BARLING'S MAKE / 6174
レストア前
BARLINGの大きめビリヤードです。
ダンヒルのLBくらいのサイズ感。
デカくてぽってりしてて、ともすればヤボったい感じが好き。
初バーリング。
バーリングは、ダンヒルとかより前の時代、その品質の高さからイギリスを代表するメーカーでした。
が、例によって、時代によって評価が変わります。
一般的に、1960年までをPre-Transition era(移行前)、1968年までをTransition era(移行期間)、1968年以降をPost-Transition era(移行後)と呼び、1960年までのものが最も評価が高く、1968年以降はコレクティブルな評価は全く無い一般的なファクトリーパイプ、とされています。
これは、バーリング家が経営していたか否か、の分類です。
1960年にバーリング家は会社を売却し、68年までの移行期間を経て、バーリング家とは関係のない全くの別会社になるのです。
1960年までのバーリングは、樹齢100年以上で長期空気乾燥されたブライヤーを使用し、非常に高レベルの職人達によって手がけられ、「夢のパイプ」と呼ばれていたそう。
1960年までのバーリングをざっくり見分ける方法は簡単です。
1960年までは「BARLING'S MAKE」とアーチ状のブロック体で記されているものに対し、『1962年以降』は「Barling's」または「Barling」と筆記体で記されています。
バーリング家が作っているものではないので、「MAKE」も消えます。
ただし、この『1962年以降』がキモなんです。
というのも、1960年にバーリング家はフィンレーという会社にバーリングを売却するのですが、1962年までは経営体制が変わっていないのです。
名義が変わっただけで、社長もゼネラルマネージャーもバーリング家のまま。
1962年が、バーリング設立150周年だったようで、ここにむけてバーリングさん家はまだ頑張ってたみたい。
んで、1963年に、バーリングを売却したフィンレー社が、インペリアル・タバコという大会社に買収され、バーリングは間接的にインペリアル・タバコの傘下となってしまいました。
これにより、バーリングのファクトリー化が進んでいきます。
なので、上記の3分類ではなく、1962年までを家族時代、それ以降を企業時代と、2つの分類に再定義してる人もいます。
この、Transition eraだけど、まだバーリング家が頑張っていた1960〜62年のパイプは、事実上Pre-Transitionと同一クオリティのため、パイプ界屈指のコストパフォーマンスを誇ると言われています。
なんたって、Pre-Transitionのバーリングは高い。
特に海外人気が高い。
もし未使用なら1000ドル2000ドルの値がつくそうですよ。奥さん。
エステートで状態悪くても送料込みで2万程度はする感じ。
それがTransition eraならぐんと落ちる。
んでね。
こちらのパイプ。
ブロック体の「BARLING'S MAKE」。
その下に6174。
6だけちょっと強く掘られてるし、「BARLING'S MAKE」と「174」でセンター取られてるし、あとで6を追加したのかな。
1960年までは、この4桁の数字部分、基本的に3桁です。
例外的に最初の文字が1の場合は4桁でも60年以前の可能性あり。
なので、このパイプはTransition eraなんですが…
4桁の数字が2〜6で始まるブロック体の「BARLING'S MAKE」は、少量だけ作られた1962年製らしい。
やったね!
