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【絵本】ウサギ

ウサギの話かと思ったら、現地人と侵略者のお話のようだった。人間の一人として心が痛くなる。
独特な絵も絵画のように楽しめる。

 ある夏の夜おそく、私は家をめざして車を走らせていた。のどかな田舎道を二時間走るあいだに見かけるウサギの多さに私は驚き、恐怖さえ感じた。道端に、野原のそこここに、茂みの中に…どこを見てもウサギがいた。
 私は考えずにいられなかった。オオヒキガエル、キツネ、猫、ブラックベリー、そうした外来種が、いにしえの広大な土地を侵略していったであろう歴史を。彼らだって自分からすすんで来たわけではない。いやおうなしに連れてこられたのだ。それでも彼らはやっかいな皮膚病のようなものだった。ひどい湿疹におかされた人は、ほかのさまざまな感染症にもかかりやすくなる。
 私にはオーストラリアという国が、ウサギや、野生化した猫や、オオヒレアザミをかきむしるのに気を取られすぎて、道を失ってしまったかのように見えた。いまのこの国は、本来あるべき理想の姿からはほど遠い。
 動物の侵略者と、植物の侵略者と、人間の侵略者と。何もない田舎の一本道を走りながら、私にはその三つがほとんど同じものに思えた。

表紙裏より作者コメント

#ウサギ #ジョンマーズデン #ショーンタン #岸本佐知子

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