プロダクトマネージャーが意識したい8つのスキルとPM組織の編成
どうも、ぶんたです。(@bunbuno0)
音声プラットフォームのプロダクトを作っているVoicyでPMチームのマネジメントとプロダクトマネージャーをやっています。
Voicyでは毎週誰かがnoteを公開しているので、是非こちらもチェックしてみてください!
今回は自分自身がPMであり、またPMメンバーのキャリアや組織について考えることも多く、PMがどうあるべきかというのは悩ましいなあと思っていたりするので、
自分のまとめがてらPMのスキルや組織についての記事を書いてみようと思いました。
またこのあたり悩んでいる方も多いのかなと思ったので、以下のような方に是非読んでいただければと思います。
・PMとしてどういうスキルが必要か、また伸ばせばいいのかわからない
・プロダクト組織をどう編成していったらいいかわからない
・PMの採用基準が分からない
自分自身もどう評価制度を設計するかとか、どうありたいかとか悩ましいことも多いので、先人の知恵をまとめたりしながら自身の考えも整理してみたいと思っています。
大きく分けると、開発・デザイン・グロースなどに必要なハードスキルと、コミュニケーション能力や意思決定力などのソフトスキルに分かれるかと思いますので、それらを分けて考えてみたいと思います。
PMが意識したい8つのスキル
個人的にPMはハードスキルとソフトスキル両方バランス良く持つことが成果を出す条件かと思っています。
ハードスキルとソフトスキルは切り離されたものではなく、
掛け合わせで行動を起こすことができ、そのスキルが強ければ強いほど結果にまで結びつく成功確率が上がるようなものなのかなと考えます。
ドラクエでいうとハードスキルが武器や呪文の強さで、ソフトスキルがステータスのようなものかもしれません。
メラゾーマを覚えていても魔力が小さいと弱いし、魔力が高くてもメラだけでボスは倒せないみたいな。
ただ今の時代、メラゾーマの唱え方は今やネットで探せば見つかるかもしれませんが、魔力の上げ方は戦って経験値を積むしかないようにも思えます。
・・・この例えは必要なかったかもしれません。
ともかく、ハードとソフトを両方意識して能力を高める必要があるというのがポイントになるんだろうなと思っています。
そして、分かりやすく分けるのであれば、
ハードスキルとしてUX、開発、グロース、ビジネスの4つ。
ソフトスキルとして推進力、決断力、課題発見力、課題解決力の4つ。
この8つのスキルがPMとして重要なのではないかと考えています。
4つのハードスキル
とりあえず「PM×スキルといえば」のプロダクトマネジメントトライアングルを掲載しておきます。これは改めて考えると、PMに必要なハードスキルを体系化したものなんだなと思いました。
「UX,開発,ビジネス」という3象限に分けて必要なスキルをまとめている形になり、その中間で具体的にこういうスキルだよねということを表している、教科書的な図です。
そしてこれまた教科書的に学ばせていただいている、オカダさんの記事もご紹介。プロダクトマネジメントトライアングルをより細かく言語化し、PMに必要なハードスキルの評価指標を作成しています。
これらを見て考えたときに、必要なハードスキル4つは以下のように分類されるのかと思います。
かなり広い領域ですよね。
個人のPMでいうと自分はどこが強いのか弱いのか、またどういうPMになっていきたいのかをこういったものを見て考えると良いかもしれません。
組織でいうと、これらを1人で賄うのは不可能なので、組織としてこういった領域をどうバランス良くPMロールを配置できるかがプロダクトの成功可否を分けるということなんだと思います。
