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COMOY'S / TRADITION / 291

レストア前

オールドイングリッシュの超老舗、コモイです。
1825年創業。
現存する世界中のパイプメーカーの中で、最も古いメーカーらしい。
フランス出身のコモイ家が作った会社で、世界で初めてブライヤーで作ったパイプを製品化。
現在まで続くブライヤーパイプの祖です。

また、「LONDON MADE」という呼称の生みの親ともされています。
ダンヒルが生まれる40年以上前から、ロンドンにおけるプレミアムパイプメーカーの顔として君臨していました。

が。
例の如く、悪名高いカドガングループに買収され、『ソリに乗って地獄まで滑り落ちた』勢いでブランドイメージは急落。
プレミアムパイプメーカーから一転、粗悪なエントリーパイプと見做されるように。
すごいなカドガン。
どこにでも顔出すなカドガン。
パイプメーカーに恨みあんのかカドガン。

そんなこんなで、これもまた例の如く、1980年頃にカドガンに買収される前後で、天と地ほど評価が分かれるメーカーです。

個人的に、今回が初コモイ。
コモイの特徴は「ダークで濃い喫味」とされていて、気になっていたものの、正直、同じくらいの金額出すならダンヒルとか買っちゃうよね、と、後回しにしていました。
オールドイングリッシュにある程度満足したタイミング、かつ、日本までの送料込みで2000円弱という激安な一本を見つけて購入。
というのも、

ステムの裏側欠けてます。
人気のグレードでもなかったので、入札者1人で落札できました。
9ドル。
送料も6ドルとか激安で、普通郵便で届いた。
ウェルカムトゥジャパン、フロムフランス。

カドガン前後の見極めは簡単で、ステムのCの入れ方が違います。
白いCの、円が途切れてる部分、小さい円が入ってるのわかりますか?
これ、ホットスタンプとかじゃなくて、3つの部品のインレイなの。
白い円、白い円の中の黒い円、白い円の途切れてる部分に小さい黒い円。

最初に白い円のインレイが挿入されて、次に白い円の真ん中をドリルでくり抜き、黒い円のインレイを挿入。
最後に小さい黒い円のインレイを挿入するためにまた小さい穴を開ける、という、とても手間のかかる手法で作られています。
すげー。
これがカドガン買収前。
カドガン買収後は、ホットスタンプとか、レーザー加工とか、Cが真ん中に入ったCより一回り大きい黒い円が一つだけ嵌め込まれてる。

このインレイからもわかるように、カドガン前のコモイは、非常に高い工作制度を持っています。
ステムとシャンクの隙間も髪の毛一本も通さない精緻さ。
職人精神を感じる。
サシエニと同じように、というか、サシエニが習ったのかもしれないけど、セカンドブランドを多く持ち、欠点のある木はセカンドブランド名義で販売することで、本体の高いブランド力を保っていたみたい。

COMOY'Sの書体などは時代によって変化しているようですが、書体がサンセリフで、Cが他の文字より大きく、アポストロフィがついているこのタイプは、1950年代〜60年代半ばに見られるタイプっぽい。

TRADITIONは、1925年に、コモイの生誕100周年を記念して発表されたグレード。
後年はエントリーレベルを担当したグレードだけど、戦前はトップグレードと同じAグレードのブライヤーを使用した高品質品だったらしい。

シャンク反対側に、謎のAが刻印されてんのは、そのAなんかな?
LONDON MADEがラグビーボール型のアーチで刻印されてるけど、このタイプは古いっぽいんだよなあ。
コモイの書体タイプと時代が合わない。
謎。
291はシェイプコードで、Mサイズのビリヤード。

カーボンは底の方結構厚め。
壁は薄い。
自分は吸い方雑なので熱くなりそう。
ボウル内は割と広め。


ボウルのお掃除

リーマーとナイフでカーボンゴリゴリ。
底の方分厚くてリーマー入らないのでリューターゴリゴリ。

あらかたカーボン削ったら、コットンとモール詰めてアルコールメソッド。
数時間おきに何回かエタノールを注ぎ足して一晩放置。

ボウルを軽くリーミングしたら、シャンクをストローブラシとかでゴシゴシ。
モールに色がつかなくなるまで。
結構汚れひどい。

内部が綺麗になったら、外部の掃除。
ボウルをキッチンペーパーとコットンで蓋して、歯ブラシにマーフィーのオイルソープを原液のままつけてゴシゴシ。
ぬるま湯流水で洗い流します。

乾いたら1000から2000までヤスリがけ。
古いスムースはこれやっとくと輝きが違います。

ヤスリ終わったら、白棒バフ。
その後、椿油を塗りたくり、あまり放置せずに拭き取り。
色味が戻ってコントラストもハッキリします。

その後、カルナババフ。
リューターにフェルトバフ取り付けて、フェルトバフをカルナバに押し付けて、カルナバが付着したフェルトバフでボウル全体をブイーン。
その後、カルナバを染み込ませたマイクロファイバー、通称カルナバ布で全体を拭きまくり。

最後に蜂蜜をエタノールで薄めてボウル内に塗り塗り。
底に溜まった余分な蜂蜜はキッチンペーパーとかモール折り曲げて拭い取っておくと、一日二日である程度乾きます。
ひとまずボウルはおしまいです。


ステムのお掃除

まずは10gくらいのオキシクリーンを、60度くらいのお湯に溶かして、そこにドボン。
30分くらいして泡が出なくなったら取り出して、激落くん的なメラミンスポンジで表面の滑りをゴシゴシ。
流水で洗い落とします。

Cを木工用ボンドでマスキング。
ボンドが完全に乾いたらエタノールにドボン。
ヤニがもわ〜っと出てきます。

取り出して、ストローブラシとかでゴシゴシ。
モールに色がつかなくなるまで。

内部が綺麗になったら、いよいよ欠けの修理です。
欠け周辺をダイヤモンドヤスリで軽くならして、400〜800くらいまでヤスリ掛けして変色を除いておきます。

で、いらないクリアファイルを、吸い口に入るようにハサミでチョキチョキ。

軽く椿油塗ったモールを刺して、その上から、準備しておいたクリアファイルを差し込みます。
クリアファイルにも軽く椿油塗っときます。
これが型になります。

で、プラリペア。
黒。

型の上からプラリペアモリモリ。
プラリペアは、ピンポイントに置くんじゃなくて、広めに盛ります。
今回は想定部分より結構下に垂れちゃったけどヘーキヘーキ。

5分くらいですぐに固まります。
クリアファイルは、プラリペアが接着しない素材のはずだけど、あんまり放置しすぎるとくっついて抜けなかったりするので注意。

あとはダイヤモンドヤスリで成形。
400〜2000までヤスリがけです。
プラリペアはアクリルなので、エボナイトに使うとバレやすい。
若干黒味が違うので。
なるべく差が出ないように、プラリペア前に変色をヤスリで取っておいたほうが良いです。
変色残って茶色のままだと、ヤスった後も境目に茶色残ったりします。
エボナイトのプラリペアみたいの無いかなあ。

あとは白棒バフかけて、コンパウンドで仕上げ。
ボウルと合体させて、全体をつやふきんで磨いて完成です。


完成

ツヤツヤピカピカです。
コモイの特徴らしい、高いコントラストのグレインが綺麗。

↑のリップ部分、下半分がプラリペアの補修。
復活。
おじいちゃんがおじさんくらいに若返った。
もう少し働いてください。

派手さはないけど、ビシッとしてて、とても姿勢がいいパイプ。
ジェントルマン。
いいね。

以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。

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