は、気にして損はない。
①口の周りが汚れる
文鳥は綺麗好きだ。くちばしの周りに食べカスがついたとしても、普通ならすぐ、止まり木にこすりつけて落とす。もしある時からくちばしが汚れがちになったとしたら、汚れを落とすだけの元気が無くなっているということかもしれない。
うちの文鳥のようにトリコモナス症を発症すると、ヨダレみたいに、口からネバネバの粘液が出て来る。そこに餌の食べカスがくっついて、くちばしが汚れていく。
最初は「水を飲んだ後に食べたからくっついてるのかな?」と思った。ネバネバのせいだと気付いた頃には、すっかり病気が進行してしまっていた。前兆をしっかり捉えたい。
②そのうから餌を口に戻して食べ直す
放鳥中など、そのうから餌を口に戻して、クチャクチャと食べ直していた。一応調べたが、文鳥に反芻して食べる習性は無い。外に吐き出していないだけで、嘔吐の手前。消化系の症状だった。
発情期のオスは、食べ物を好きな相手にプレゼントするつもりで、吐き戻しをすることがあるそうだ。うちの文鳥はまだそんな年齢ではなかったはずだが、そうした情報で「もしかして病気じゃないのかも?」という気持ちになったりもした。そんなこと、素人が悩んでいてもわかるわけがない。病院に連れていった方が早いだろう。
③水をよく飲む
文鳥が水を飲む姿は、とても可愛い。ずっと見ていられる。うちの文鳥はよく水を飲み、たくさん飲んで偉いと思っていたが、調べてみると文鳥はあまり水を飲む必要がなく、「たくさん水を飲む」のはむしろ不調のサインだったりするそうだ。ネバネバのせいで、水を飲まないと上手く餌を飲み込めなかったのかもしれない。
どこまでが通常の範囲で、どこからが飲み過ぎなのかは難しいが、普段に比べてやたらとよく飲んでいると感じる時は、少し気にして見てあげたい。
④口を開ける
文鳥は通常、口を開けて呼吸しない。開口呼吸は、気温が暑すぎる時か、体調不良のサインだとは知っていた。ただ、口を開けるのは放鳥の時だけだったので、「テンションが上がってるだけなのかな?」とも思った。トリコモナスが進行すると、食べたり呼吸したりがしにくくなっていく。今思うと、たぶん放鳥で飛んだりしたから、呼吸が苦しくなったんじゃないかと思う。
また、口を開けた時に、舌をカーッと伸ばしたり動かしたりする様子も見られた。文鳥なのにあまり可愛くないというか、ギョッとさせられる仕草だ。これもトリコモナス症などで見られるそうだ。
⑤胸の辺りが膨らんだり、姿勢が傾く
片方の胸が明らかに膨らんでいたり、姿勢が傾いていた。当初は萎んだりすることもあったが、いずれずっとそのままでいるようになった。
ネットで調べてもあまり紹介されていないが、斜頚といって、これもトリコモナスなどで見られることがある症状だそうだ。
⑥スクワットする
病気が進行していた頃に、文鳥がスクワットのような、見慣れない動きをした。調べても出てこないので、「できそこないの求愛ダンス?こんな体調で、まさか…??」と思ったが、正しくは、糞を上手く出せなくて力む動きだった。脚の力が落ちると上手く力めなくなり、便秘のようになってしまうそうだ。鳥の脚が弱るのはとても悪いサインだとも聞く。病院へ。
こういうサインの他にも、「弱ってくると甘えん坊になって、よく手のひらに乗るようになる」という話はいろんな体験談に共通している。自分に慣れてくれて嬉しい!と喜びたいところだが、頭の片隅では「もしかして弱ってる?」の可能性があることも知っておくといいと思う。
病院が遠くても、診察をためらわない
鳥の病気は、進行が早い。はっきりした症状が出てしまったら、数日で亡くなってしまう。
様子見は生命に関わる。とにかく病院で処置を受ける必要がある。
でも実際に行こうとすると、「寒い中で移動したり、遠いところまで移動したりするのは鳥の負担になってしまうんじゃないか」と躊躇ってしまうことがある。
動物病院の先生ですら、「寒いし、飼い主さんにも色んな人がいるので、遠くの専門病院を紹介するのは躊躇う時がある」と言っていた。
ただ、病気なら、そのままにしていても回復するわけじゃない。そう思うと、寒いことも遠いことも、「病院に連れて行かなきゃいけない時に連れて行かない」ほどの理由にはならないと思っている。
