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カトレア

白昼夢めいた初夏のこと
陽炎の中にある書店にて
店先にはカフェテラス
僕はそこに気も留めず
幾つかの本を漁る
何冊かの本を漁る
そうしていつしか
漁るのにも飽いて
捕らずに店を出る
テラスは
名前も知らない草花に覆われていて
花園のようになっている
草花の分かれるその瞬間
ふと男の人同士の恋人が
テラスで
顔を寄せてささやきあっているのがみえた
足がとまり
時はもどる
お父さんと誰かが何かささやきあっている
僕のお父さん
男同士で何の話を
あれはいつのことだったのか
振り返ることもせず道を行く
少年が友達と
信号を渡り歩いてくる
手にはカトレアの花束
愛らしい少年
すれ違いざま
花弁を愛でた
白昼夢めいた初夏のこと



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