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Lee von Erck / A60117 / MM06


レストア前

アメリカの作家、Lee von Erck のパイプです。
日本で結構人気があります。
理由は、彼のパイプは「オイルキュアリング」してあるから。
ダンヒルのイメージから、通常オイルキュアリングされているパイプはサンドブラストされていると思っていたのですが、von Erckのパイプは、彼独自で開発したオイルキュアリングにより、スムースタイプもオイルキュアリングされているとのこと。
喫味が気になってたので一本欲しかった。
ボロボロの山売りパイプの中にまぎれているのを発見。

刻印はA60117 / MM06。
まだ現役の作家なので、彼のサイトにこちらのパイプも載ってました。
命名法も載っており、Aはグレード。60はなぜか製作年の06を反転した数字、その後はその年の何番目に作られたかどうか、MMはMimmo Briar(イタリア産)の略で、その後の06はこのブライヤーを入手した年。
つまり、イタリア産ブライヤーによる、2006年製、117番目の、Aグレード(一般的)のパイプ、とのこと。

分厚いカーボン。
ボウルトップももりもり。
外面にも黒ずみ。
結構多くの人が勘違いしてるけど、こういう黒ずみって焦げじゃなくてヤニ汚れやマッチなどのススの場合がほとんどなので、掃除したら綺麗になることが多い。

外側も汚れや細かい傷。
2006年って若いのに、結構使い込まれてる。
全体的に70〜80年代くらいのものみたい。

ステムも汚れ。
んで、たぶんエボナイト製。
von Erckのサイトに掲載されている写真では、素材がルーサイト(アクリル)になっており、よく見ると透け感あるマーブルの鼈甲ぽいステム。
でも、ダボ側の斜めの段差になってるデザインは同じ。
アクリルのくわえ心地を嫌いな人けっこういるし、アクリルは壊れやすいから欠けるなりして交換したのかな。
デザインや面取りも忠実に再現できてるからプロの仕事っぽい。
使い倒してる印象の割に、金かけてんな。

エリック本人にメールで聞いてみたけど、実物有れば分かるけどねって言われた。
ありがとうエリック。


ボウル内のお掃除

リーマーとナイフで分厚いカーボンを削っていきます。
いつものごとく削りきれないのでリューターでゴリゴリ。

ボウルトップもナイフで慎重に削っていきます。
ちょっとエタノールつけて外側壁面の黒ずみも。

スッキリ。
そんな天面だったんけおめえ。
黒く塗られてるのかと思ったらツルツル。
田舎の古い家の欄間みたいな感じ。

ある程度綺麗になったら、コットンとモール詰めてアルコールメソッド。
数時間おきにエタノール追加しながら一晩放置。

ヤニが浮いてくるので、コットンとか除いて掃除。
ボウルは軽くリーマーかけるだけで綺麗に。
ボウルトップの溝とか取りきれてなかった部分もエタノールで柔らかくなってるのでナイフで削り取る。
シャンク内はエタノールつけたストローブラシや楊枝やモールで掃除。
モールは煙道の広さによっては、モール2本をねじり合わせてゴシゴシすると良い感じ。
モールに色がつかなくなるまでしっかり綺麗に。

だいぶスッキリ。


外側のお掃除

結構汚れてるので、マーフィーのオイルソープでこすり洗い。
ボウルにキッチンペーパーとかを詰めてマスキング。
原液を歯ブラシにつけてゴシゴシ。
温水を流水にして洗い流し。

スッキリ。

スムースだし結構小傷も多いので、ヤスリがけ。
古いワックス削り落とす感じで。
外壁の黒ずみもここで落としつくします。
いったんステムを合体して、600くらいから2000までヤスリかけて、白棒パフかけます。

ついでにシャンクとの接続面も綺麗に。

ピカピカ。
黒ずみもほぼ取れました。
スムース仕上げのパイプは、このヤスリ工程入れるか入れないかでピカピカ具合が大分かわります。
古いスムースは恐れずヤスった方が良いです。

椿油を塗りたくり、ラップで包んで浸透。
ちょっとだけ放置。
長いことつけ込みすぎると、パイプ使うたびに油が滲み出てきます。
そのうち出なくなるけど。
5分経たないくらいで取り出して、キッチンペーパーやマイクロファイバーの布とかでしっかり拭き取ります。
ピカピカ。
木目もハッキリ出てきます。

油拭き取れたら、全体にカルナバワックスをパフで擦って塗っていきます。
ボウルトップの凸凹のとこはカルナバ前にルネサンスワックスも塗っときました。
カルナバ塗って、布で擦って、を何回か繰り返して重ね塗ります。

最後にボウル内にエタノールで薄めた蜂蜜を塗って、ひとまず終了です。


ステムのお掃除

ステムはエボナイト製なので、黄ばみと汚れ取りでオキシクリーンに漬け込みます。
溜まってる他のエボナイト製ステムと一緒に。
300ml入るこのタッパーに10グラムちょっとくらいオキシクリーンを入れて、60度程度のお湯を入れて、30分程度放置します。量も時間も全部大体。

30分くらいつけておくと、泡が出なくなって液が茶色くなります。
表面がヌルヌルしてるので、激落くん的なメラミンスポンジでこすると大分黒を取り戻します。
内側もストローブラシとかでこすって、流水で洗い流します。

その後、今度はエタノールに漬け込みます。
ヤニがもわ〜っと出てきます。

ストローブラシとモールで色がつかなくなるまで掃除します。

汚れが落ちたら、ヤスリがけ。
400、600、800、1000、1500、2000。
ボウルと合体させて白棒パフとコンパウンド。
最後に全体をつやふきんで拭いておしまいです。


完成

ツヤツヤピカピカです。
ボウルトップ周りのカーボンも黒ずみも無くなりました。欄間みたい。

でもぶっちゃけ、デザインはそんな好きじゃない。
試行錯誤して攻めた結果、変なことしだすデザインて短略的で嫌。
若手か。
おじいちゃん作家なのに。

特にアシンメトリーが嫌い。
左手でもったらフィットするようになのか、木目の綺麗なとこで切ったのか、何かしら意図はあるんだろうけども。
100歩譲ってアシンメトリーは許すとしても、対比としてシンメトリーにしないといけないとこも甘かったりして必要なメリハリがない。
フリーハンドの悪いとこ出てる感じがしちゃう。

まあ、喫味が気になって一本は欲しかったから、まあ。
掘り出し物感はある。

以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。

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