マスカレードイブを読んだ。
読み終わると、あ、あのふたりはそんなふうに縁があったんだ、とニヤリとなる。
以前、ふたりが登場する「マスカレードホテル」を読んで書き残したのは
の一行だけだった。
読書感想文によくある筋書きも人物も、なんも書いてない。ただ細部がとだけ。手抜きだ。
それは、多分、そこが一番気になったんだな。舞台を丁寧に描くことで、そこで起こるドラマが際立つ、と。
ミステリーの事件や謎解きは、直線で書けば報告書のようなものになってしまう。そこにひとのありかた、いきざまの影を落として説得力のある筋書きができる。そして、そのうえに彩色するように描かれる細部がそのドラマを豊かにする、と言いたい一行なのだと思う。
そう、豊かなドラマだった。
この「マスカレードイブ」はそのエピソードゼロだった。まだ出会わないふたりの日々を描くことで、ふたりの才をあらためて確認することとなる。
短編だからか、細部が、とは思わなかった。
ちょっとはみ出し気味の有能な新人刑事さんの閃き、発想はいいと思う。
そして女性ホテルフロントの観察、推測も際立っている。それはお客様のためになにができるかというスタンスからなされ、そのうえで行動に移されるんだから、素晴らしい。
ホテルにもホームズがいる、なんて思ったりした。
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