またこれらはPMだけでカバーするということではなく、エンジニア・デザイナー・マーケター・経営企画などのメンバー含めて、自分たちに足りない領域はどこなのかを考えるべきことです。
そしてこの中でも組織や業界で重視しているスキルは違うと思いますし、強める部分は明確にした方が良いと思います。
あとビジネスはシニアのPMとかに求められる部分かもしれませんね。
恐らく大体のスタートアップはこれらを創業メンバーで全て賄っている形かと思いますが、、
規模に合わせてどういう領域を足りないのか、強めるべきなのかを考えて、社内育成や採用を進めていくという形なんだと思います。
4つのソフトスキル
ソフトスキルは評価制度でいうコンピテンシーにあたるような能力かと思います。
全職種的に必要な能力であったりしますが、PMはステークホルダーの幅が広く不確実性が高いミッションを担うことになるので、特に重要度が高い職種なのだろうと感じています。
それぞれに作用するので明確にパキッと分けることは難しいですが、概ね簡単にまとめると以下のようなスキルが必要要素になりそうです。
この4つは全て絡みあうので、このスキルだけ強ければ良いというものではなく、4つの領域全てにおいて一定数のスキルを持っていて、その中で自分の強みが何かある状態というのが望ましいように思います。
あらゆる物事を決める時は「決断→推進」となるので、決断力だけ強くても人を巻き込めなければ推進できずに頓挫してしまいます。
また「課題発見→解決案検討」によってその精度を上げることができます。
その中でも他人に任せた方が良い部分 or 自分がより引っ張る部分など強みや弱みを理解できていると、業務もスムーズかつ精度も上がるのだと思います。
また、ソフトスキルはハードスキルと違って一朝一夕では身につかない、人生の経験を通して身に付くスキルなのだと思うので、なかなか身につけようと思ってすぐ身に付くものではないと思っています。
そんな時はハードスキルでソフトスキルの弱点をカバーするということも選択肢の一つなのかなと思います。
例えば課題発見力において弱みだと感じているのであれば、先人達が残した立派なユーザーインタビューのスキルやデータ分析のスキルなどフレームワークも山ほど調べればあります。
そういったことを学んで実践して経験してソフト面も成長していくんだろうなと感じています。
もはやそういう行動を起こさせる部分も「情熱」とか「主体性」とかになってくると思うのですが、かなり根本の部分なのでここでは取り上げないでおきます。
ソフトスキルに関しては、以前書いた以下のnoteも是非見てみてください。
そして、これらのソフトスキルとハードスキルを掛け合わせることで、PMとしての能力が発揮できるかどうかが決まってくると考えています。
Rettyさんの評価制度はうまく「ハードスキル×ソフトスキル」を取り入れているような設計だと感じました。その中でもソフトスキルをうまく言語化して評価に組み込んでいる印象です。
「最後の砦」とか「英知」とかならではのネーミングもいいですよね。
また、役割含めソフトとハードについて書かれたこちらの記事もおすすめです。
ハードとソフトの掛け合わせ
こうしてハードとソフトを一覧化した時に、その場面場面で必要なスキルは違いますが、両軸必要だということがわかります。
一例をあげると、”ユーザーインタビューを通してなぜユーザーが離脱するのかを理解し、定着する施策を行う”というミッションを担ったときに、以下のようなスキルが必要になります。
もっと細かいフローはありますが、この一連の流れだけでもざっくり書いてもこんだけあって、こう見ると複数の両軸スキルを掛け合わせて仕事を行なっていくということが分かります。
