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DUNHILL / SHELL BRIAR / 314 F/T / 70年 / ②S

レストア前

パイプ嗜むなら一本は持っておきたい、ファクトリーパイプの最高峰でスタンダード、イングリッシュ代表ダンヒルです。
その中で最も安価ながら最も人気が高いシリーズがシェルと言われるこちらのシリーズ。
ダンヒルのここが凄いみたいな蘊蓄は他に譲りますが、精巧な作りでタバコも美味く、ダンヒルを真ん中に置いて色々判断していいイメージ。

これは、オークションでチェック入れてた別のパイプと間違って落札しちゃったもの。
締切間近で思い出して焦って入札したら別のパイプだった。
そして落札できてしまった。ショック。

まあ、このフォルムのやつはちょっと気にはなっていたんで、まあ。
丸っこいの好き。

ダンヒル・シェルが人気な理由の一つとして、製造過程において「オイルキュアリング」という手法が用いられていたことが挙げられます。
成形したパイプをオイルに数週間漬け込んで、加熱によって油抜き、その後サンドブラストで仕上げ、という過程を経て作られていたっぽい。
ぽいっていうのは、企業秘密だったりで本当のところは謎が多いみたい。
でもまあ、この油まみれの過程を経ることで、樹液などのあく抜きが行われ、吸水性が上がるそうな。
また、副次的に油の風味みたいなものが感じられて、タバコがこってり甘く感じるそう。

この「オイルキュアリング」をダンヒルは69年〜70年でやめました。
油まみれの過程で、ヒビが入ったりしてダメになる確率が高くてコストがつらかったこと、アルジェリア産のブライヤーがアルジェリアの独立戦争の関係で手に入らなくなってギリシャ産に変えたこと、などが原因ぽい。
なので、ダンヒルのシェルは、69年くらいまでのが人気が高いです。

で、このパイプは、「MADE IN ENGLAND」の後ろに「0」と刻印されています。
これはデイコードと言われる製造年を表す記号で、「MADE IN ENGLAND」と同じ天地幅の「0」は70年を指します。
オイルキュアリングやめた年です。
一応、70年はギリギリ在庫あったかも?な噂もあるけど。

「F/T」はフィッシュテールの略。吸い口が魚の尻尾みたいに末広がりになってるやつに刻印されます。
「314」はシェイプコード。1921年にウェールズの王子エドワード(プリンス・オブ・ウェールズ)御用達、つまりは王室御用達になったことに喜びまくったアルフレッド・ダンヒルが開発して、王子の許可の下「プリンス」と名付けたシェイプです。
でもウェールズ王子は「302」のパイプを愛用していたみたい。
まあ自分で使うの恥ずかしいしね。残念。
ちょっとだけ湾曲した長めステムの可愛いアップルです。
優雅。

好みのシェイプなんだけど、今まで持ってなかった理由として…

2S。
これはサイズコードと呼ばれる、パイプの大きさを表す記号。
2Sは小ぶりなんです。
サイズコードがボウルに入りきらなくてステムに刻印されるくらい小さい。
たまに他のサイズのプリンスも見かけるけど、大体サイズ2とか小さめの印象。

吸うタバコの種類によって、推奨されるパイプの大きさは変わってきます。
ニコチンが高くてあまり高温で燃焼させない方が美味いヴァージニアは小さめの口径のパイプ、タバコの葉っぱを燻製したラタキアってタバコは大きめの口径が良い、みたいに。
自分、基本ラタキアなんです。
雑な吸い方だし1日中咥えてるのでヴァージニアみたいなニコチン高いタバコだと気持ち悪くなるので。
正直、手元に届いた時点で、これ使わんなあと思いました…可愛いけど。

ステムは、まあ、普通に茶色いです。
ダンヒルのステムは、特に何もしなくても経年で茶色くなるので、これくらいは普通。
それにしてもステムにサイズコード….
これ消さないの気を使う…

