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MAU3.8億人のSpotifyはなぜこれほどまでに成長できたのか。創業時の環境と音楽体験の拡張がキモ
どうも。様々なプロダクトの調査・考察・分析をしています、ぶんたです。
今回はSpotifyを取り上げたいと思います。パット見ニュースなどでよく自分も間違うんですが、Shopifyではなく音楽配信サービスのSpotifyです。
音楽配信がベースですが、現在はpodcastを筆頭に様々な音声コンテンツ分野を強めていき、耳を取る戦略でありとあらゆる音声のコンテンツを拡充していっています。
創業
Spotifyはスウェーデンのストックホルムでダニエル・エクとマルティン・ロレンツォンが立ち上げた音楽配信サービスです。2006年に創業、サービス自体は2008年から開始しています。当時、ダニエル・エクは23歳でした。
創業のストーリーはこちらに詳しく書いてありましたので参考までに。
(エクは14歳で企業、20歳前後で大規模サービスのCXOをやっており、ロレンツォンもアフィリエイトネットワークの会社を上場までさせたという、かなりツヨツヨなお二人が立ち上げたんですね)
スウェーデンといえば、IKEAやH&Mを思い浮かべる方も多いかと思いますが、「北欧のシリコンバレー」といわれるほど、世界が注目するスタートアップも様々輩出しています。
世界的にヒットしたスマホゲーム、マインクラフトの開発会社もスウェーデン発の企業です。
その2000年代後半当時のインターネットを利用して音楽を聞くという状況は大きく2点今と違いました。
・Appleのitunesが公開されたのが2003年で、音楽を聞くことはダウンロードして聞くことが主流。ストリーミングの技術も発達しておらず、1曲ずつ買ってダウンロードして聞くのが当たり前という状況。
・1999年に大人気になったナップスターのようなP2Pサービスが流行になっており、音楽の違法アップロードが問題となっているという状況。
この2点において、音楽ストリーミングの広告モデルで合法的に無料で音楽が聴ける体験という点においてSpotifyは画期的でした。
経営理念で音楽の海賊版を撲滅するということを掲げているほど、ここの問題はかなり当時大きかったんですね。
1つの転機はヨーロッパの大手レコード会社と契約できたこと。海賊版の横行がレコード会社としては死活問題で、何とかここの問題を解消できるように動いていました。
はじめはヨーロッパ6カ国でスタートし、2ヶ月で100万人の登録者を集めるほど人気が出ました。
利用者も合法的にしかも無料で大量の音楽を聴けることを求めていたといえます。
つまり、Spotifyが初めに伸びた理由としては、当時の社会状況とそのB向けC向けそれぞれのニーズをうまく汲み取れたビジネスモデルだったということが言えるのかなと思います。
また「ダウンロード待ちで再生が遅れるのは許されない。待つなんてクールじゃないが合言葉だった。」そうで、技術チームは0.2秒で曲が始まると、人間は「すぐに再生された」と認識することを発見し、それをストリーミング技術によって解決しました。
ニーズを汲み取っただけではなく、こういった本質的なユーザー体験の部分もかなり技術ドリブンでこだわって作ったことも広く受け入れられた理由かと思います。
ただこの時はまだiPhoneも登場していないので、パソコンのアプリとして利用者が拡大していっていたという形です。
世界展開
Spotifyはヨーロッパで一定の成功を収めたものの、アメリカへの進出に関しては苦戦していました。
Appleや既存音楽ビジネスの会社からはアメリカのレコード会社提携においては阻止されたりし、かなりの圧力を受けていたようです。
また、2009年にiPhoneアプリ提供を開始したもののitunes提供のAppleはド競合になるので、アプリの審査が通るかヒヤヒヤしたらしいです。。
実際に2019年にはAppleがSpotifyアプリを「AppleはApple Musicに対抗する競合他社のサービスを不当に規制している」として訴訟も起こしています。
そんな重圧の中でも何とかアメリカのソニー・ユニバーサル・ワーナーなどの大手との提携が、世界で成功する大きな糸口となりました。
実際に「三ヶ月もあればアメリカに上陸できると踏んでいましたが、レーベルとの交渉に二年半もかかってしまいました」というほど交渉には難航した模様です。
また2011年にFacebookとの連携もバイラルすることになる非常に大きな転機となりました。Facebook内で友人と音楽を共有できる体験。
今でこそSNSのタイムラインで音楽や動画を瞬時に体験できるのは当たり前ですが、当時は画期的でした。
ストリーミングだからこそ瞬時にSNSのタイムライン内で友人が聴いている曲を聴ける。これが大きなグロース要因にもなりました。
直近でもより連携を強固なものにしています。
またその後2010年代前半には次々とマーケティングやプロダクトの磨き上げを進めていき、プレイリスト機能は同社のさらに加速させる機能ともなりました。