どれだけハード面で強くても推進力がなければプロジェクトを進めることが出来ませんし、一方ソフト面が強くてもそもそもどうやって課題を発見するか・実行するかが分かりません。
だからこそ両方のスキルを意識して、どの領域が強くて弱いのかを認識しておくことがとても大事だと思っているわけです。
組織・採用において
組織設計には特にハードスキルは意識しておきたいところです。
例えば、UXに強いチームを作ってどれだけ価値あるプロダクトを作ったとしても、グロース的な機能が組織に無ければプロダクトがユーザーに届くスピードは遅くなります。
また、例えグロースが強くても開発とビジネスが弱かったら、収益を上げることが難しいかもしれないですし、中長期的に品質の課題や開発スピードの問題は出てくるかもしれません。
だからこそ、「UX、開発、グロース、ビジネス」の4つを適切に配置してプロダクトを成長させる組織編成が大事になってくるのだと思います。
また、そういった人員を確保するための採用においてはハードスキルも重要ですが、ソフトスキルは特に意識して見ておきたいポイントです。
採用においてよくあるのが、大企業やメガベンチャーでの華々しい経歴が書かれていて期待しても、いざ面接で深掘ると「あれ?この人の考えで意思決定したり動かしたりしていないな?」となることもあったりします。
これは恐らくハード面での経験は大企業などで体系化されて習得しているものの、ソフト面での行動・スタンスはその人自身が主体性を持てていなかったりすることによって起きます。
だからこそ採用の時は「UX、開発、グロース、ビジネス」の4つのハード面で組織に足りない部分を考えつつも、「推進力、決断力、課題発見力、課題解決力」の4つのソフト面を特に深掘りしておきたい部分ではあります。
あくまで実績としての「◯億円の売上いきました」「◯万ユーザーいきました」などはその所属していた組織の結果だと思いますので、”その人が考えたことやそれに対して取った行動”を意識してマッチングを考えたいところですね。
とはいえ、それでもなかなか難しいのが採用ではあります。。こちら側がうまくマッチすることが見抜けなかったりして取り逃したり、逆に魅力を伝えきれなかったり、求める環境を提供できていなかったり。。難しいものです。
といろいろ学びながら採用の精度を上げていくことは重要ですが、この8つのスキルを意識して組織を作っていくことは大切かと思っています。
専門性の高いPM
またアメリカでは、特に専門性の高いPMという領域も出てきているようです。
先に述べた4つのハードスキル「UX・開発・グロース・ビジネス」の部分でも、開発・グロースの専門領域に固まって専門性の高い職種があるようです。
これは開発・グロース領域が他社の経験からも汎用性があって転用しやすいからかもしれません。
UXやビジネスの部分は、成功パターンのHOWをそのまま転用して、他社でも成功するという確率は低いように思います。
また、日本だとあまり無いですがアメリカでは階級があるのが一般的だそうです。Associate Product Manager、Senior Product Manager、VP of Productなど。
VPやCPOなどは日本でも取り入れている企業も増えてきたように思いますが、そこまで細かくは分かれていませんよね。
今後日本でもPMの重要性を気付く企業が増えて、ポジションや人数も増えていけば、領域ごとや階級ごとに細分化していくのかもしれません。
それこそ個人単位で見るとハード面での自分の強みというのが大事になってくるので、自分はバランス型なのか、特化型なのかどうなっていきたいのか考えてみるのも面白いかもしれません。
BtoCとBtoBでPMに必要なスキルの違いは?