寒さは、道具で、ある程度解決できる。うちはホッカイロを使っていたが、正直ちょっと心許なかった。先人の工夫を見ると、キャリーケースと一緒に小さめの湯たんぽを入れたりするようだ。電子レンジで温められるジェルタイプのものを使って、帰る時には病院で温め直してもらうという人もいて、真似したいと思った。
病院までの距離は道具では解決しないが、鳥が移動に慣れてくるにつれて、ストレスは減ると思う。最初は夜の放鳥をパスしたりして疲れた様子だったが、その後は比較的けろりとしていた。キャリーケースでの移動に、あらかじめ慣らしておくといいかもしれない。暖かい季節なら、文鳥を連れて公園までお散歩してみるのも楽しそうだ。この際、振動でストレスを与えないために、自転車移動はNGだと心得てほしい。
うちはお迎えした当初に使ったプラケース(虫かご)を簡易キャリーケースとして使ったが、電車移動の場合、かさばって動きにくい。小さいキャリーケースを用意しておくと、移動のハードルが下がって楽になる。
初めて鳥専門病院に行ったとき、そんな大荷物を持っているのはうちぐらいで、他の皆さんは身軽に見えた。「あのトートバッグに、キャリーケースが入っているの…?」と驚いた。うちもいずれ別の子をお迎えしたら買おうと思う。
薬は、状況に合った飲み方を考える
ここからは少し小ネタになるが、薬の飲ませ方についても、実際に経験してわかった話を共有する。
いくら適切な薬をもらっても、鳥が上手く飲んでくれなければ効果は無い。
薬の飲ませ方というと病院の指示に従うのが普通で、なかなか意識することは少ないかもしれないが、場面によっては生死を左右する可能性があると思った。
今回、複数の病院をはしごする中で、同じ薬でも、いくつかの出し方があることを知った。獣医の先生によっても好みが違ったりするようだ。
うちが経験したのは、①飲み水に混ぜる方法と、②直接飲ませる方法の2つ。それぞれにメリットとデメリットがあると感じた。
まず、①水に入れて飲ませる方法。
もらった粉薬などを水入れの水に混ぜて使う。飲ませるために自分で何かをする必要はないので、そういう意味では楽。ただし、味や匂いを嫌って飲まなくなるケースもあるので、ちゃんと飲んでるかどうかは確認した方が安心だ。
メリットは、薬水を用意してしまえば基本的に放置するだけで済むこと。そして、むしろこっちが重要だが、「水を飲みさえしてくれるなら、ほぼ確実に薬を飲ませられること」。あまりピンとこないと思うが、この後の体験談を読んでみてほしい。
一方でデメリットは、鳥任せになるので、どれくらい飲んでいるか、確認がしにくいこと。そして、水入れに糞をされてしまったり、こぼしてしまったりして、その日に飲ませる薬がダメになってしまうリスクがあったり、水の取り扱いに気を遣うこと。うちは放鳥中に水を飲ませることもあり、わざわざケージから薬入りの水入れを取り出すのはちょっと面倒だった。
ただ、こうしたデメリットは、作った薬水を小出しに使ったり、工夫である程度解決できるだろう。(その日の薬はその日に使い、翌日には捨てて作り直す。当然だが、このあたりは病院の指示に従うこと。)
②直接飲ませる方法では、目薬ケースのような容器を使って、鳥のくちばしに薬の水滴をくっつけて飲ませる。
手にある程度慣れている鳥なら、飲ませるのはそう難しくない。薬水を作ったり管理する必要もなく、個人的にはこちらの方が「楽」だと感じた。
のどがゴクゴク動くのを見ると、「薬を飲ませた」実感がある。自分の手から薬を飲む姿は可愛いし、ちょっと嬉しい。水に溶かす方法と比べて、こちらの方が「確実に飲ませられる」という意見にも頷ける。
ただ、状況次第では、そこが落とし穴になるかもしれない。鳥の状態によっては、「薬を"本当に"飲んでくれているか」がわかりにくいからだ。特に、食事をしにくくなっている鳥の場合は、注意した方がいいと思う。
うちの文鳥は、トリコモナス症だと診断できたのは亡くなる直前になってしまったが、実はその数日前から、トリコモナス治療の薬を与えてはいた。病院にトリコモナス症を疑っているという話をして、念のため出してもらった薬だ。