たぶんね。
きっとね。
実際、屈指のコスパでした。
オークションで2件目に入札して、様子見に入れた金額、更新されなかったもの。
びっくりした。
まあ、高グレード品だと、Ye Olde WoodとかTVFとかの記載があるんですが、このパイプはそういうのがない、おそらくスタンダード品、てのもあるんだろうけど。
たまたま、このパイプの数日前にもう一本、60年以前のYe Olde Woodが出てたけど、そっちは3万5000とかいってました。
とはいえ、数千円で「夢のパイプ(推定)」を試せるんであれば上々です。
オールドイングリッシュは小さいサイズが多い中、デカいのも良い。
多分6174の6はサイズ6の6。
カーボンはあんまりない。
綺麗にリーミングされてる。
でも、リーミングされすぎて火口が歪んでる。
ティースマークは軽め。
んで、シャンク側にバーリングクロスの名残がちょこっとだけ残ってる。
バーリングクロスってのは、縦書きと横書きのBARLINGが十字に交わってるマーク。
綺麗に残ってるものはまれなので、そんなに気にしない。
オリジナルステムだっていう根拠としてあれば良かったので。
ステムは固かったけど、特にエタノール流し込んだりしなくてもギリ抜けた。
よかった。
ボウルのお掃除
リューター、リーマー、ナイフでゴリゴリ。
綺麗にリーミングされてるのでそんなに時間かからず終了。
パイプにうるさい人に使われてた感。
コットンとモール詰めてアルコールメソッド。
無水エタノールをヒタヒタにして、数時間おきに注ぎ足して、一晩放置。
一晩経ったらコットン取り除いてリーミング。
シャンクはストローブラシとかで掃除。
なんかタールの塊みたいなネットリした物がダボの段差付近に結構な量あった。
ステムルーズ解消のボンドかなあと思ったけど、ネットリしてるし違うっぽい。
ロケットリーマーのドリルなニードルとかも駆使してかき出す。
過去一番の汚れかも。
あと、ボウルの底らへんをよーく見ると、『J 7/62』と、手書きで掘った跡発見。
うっすら。
傷ってほど深くなくて、鉛筆みたいな木で強く書いた跡みたいな感じ。
62年january7日とか、62年7月にJapanで買ったとか、J太郎さんが買ったとか、そういう感じかな。
7/62じゃなくて、1962かもしれん。
いずれにせよ62年物の可能性が微増。
裏付けありがとうJ太郎さん!
消すけど。
内部の掃除が済んだら、キッチンペーパーとモールを詰めて、マーフィーのオイルソープで温水洗い。
原液を歯ブラシにつけてゴシゴシ。
ボウルトップはどうせヤスリかけ直すので、真鍮ブラシでゴシゴシ。
流水で洗い流します。
綺麗になったら、見えにくいところも見えやすく。
ボウルトップは真鍮ブラシかけたのもあってボロボロ、は、まあ良いとして、シャンクと反対側のエッジが少し削れてる。
火穴も同じ方向に抉れてる。
240、400のヤスリで、火穴の抉れを周りと馴染ませつつ、ボウルトップも平にヤスリます。
ボウルトップを削りすぎてシェイプが変わらないように、削れてるエッジが無くなるまでボウルトップを削るのではなく、削れてるエッジの周りを少し丸めて馴染ませました。
あとは全体を600〜2000でヤスリがけして、ステムを合体させて白棒パフがけ。
J太郎さんの刻印も消えました。
研磨後、椿油を塗りたくり、ラップで包んで10分くらい放置してから、油を拭き取ります。
ぼんやりしていた木目もだいぶハッキリ。
少し長めに放置したので、使う時に油滲み出てくるかも。
まあ、2.3回で滲み出なくなるからヘーキヘーキ。
仕上げにカルナバワックス。
リューターで塗って、拭いて、塗って、拭いて。
何度か重ね塗り。
最後に、ボウル保護のためにエタノールで薄めた蜂蜜をボウル内に塗っておしまいです。
カーボンも付きやすくなります。
ステムのお掃除
まずは全体的に変色を取るために、オキシクリーンに漬け込みます。
他のエボナイト製ステムも一緒に。
60度くらいのお湯に10グラムくらいを溶かして30分程度放置。
泡が出なくなったら取り出して、激落くん的なメラミンスポンジで表面のヌルヌルを洗い流します。
マスキングしないとホットスタンプとかは消えちゃうけど、もともと辛うじてちょこっと残ってる状態だったので無視。
その後、無水エタノールにドボン。
しばらく放置するとヤニがもわ〜っと出てくるので、ストローブラシとモールで色がつかなくなるまで中を掃除。
あとは外側を400〜2000までヤスリがけ。
このエボナイト結構硬い。
ガッシリしてる。
んで、ボウルと合体させてから白棒パフとコンパウンド。
磨き終わったらエボナイトの変色防止液もつけてみる。
ステムがキツめだったので、ダボのところを鉛筆で塗ります。
これで差し込みがスムーズに。
最後に全体をつやふきんで拭いておしまいです。
完成
ピカピカです。
木目もハッキリしてくすんだ印象がなくなりました。
火穴とボウルトップのエッジの抉れや削れも目立たなくなりました。
ピカピカ。
ステムもピカピカ。
バーリングクロスを掘り直したりはしない。
ぽってりマッシブ。
良いんじゃない。
スタンダードとはいえ家族時代。
掘り出し物感。
以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。
(検)
パイプタバコ パイプスモーキング パイプ