スキルという部分を見た時に、BtoBとBtoCで必要な要素は変わってくるのか?という点については、以下の記事が参考になります。
これすごく面白かったんですが、アメリカのPMにアンケートを取って以下の内容をBtoBとBtoCで重要視する内容の違いを分析している記事です。
ざっくりまとめると、
BtoB
ターゲットや新機能によってプロダクトビジョンの見直しが必要になるため、プロダクトビジョンやロードマップなどの戦略策定が重要と答えた人が多い
ターゲットが明確かつユーザー数も少数のため、顧客フィードバックを重視し、かつ業界知識があることが重要になる
ユーザー価値は機能の拡充>ユーザビリティ。業務を円滑に進められるなら多少不便でも使いたい(ただし直近はBtoCの知識が取り入れられユーザビリティも求められる)
ユーザー数が少なく単価が高いため、早期の契約やプライシング設定などが死活問題となる。またセールスなどのビジネス部門との協調が大事。
課題が明確になりやすいため、無駄なリソースを使わなくて済む一方、ユーザーは頻繁な変更を嫌うため、トレーニング含め時間をかけて行う。リリースサイクルは遅い傾向
ただしSaaSも様々な種類があり、BtoCのようなモデルで成長している企業も増えている(Product-Led Growth)
BtoC
ユーザーが正解を決めるため、プロダクト開発やマーケティングが重要と答えた人が多い
ユーザー数が多く、ニーズも多様で抽象的になることが多いため、チーム内でのブレストを重要視し、データからインサイトを見つけられるかが重要
ユーザー価値はユーザビリティ>機能拡充。直感的に使いにくいとすぐ使わなくなる
課題の抽象度が高く、ユーザーが使った結果が正解になるので、市場へ展開していくことが重要。出来るだけ早くユーザーに使ってもらって是非を問う。ビジネスモデルもフリーミアムなどでユーザー数をまず増やすことが多い
なるべく早く正解に近づくため、いかにリリースサイクルを早く回せるかが大事
そしてこれらをスキルとして考えて見ると、以下のようなことが言えるかもしれません。
ハードスキル
BtoBはプロダクト戦略策定、ドメイン知識、セールスなどのビジネスのハードスキルが重要になりそうだが、BtoCはデータ分析やマーケティングなどのスキルが重要になりそう
どちらも開発における重要性はあるが、BtoCはより開発サイクルを速く回せるようなチーム開発の理解が大事そうで、BtoBは数多くのステークホルダーと認識合わせつつ機能も徐々に浸透していく必要があるためプロジェクトマネジメント的要素が大事そう
どちらもUXにおける重要性はあるが、BtoCはユーザビリティを良くするようなUI/UXが大事そうで、BtoBはインタビューなどを通して少数の目的を深く理解することが大事そう
ソフトスキル
BtoCの方がそもそも課題がわかりにくいため、課題を発見する力が大事で、BtoBは課題は明確だがその解決方法に差が出ると思われるため、課題解決の方がどちらかというと大事になりそう
巻き込み力は両方大事だが、チーム内ブレストを重視するBtoCは開発チームとの巻き込み、BtoBはセールスなどのビジネス部門など他部門との巻き込みがどちらかというと大事になりそう
BtoBは大きく低頻度の意思決定、BtoCは小さく高頻度の意思決定が求められそう
というようなことが言えるかもしれません。こういうことから「自分はBtoCの方が向いてるな」とか「組織としてより強くすべきはここだな」とかを考えてみてもいいかもしれません。
これは個人単位で言うと、人の性質でも「スピード感持ってやりたい」とか「世の中の明確な課題を解決したい」とかで向き不向きは影響あるかもしれません。
まとめ
まとめると、「PMに必要なハードスキルとソフトスキルの掛け合わせでプロダクトを成功させる確率を上げられるような人材になろう・組織を作ろう」というのが、PMのスキル面で意識したいことでした。
個人的には、ハードスキルは一定数知識として持っている前提で、ソフトスキルの高さの方がPMとして重要なんじゃないかなとは思ったりします。
いろいろ書いてみて考えると、ハードは知ってること(知識)が大事で、ソフトはやってること(経験)が大事なのかもしれません。
だからこそ、ソフトスキルの方が身につきにくく希少性が高いのかなと思ったりします。
また、組織においてこういうスキル体系化をどう活かすかというと、
「評価制度に自社が強化したいものを意図的に設定すること」「弱い分野を可視化してその人材を取りに行くこと」が大事になりそうだということでした。
そして8つのスキルを意識して、個人のキャリアや組織設計を意識できたら強い人材や組織が育っていくんじゃないかなと思います。
ということで、このような形でまとめてはいますが、私個人にしても自分の組織にしてもまだまだ未熟な部分が多く、記事を書く中で「ここが弱いな、出来てないな」とか気付かせてくれる部分も多分にありました。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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またPMの組織やプロダクトマネジメントについて、特にミドルやシニアの方とお話できたら嬉しいので、よろしければこちらもチェックいただければと!