ボウル外側は綺麗め。
内側も手入れされてる感ある。けど、カーボン厚め。
ただでさえ狭い口径なのに。
小指ギリ入るか入らないか。

インナーチューブ付き。
サイズ2は結構インナーチューブ残ってる印象。
ちゃんと外れるしヤニで固着してない。
大事に使ってたんだろな。


ボウル内のお掃除

リーマーと牡蠣剥きナイフでカーボンをゴリゴリ。
分厚くて取りきれないのでいつものリューターでゴリゴリ。

コットンとモールを詰めてアルコールメソッド。
時々エタノールを継ぎ足して一晩放置。

一晩置いたら汚れが浮いてきます。
ヤニはあんまり出てこない。染料多め。
ボウルはすぐに綺麗に。
シャンクもストローブラシその他でしっかり綺麗に。

ボウル内スッキリ。
人差し指が入るくらいまで広がりました。
ちょうど第一関節くらいの容量。
小さい。
使わんだろうなあ….


外側のお掃除

ボウルにキッチンペーパーとか詰めて、マーフィーのオイルソープで洗います。
原液を歯ブラシにつけてゴシゴシ。
ぬるま湯を流しながら洗い落とし。

スッキリ。

カラカラになったボウルに椿油で潤いを。
色も一段濃くなります。
ブラシで塗り込んで放置せずに拭き取ります。

油を拭き取ったら、少し黒を塗って化粧直し。
個人的には下地の赤いステイン出すぎるより、ちょっと感じるくらいの方が好き。侘び寂び。
ボウルが小さいので、ペンで塗っちゃいます。
アルコール染料のやつ。
ダイソーとかでも売ってるのね。コピックもどき。
近所にダイソーないからフリマアプリで買ったけど。

染料はすぐに乾くので、ルネサンスワックスとカルナバワックスをかけて、最後にボウルの内側にエタノールで薄めた蜂蜜塗ってひとまずおしまいです。


ステムのお掃除

ダンヒルのステムはアクリルじゃなくてバルカナイト(エボナイト)。
これはアクリルとゴムの合成素材的なやつで、経年で茶色くなります。ゴムの酸化的なアレで。
変色が大きい場合、オキシクリーンに漬け込みます。
タッパーにステムを入れて、オキシクリーンと60度程度のお湯を入れて放置。
シュワシュワっと細かい泡と汚れが出てきます。
30分くらい経って泡が出なくなったら終了です。
ステムがヌルヌルしてるので、激落くん的なメラミンスポンジで表面を流水で流しながら擦るとだいぶ綺麗になります。
ストローブラシとかで中の汚れも綺麗に流します。

でも、オキシクリーンだけだと、イメージほどヤニ汚れは取れません。
なので、今度はエタノールに漬け込みます。
しばらく漬けとくとヤニがもあ〜っと出てきます。
ダンヒルのホワイトスポットがアクリルとかの場合、溶けてくるかもなのであんまり長時間は漬けない方が良いです。
木工ボンドとかでマスクした方が良いです。
あとはストローブラシとかモールとかで綺麗になるまで掃除します。

掃除終わったら、ヤスリかけて、白棒パフして、コンパウンドかけてピカピカにします。
ヤスリは大きなティースマークなければ、600とか800とかスタートで2000まで。
2Sを消さないように、とはいえ、2Sのとこだけ茶色のままにならないように注意しつつ。
パフとコンパウンドはボウルと合体した上でかけた方が良いです。
最後に全体をつやふきんで拭いて完成です。


完成

ピカピカ。
2Sもなんとか死守。
インナーチューブもピカピカ。

サイズ比較。
左(上)から順に、60年代のLBS、60年代の4S、70年代の2Sポーカー、今回の70年代2S・314。
全長はLBSと同じくらい。ステムなが。
LBSってのはラージボウルスリムと当て字で呼ばれてて、通常の4Sより大きいサイズなのに。
背の高さは同じ2Sポーカーに比べてもだいぶ小さい。
口径はあんまり変わらず。4Sよりはちょっと狭いけど。

61年と70年の肌の比較。
61年は黒が落ちて茶色いけど、同じシェル。
61年なので、多分上はアルジェリアン、下はギリシャ。
アルジェリアの方が柔らかいので少しとろけてる感じ。
ギリシャはややエッジが立ってる。

以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。


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