スカトロジーさんのノスタルジー映画『バビロン』
Netflixにて『バビロン』を鑑賞。
映画館で観たかったが、3時間7分という長尺に恐れをなして(『キラーズ・オブ・フラワームーン』と一緒だね)、お家で見ようと相成った。
そもそも、3時間とは長すぎではないか?
3時間の映画で傑作ならば、それは必要な3時間だったと言える。けれども、まぁ、この『バビロン』に関しては、完全にいらねー3時間だよ!と言いたくなること請け合い。
頑張って削ぎ落としたら多分2時間15分くらいまではおさえられるだろうし、もっと厳しいプロデューサーなら1時間40分まで切れ!と言ってくるよ。
監督はディミアン・チャゼル。チャゼルはね、前作の『ファーストマン』は激烈な傑作だったよ。愛してるよ。素晴らしい。
『セッション』もいい映画だ。
でも、『ラ・ラ・ランド』と今作はどうもいけねー(『ゴジラマイナス1』の佐々木蔵之介風味で)。
キャラクターが捌ききれておらず、それらが絡み合う物語も上手く修練しない。それぞれのエピソードがごちゃまぜの闇鍋で、まぁ、今作は闇鍋映画だから、それはそれで意図通りなのか。
1920年代のハリウッドが舞台で、サイレント映画からトーキーへの過渡期を描いている。
とにかく、1920年代〜30年代はハリウッド黄金期で、とんでもない乱痴気騒ぎの中で映画が撮られていて、この夢工場の天国と地獄が交差する、そんな映画なのだが、まぁ悪趣味の極みで、まずは冒頭、ブラピ演じるジョン・コンラッドという大スターのパーティの30分くらいに及ぶシーンは凄まじいエネルギーとうんこに満ちあふれている。文字通り溢れていて、色々な体液とか排泄物が画面に飛び散る。なので、私は別に問題ないが、いやな人はすごく嫌だろう。だって冒頭の5分で象さんがウンコをするのである。しかもそれを浴びる悲惨な映像からパーティに突入して、そこではおっぱい丸出し、おちんちんもたまに見える、的な、いきなりフルスロットルすぎるだろ、というスピード感。
とにかく、下ネタが満載(勃起、ディルドー、ウンコ、女性の小便、ゲロ、汚トイレ、鼠食い、青姦)であり、1920年代のハリウッドであった様々な事柄を詰め込んだ闇鍋であるが、でも、どう脳内補正しても、あんまり1920年代感がなくて、なんか1960年代とか70年代とかならまだわかるかな、って感じなんだよね。マーゴット・ロビーが蓮っ葉なすんごいハングリーかつ下品な女優志望を演じいて、その感じが現代的すぎて乗り切れない。
本当にもうね、ラムウが現れて裁きの雷でこのバビロンの全員を殺してくれねーかなと思ってたよ。
ハリウッドでこんなに狂ってたんだ、という、そんな感覚が180分続くかと思いきや、ラスト90分はものすごい失速(というか、ラスト90分ってそれもう本編じゃん)、トビー・マグワイアもイカれたギャングで出てくるけど、全然怖くないんだよな。酔っ払ったピーター・パーカーにしか見えねぇよ!
まぁ、物語の骨子は単純、松坂桃李が出ていた『あの頃。』とか(全然違うが)、昔自分がいた場所や仲間との狂騒の日々を描いて、最後は懐かしくなって涙、的な王道ストーリーである。
つまりはノスタルジーなわけだが、スカトロジーの方が比重が大きいため、全然泣けないよ。チャゼルの性癖だろうか……。とくにゲロを盛大に吐くシーンがあるが、ありゃあ何だい、『スタンド・バイ・ミー』かい。
まぁ、変な映画だし、最後は泣かせにかかったのか、映画史を総括した、現代までの映画乱れ打ちという禁じ手を放つが、巧いこと繋がっておらず、しかも選ぶ映画が『アバター』とか、やはりチャゼルは可笑しいのだろうか?権利関係?まぁ、アバターもまた、2009年のウルトラグレートメガヒット作で映画史を更新した映画なので、技術的な面も兼ねてなのかしら……とか、そんなことどうでもよくなるくらい、変な映画で、これで泣くやつはいねーよ!チャゼルだけだろ!って思ってプンプン。
そういえば、同じような話ならば、車谷長吉の『赤目四十八瀧心中未遂』もそんな話だったぞい、まだ戻ってきて……的な。
ああいう、お涙頂戴の方程式映画っていうのは、ハマれば強いが、今作はなー。
でもエネルギーは凄かった。恐らく、みんな傑作になるぞこれは、と思って撮影していたと思うんだが、そういう時はえてして……。