トリコモナスは、薬を飲めていれば割とすぐに回復できると聞く。数日経っても回復できていなかったということは、飲んでいるように見えても、実際は体内にちゃんと薬が届いていなかったのだろう。
トリコモナス症の薬は、直接飲ませる方法で処方されていた。一日一滴を目安に投与し、のどがゴクゴク動くのを確認する。
しかしこの病気は、進行すると食事や呼吸の通り道が狭くなる。口の中のネバネバも、薬が体内に届くのを邪魔していたのかもしれないと思う。
文鳥は、食事の時だけじゃなく、機嫌が良い時にものどを動かす(可愛い)。だから薬をちゃんと飲んでるか不安で、2滴とか、なんなら3滴与えたこともあるけど、用法用量を破って逆効果になるのも怖いし、あまり踏み込むわけにもいかない。飲んでいると信じるしかなかった。
その点、水は比較的しっかり飲んでいたことを思うと、この薬については水に溶かす方法の方が良かったのかもしれない、と思ったりもする。
ただ、この薬は他の薬に比べてあまり美味しくないようで、水に溶かすと、水を飲まなくなってしまうという可能性も考えられる。実際、直接飲ませた時にも「げっ、なんだこりゃ!」というリアクションをして、他の薬より明らかに嫌がっていた。
薬水を飲まなくて、脱水症状になってしまったという体験談もある。鳥の性格もあるし、どういう飲ませ方が良いかは総合的な判断になる。先生と相談できるといいと思う。
(追記)薬を直接飲ませた後に不味がるリアクションをしたと書いたが、飲ませた後に軽くくしゃみをする時があり、この時に吐き出していたのでは?ということに思い当たった。薬を直接飲ませるにあたって、のどを動かすかどうか以外に見るべき点は何か、なかなか教わる機会は無いと思う。もし次回があれば、先生に聞いてみようと思う。
初心者は暖かい春にお迎えするといい
文鳥は、夏以外が繁殖期。ヒナや幼鳥が市場に出回るのも、だいたい9月〜5月ぐらいまでの時期になる。
初心者は、4〜5月にお迎えすることをおすすめする。
うちはつい勢いで極寒の2月にお迎えしてしまったが、初の文鳥で、さっそく冬を越えなければならないのは、なかなかハードルが高かった。
羽根も生え揃っておらずら身体もできあがっていないヒナや幼鳥は、温度や湿度の管理がシビアだ。特に温度不足は、病気の発症の引き金になってしまうなど、重大な悪影響をおよぼしかねない。
詳しくは年齢によるが、小さい頃は温度は25〜30℃前後、湿度は60%程度が推奨される。この保温保湿は、思っていたより大変だった。
てっきり、ヒーターやサーモスタットなど、売っている道具を一通り買い揃えれば解決できるのかと思っていたが、そうではなかった。
道具を揃えるのはほぼ最低ラインで、その道具を使って実際にどう適切な環境を保つかは、試行錯誤が必要だ。
28℃ともなると、エアコンだけで対応するのは厳しい。飼い主が参ってしまう。それに、エアコンを使うと湿度が下がり、家の加湿器をフル稼働しても追いつかない。使いすぎて壊れたので、あわてて新しい加湿器を買ったほどだ。
試行錯誤の末、うちはホームセンターでポリカーボネート板(プラスチックダンボールでもよいと思う)を買ってきて加工したり、ビニールのテーブルクロスを貼り合わせたりして、保温ケースを自作した。
結構、飼育用品を自作する鳥飼いさんは多いようだ。鳥の個体差や、飼い主の生活習慣、家の環境の違いもあり、市販の商品だけでは痒いところに手が届かないことがある。100均のアイテムも役立つ。先人の知恵を借りながら、工夫して、良い環境を整えよう。
鳥の身体ができあがってくれば、保温も20〜25℃程度で対応できるようになる。春のあたたかい時期に迎えれば、冬までには身体も十分できあがっているし、保温もずいぶん楽になる。
それに飼い主にとっても、余裕を持って冬の準備ができるのは嬉しい。
鳥をお迎えすると、飼い主の生活は一変する。鳥の世話に合わせて生活リズムを変えることになり、慣れないうちは疲労が溜まる。そんな中で鳥の環境整備に奔走するのは、飼い主にとってもなかなか辛いものがある。
