わが家の猫生活【その三十二/猫風邪で青っぱな】
鼻の頭に生キズが絶えないモモちゃんも、わが家にやって来て数年はかなり美男子だった。「器量よし」と近所のおばちゃんたちから褒められまくっていた。
ただ、最初の頃は冬になると猫風邪の症状が出て、いつも鼻水がビローンと出ていた。年に一度のワクチン接種の効果なのか、数年後に症状はまったく出なくなったが、症状が出たときの本人(猫)は相当キツそうだった。緑色の少しドロッとした鼻水で、ちょっと時間が経つと鼻が詰まって呼吸しづらくなってしまうからだ。ちなみに後から飼うことになった3匹に、この症状はまったくなかった。
この緑色のドロッとした鼻水、よく見たな昔……。“青っぱな”というやつだ。THE 昭和。子どもに“青っぱな”はつきものだったじゃないか。洋服の袖で鼻を拭くから、そこだけカピカピ。平成の世でそんな子どもを見た記憶がないとぼんやり考えていたら、今は令和だった。あわわわ、令和だよ!!!
ちょっと脱線してしまった。
猫風邪症状に悩まされながらこたつで寛いでいたモモちゃんが、布団のすき間から顔をニョキッと出してくると、それと同時に「ヒックシュン!!!」と加トちゃんばりのくしゃみを飛ばしてくる。それまで猫と暮らしたことがなかった私は、「えええーっ、猫のくしゃみ、人間と同じ! 加トちゃんと同じ!!」と、妙に感慨深かったのを記憶している。
母は、たまたま彼に顔を近づけていた時にそれをやられて、思いっきり青っぱなが飛んできたことがあり、金切り声をあげていた。そんな事故があっても、当然だが本人(猫)は「ごめんなさい」という気がないので、知らんふりしてまたその青っぱなを前脚でくちゅくちゅし、そのままこたつ布団になすりつけて寝るという悪意のない行為を繰り返していた(片づけるの私ら)。モモちゃんの脚もカピカピ。昭和の子どもと全く同じだ。「お前、体弱いのー。もっと鍛えんと生き残れんのじゃないの?」と、毎回モモちゃんは家族に言われていた。
数年後、猫風邪症状が無くなった代わり(?)に、今度は家中にマーキングしまくるように。手のかかることに何ら変わりはなかった(笑)。ブリブリと文句を言いながらも後始末をする家族。猫を相手に全員M気質全開だ。
当の猫様は「オレ、なんもしてないから」と、知らぬ存ぜぬを貫く。それでも時折テーブルのごはんに手を出して、本気モードで怒られたときは半日シュンとするのだから、やはりかわいいと思ってしまう。「これが演技なら、アカデミー賞確実やな」と声をかけると、今度はしっぽをピーンと上げてガオーン!と自慢げに鳴く。
ほんと、モモちゃんは人間みたいだったな。(つづく)
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