今でも採用されている「無料版はシャッフル再生になる」仕組みは、無料でも聴けるけど有料で聴きたくなるちょうど良い塩梅の設計も、この磨き上げフェーズで完成されていきました。
以下、UXの変遷が分かりやすいブログ、掲載しておきます。参考になります。
そして今に至る
現在ストリーミング音楽配信サービスはApple music、Google music、Amazon musicなどGAFAも展開しており、群雄割拠の状態ではあります。そんな中でもSpotifyは着実にユーザー数を増やし、ユーザーに受け入れられています。
これまでにお話したようなプロダクトとビジネスの進化をしていくことにより、多くのアーティストがSpotifyに参入していきました。
そしてSpotifyの中からもエド・シーランなど人気アーティストが生まれるようなプラットフォームとなりました。
日本でスタートしたのは2016年。日本ではあいみょんなどのスターもSpotifyが人気を後押ししたといえるでしょう。
そして2018年にニューヨーク証券取引所において上場を果たし、さらに世界展開へと躍進していき、現在は音楽のみならず、音声・podcastの戦略を強めています。
Podcast発信ツールの「Anchor」、ポッドキャスト制作「Gimlet Media」、Podcastにおける広告およびパブリッシングプラットフォーム「Megaphone」、AI採用Podcast発見ツール「Podz」など次々にPodcast関連企業を買収し、サービスに組み込んでいます。
直近でもFindawayというオーディオブック提供会社を買収しました。Spotify上でオーディオブックが買えるような体験にもなってきそうです。
またGreenroomという、ClubhouseやTwitterのSpaceに近いライブ配信に特化したサービスもローンチしました。耳のコンテンツを丸取りしていこうという感じですね。
そして2021年現在ではユーザー数が3.8億人、企業の売上は約1兆円、時価総額は約6兆円と凄まじい企業へと成長しました。(すご...)
まとめ
Spotifyがなぜここまで使われるサービスになったかということをざっくりまとめると、
①当時のtoC,toB双方にとっての課題をクリアし、ニーズを汲み取った。
(ユーザーはいろんな曲をお得に合法的に聴きたい。企業は海賊版の流通をなくしたい。)
②音楽の体験を拡張した(SNSのシェア体験、プレイリストの作成・シェア体験)
それまでは一人で聴くものだった音楽が、SNS上で友人とシェアできたり、プレイリストを作って公開できたりと、ソーシャル要素かつユーザーが編集・編成できる要素をしっかりプロダクトに組み込まれていたことが大きかったように思います。
もちろんそれらは無数の楽曲を適切にレコメンド、検索できるプロダクトの質が良いということが前提。
Spotifyは楽曲のメタ情報をかなり取っており、それらを元に音楽というアホみたいに広いジャンルをデータ化し、適切にレコメンドができるようになっています。
Spotifyのようなプラットフォームができてから、アーティストはレーベルを経由せずに直接Spotifyに作品をアップロードできるようになりました。こういったコンテンツプロバイダー側のメリットも大きく、一気に拡大していきました。
音楽体験の拡張は今もその進化を止めることはありません。
直近だと、
・友人と自分のデータを解析し、二人が好みの曲であろうプレイリストを自動で作ってくれる「Blend機能」
・podcastの音声とSpotifyにある楽曲をつないで、まるでラジオのような体験を提供できる「Music + Talk」
などの新機能をどんどん提供し、プロダクトを拡張しています。
個人的にはメイド・フォー・ユーがすごいなあと。
コンテンツ量×タグ付け×データ解析で、ピンポイントで聞きたかった曲が届けられます。
また年末に一番聞いた曲などの動画をカスタマイズして送られる「Spotify Wrapped」など、体験へのこだわりは随所に見られます。
それらのような楽しくなる体験をここぞと出している。こういったものが積み重ねられてプロダクトを愛する人が増えていくんですねえ。
③課金誘導のしたたかさ
最後はこれです。どれだけ素晴らしいプロダクトでもうまく売上に繋げなくては良いサービスは運営できません。
Spotifyに関しては、楽曲は全て解放しつつも再生がランダムになるため、自分の聞きたい曲を狙って聴くにはお金を払う必要がある。
ただし流し聞きするくらいだったら広告が入るものの十分に音楽が楽しめる設計です。
だからこそ少し前のデータですがMAUに対しての有料課金率が45%前後という驚異的なサービスになっています。
という感じでまとめが冗長になりましたが、改めて体験ベースでプロダクトを作っていくことの重要性を感じました。
引き続きいちユーザーとして楽しんで使っていきます。
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