なお、温度設定は本やネットにも目安が載ってるが、あまり鵜呑みにしすぎない方がよいということも学んだ。結局のところは、その鳥に合わせて調整することが大切だ。
「鳥が体調を崩したら、とにかく保温!」と言われている。鳥は体調を崩すと、寒そうに羽根を膨らませる。
いわゆる「適正温度」なのに寒そうなら、「適正温度」にこだわるのではなく、寒がらなくなる程度まで、少し温度を上げた方がいい。文鳥の体温は42℃もある。温度を多少高くしても問題ない。(もちろんやりすぎは禁物だ)
ところで、大きなペットショップと、個人の鳥専門店では、環境や育成方法もずいぶん違っているようだ。個人的には、専門店の方が元気で、健康そうに見える。これから迎える人は、文鳥の勉強をしながら、暖かい時期にいくつかお店を回ってみるといいと思う。そのうちに運命を感じる子に出会ったら、絶対に最後まで生かすという覚悟を持って、全力で大切にしてあげてほしい。
最後に
ここまで、ずいぶん長くなってしまった。そろそろ終わろうと思う。少しでも、誰か必要な人の参考になれば嬉しい。知識不足で愛鳥を死なせてしまった飼い主としても、少しは報われる。
文鳥をお迎えしてからは、驚くことが多かった。
まず第一に、まさかこんなに可愛いとは思わなかった。少しずつ慣れるにつれて、遊んでくれたり、触らせてくれる時間が伸びていく。どんどん生え変わっていく羽の様子を見たり、できることが増えていくのを見守るのは本当に楽しかった。
生活リズムも部屋の環境も急速に変わり、人間だけの生活から、鳥と暮らす生活になっていった。短い間だったけど、本当に濃密で、幸せな時間だった。
食いしん坊な子だった。粟穂にがっつきながら見せるドヤ顔が忘れられなくて、いつも思い出す。育ち盛りで、みるみる増えていく体重が嬉しかった。
小さな身体で、一生懸命に「好き」を伝えてくれる子だった。いつも止まり木にくちばしをこすりつけて、好意を伝えてくれていた。こちらもケージをコツコツ叩いて返事をすると、わっと喜んで、くちばしを何度も、何度もこすりつけた。
手に乗るのが好きな子だった。指に乗るだけじゃなく、手のひらでも握らせてくれるようになってきた頃だった。特に、弱ってきてからは甘えん坊で。
ご飯が食べられなくて、羽もくちばしもボロボロになってるのに、保温保湿した酸素室からも出たがって。出してあげるとすぐに手に収まって、頭を撫でると、嬉しそうにぐるぐるのどを鳴らしてた。手の中で弱っていくのを見るのは辛かった。
本当に、可愛くて仕方なかった。亡くなった後ですら、やっぱり可愛くて、換羽中でやっとふわふわになってきた頭を撫でて泣いた。やわらかかった。もっとふわふわのまん丸になるまで育ててあげたかった。この歳になって「えっ、これって本当に、生き返ったりできないの?」とか考えてしまう自分に気づいて、笑おうとしたけど、涙が止まらなかった。自分はこういう時に結構、声を出して泣くんだなって、初めて知った。
文鳥の治療期間中、駆け込みで何度も診てくれた近所の獣医さんに、結果を知らせた。「自分ももっと早く専門病院に紹介するべきだった」と言って、泣いてくれた。良い人すぎて心配だった。
でも、うちの文鳥の死が、他の子のための教訓として残るなら、それはせめて、嬉しいことだと思う。
こうなってしまった以上、飼い主としてできることは、亡くしてしまった命から、できるだけ多くのものを受け取ることしかない。それしかできない。
悲しくて悔しくて色々な気持ちがわくけれど、絶対に愛鳥の死を無駄にしない、ということだけは決めている。
うちはきっと、そう遠くないうちに、次の子をお迎えするだろう。この1ヶ月で教わったことを活かして、今度こそ、幸せに育ててあげたい。
どうも悲しい話ばかりになってしまった。長くなったけど、でも最後にこれだけは書いておきたい。
文鳥はいいぞ。本当に。
いま一緒に暮らしてる人も、これから迎えようという人も。良い飼い主になって、どうか幸せにしてあげてくれ。
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