ぽっかり
指先まで覚えてるけど
わざわざ言うことじゃないし
黙って見過ごしたこと
今さら言うのもちょっと違うし
そうやって うやむやにした
いろんな気持ちは
言わなきゃ言わないで
膨れ上がったり萎んだり
汚れたり美しくなったり
いつまでも暴れ回るから
まるで忘れられないみたいに
体が勘違いするでしょ
たぶん最後に見たしょげた顔も
そのせいだろう
私に言えなかったことが今さら暴れて
途方もなく良いものを
逃したような気持ちになって
君の中に吹き抜けた向かい風は
まるで失ってから気付くなんちゃらみたいに
置き去りにでもされたかのような目で
こっちを見たけど
もともとそこは空いてたよ
君の中にはずっと埋まらない穴があって
私はそこを何度も通り抜けてきた
私じゃだめだったし
私も君じゃだめだった
ただそれだけのことだよ
ただそれだけだから
わざわざ言う必要のないこと
言わなかっただけのふたり
まだスースーして
落ち着かないかもしれないけど
そのぽっかり
埋められるのは 誰でもないよ